18話 忍長代理
―――忍村 村長の館―――
シイナ「忍長様はいつ助けに行くのですか」
風マスター「話を聞いた限り魔王城に連れていかれたんでしょ。どこに助けにいくのさ」
シイナ「それは…。大長を倒し、場所を吐かせます」
風マスター「まず生きてるほしょ…」
シイナは風マスターの胸ぐらを掴む。
シイナ「忍長様は必ず生きておられる。縁起でもない事を言うな。私だって無謀だとは分かっている。だが、恩人なのだ。この村には欠かせないお方なのだ」
風マスター「本人にはなんて言われたのさ、助けてほしい、って言われたの?」
シイナ「...…」
シイナは女忍長に忍村と忍長を任された事を思い返して風マスターから手を離す。
副忍長「シイナが次の忍長になる事に俺は賛成だ。俺は副ぐらいが丁度動きやすくていい。女忍長様は生きている。だからこそ俺らがこの村をいち早く復興しながら方法を探して万全になってから行くべきじゃないか」
シイナ「……。その通りです。失礼しました。しかし私の役職は忍長代理にしてください。私の中ではアズサ様が忍長ですから」
村長「わかった。本日からシイナを忍長代理に任命する。忍長アズサの下で得た経験と知識でしばしの間引き継いでこの村をまとめてくれ」
シイナは片膝をついて村長に頭を下げる。
シイナ 「この命を持って忍村を守る事をここに誓います」
―――数年前 忍村―――
アズサ「シイナ!遂に遂に来たぞ」
アズサは村長から送られた巻物をシイナに見せる。
シイナ「…。忍長推薦状!?やりましたね!これから頑張ってください!忙しくなるとは思いますが応援しております!」
アズサ「何を言っている。今から一緒に館に向かうぞ。忍長の私がシイナを秘書に任命する」
シイナ「今からですか!?」
シイナの手を引きアズサは走る。そんな2人に村人達は次々と話しかける。
村人「アズサちゃん、頑張ってたもんね。おめでとうね」
アズサ「ありがとう!またご飯食べに行く」
村人「シイナちゃん新たな忍長をよろしくね」
シイナ「はい!」
アズサ「忍長様はどうするのですか?」
アズサは目の前の村長の事を忍長と呼ぶ。
村長「わしは、隠居したいがまだまだやる事が多そうだからのう。サポーターとして頑張るわい」
村長「ここまでよく頑張ってくれた。アズサ今からお主を忍長に任命する」
アズサ「この命を持って忍村を守る事をここに誓います」
過去のアズサと現在のシイナの姿が重なる。
―――現在 忍村宿―――
ハル達5人はベッドに仰向けに倒れ込んでいた。
ナギ「いままでで1番大変な1日だったな」
ハル「うん。ナギ、ルカ本当に無事で良かった。大長相手に。僕は本当に何もできなかったよ」
ルカ「でも、」
ハル「慰めて欲しいわけでも、そうじゃないと言って欲しい訳でもないんだ。強くならなきゃって自分にもっと思わせたいんだ。迷いの森でも何もできなかった。ルカとマナがいなかったら僕はあそこで終わってた。忍村でもそうだ。大長を前に何もしないままやられてまたルカに助けられて。得意不得意や役割が僕達の中であるのもわかってる。でも、僕は皆の事を守りたい」
4人は静かにハルの言葉を聞いている。
ハル「今の僕の手には守れるものは少ないと思う。でもその手を皆の為に使いたいんだ。ユナを守れなかったこの手で次は大事な人達を」
リク「一緒に強くなろうぜ。俺達は守られる存在じゃない、なんて言わない。俺達を守ってくれ、そしてそんなハルを俺達が守る事も認めろ。お前は1人じゃない」
ハル「うん。ありがとう……僕は本当に良い仲間達に出会ったよ。あの日砂漠で死にかけになりながら迷ったかいもあるよ」
ナギ「いやそこはちゃんとしてくれよ」
5人は顔を見合わせ笑う。それぞれ今回の戦いで大きな後悔と反省を抱える結果となった。しかし、彼らは次に進むために笑った。そして改めて強くなる事を誓うのであった。
リク「特訓するしかないなぁ。マスターに教えて貰えるなんて貴重な体験だから、雷もしっかり鍛えなきゃ」
マナ「そうだね。私の治魔法もまだまだ成長出来るのが分かったし特訓しなきゃ」
ハル「ナギの紋章ってなんなんだ?そんなパワーアップ方法使えるの知らなかったんだけど奥の手なの?」
ナギ「……」
ナギは寝ている。その隣でルカもまぶたが重くなっていた。
リク「2人は大長6に健闘したと聞いた。俺達もそれぐらいにならないとな」
ハル「あぁ。氷技いっぱい鍛えるよ」
リク「俺の雷も楽しみにしてくれ」
リクとハルも目をつぶりながら話しており、もう半分寝てしまっている。マナは寝落ちした4人に布団をかけ自身も眠りに落ちる。
墓の前で手を合わせて目をつぶるタケルの後ろから丸メガネをかけた男が話しかける。
ワカ「肩の傷は大丈夫か?」
タケル「あぁ。しばらくは使い物にならないと言われた。ワカは引率と明日から稽古だろ。頑張れよ」
ワカ「あぁ。あの子達を必ず生かして帰して見せるよ。この墓は無事でよかったな」
ワカはタケルが手を合わせていた墓の前に花をおいて同じく目をつぶる。
タケル「今の俺を見られていたらきっと恨まれ殺されているだろうな」
ワカ「それはどうだろうな。生きてるって事はまだやるべき事が残っているって事だ」
タケル「彼らの旅の話を聞いて、俺も村を出たくなったよ。さすがにこの歳で彼らとは行けないが」
ワカ「お前が出る時はついて行くよ」
墓石は月明かりに照らされ輝いて見える。




