第8話 由早さんと私
私と由早が出会ったのは13年前4歳の時。金ヶ崎家は共働きのため私と瑞希は保育園に通っていました。近所に保育園は3園程ありましたが、定員オーバーで何処も入れずに、私達は父上の職場近くの家から離れた保育園に入園することになりました。保育園ライフも軌道に乗った年中組の夏由早は入園してきたのです。
先生 「新しいお友達を紹介します。南貴崎由早ちゃんです。みんな仲良くしてあげてくださいね。」
園児 「はーい。」
由早は地元の幼稚園に通っていましたが、由早ママは由早弟の妊娠を機に由早ママの実家に帰ってきていました。その実家が偶然父上の会社の近くで同じ保育園に通うことになったのです。
由早 「由早です。仲良くしてください。」
園児 「はーい。」
今と違い由早は大変おとなしく人見知りでした。今思えば可愛かったですね。あの頃の由早さんどこへ行ってしまったのでしょうか・・・その頃の私は怖いもの知らずで、物怖じせず積極的に意見を言う弾丸の様な園児だったそうです。本当ですか?今はこんなに奥ゆかしくおしとやかなのに・・・当然既存のグループが出来上がっている中、由早は孤立し、いつも一人で遊んでいました。いつも一人で遊んでいることを不思議に思った私は声をかけました。
紗希 「なんで一人で遊んどうの?」
由早 「誰も遊んでくれへんから。」
紗希 「じゃあ私らと遊ぼうよ。」
なんかいい話に聞こえますが、そんな話ではなくこの頃私も瑞希も母上に甘えるための覇権争いでお互いが邪魔でよく喧嘩し別のグループで遊んでいました。瑞希のグループよりも優位に立つために人数が欲しい。最初はそんな不純な動機だったと今思えばその様な気がします。それでも由早は喜んで私と同じグループで遊び仲良しになりました。この頃の由早は全てがちっちゃくて可愛かったですね。しかし、仲良くなったのですがすぐに別れが来ました。由早ママの出産に伴い地元の幼稚園に戻る日が来てしまいました。たった2ヶ月程度の短い間のお友達でした。子供だった私はその時こそ悲しかったかもしれませんが、別の友達と遊ぶことに夢中で忘れてしまっていました。成長するにつれ瑞希とも仲良くなり、保育園を卒園しました。春からは地元の小学校を楽しみにしていましたが、入学して気が付きます。お友達が誰もいない。保育園のお友達は皆別校区でした。しかも兄弟は通常別クラスになるのが原則なので教室には瑞希もいません。休み時間に瑞希が遊びに来てくれましたが、クラスの子と遊ぶ様に先生に注意されました。退路を断った先生いつか覚えておいて下さいね。同じ登校班の何人かに遊ぼうと声をかけましたが、すでに保育園・幼稚園からのグループができていて入れてもらえず孤立していました。仕方なく自由帳を広げて描いては消すを繰り替えしていると一人の女の子に声をかけられました。
「紗希ちゃん?」
誰ですか?この人?なぜ私を知っている人がいるのですか?どっかで見たことありますね。
「覚えてない?由早やねんけど。紗希ちゃんじゃない?」
あ、由早ちゃんじゃないですか。声をかけられることが無かった数日間を過ごした私は知っている人がいるという事に感動を覚えました。知っている人が誰もいないという緊張感からか、入学式で自己紹介しているはずなのに気付いていない?忘れていた?聞いていなかった?ともかく由早の存在に気付けていませんでした。由早は私にうすうす気付いていたらしいのですが、幼稚園のグループで遊んでいたようです。もっと早く声かけてくださいね私が可哀想じゃないですか。
紗希 「え?なんでいるの?」
由早 「私の家霞ヶ丘タウンやから。紗希ちゃんこそなんでおるの?」
紗希 「私も霞ヶ丘タウン。」
驚くことに今まで知りませんでしたがご近所さんでした。さらに登校班も隣保で分かれていたため気が付きませんでした。しかも後々分かったのですが、直線距離で数十メートルです。
由早 「え?うそやん。近くやん。で、なにしとんの?」
紗希 「絵かいとんの。」
一人でぐちゃぐちゃにした自由帳と散らばった消しカスはとても絵を描いている様には見えない。それでも私は絵を描いていると言い切る。この頃から片鱗を見せていますね私。久しぶりに話していると由早の幼稚園からの友達が声をかける
由早友「由早ちゃん行こう。」
由早 「ちょっと待って。」
あ、これでまた一人ですねと思っていたら昔私が由早に話した様な言葉をかけてくれました。立ち位置こそ逆ですが、見たことのある懐かしい光景であの頃の思い出が走馬灯のように廻りました。死ぬのですか私?
由早 「なんで一人で絵かいとんの?」
紗希 「誰も遊んでくれへんから。」
由早 「じゃあ私らと遊ぼうよ。」
この言葉は私と違い本当の優しさから出た言葉で本当に救われました。こうして由早と再会し小学校6年間の内5年間はクラスメイト、中学高校に至っては6年間クラスメイト確定です。由早が運命というのはこう言う事なのかも知れません。
もう少し大きくなってあの時のことを話す機会がありました。
紗希 「いやでも私自分の事しか考えないで誘ったのだと思うのですが。私の方が助けられたし、だから感謝されると少し胸が痛いというか・・・」
由早 「そうかもしれへんけど、あの時はほんまに嬉しかってんって。それに保育園やし。」
紗希 「いやでも由早に感謝されるんはなんか・・・情けは人のためならずを地で行っているというか・・・」
由早 「捻くれてる割に正直やな。それでも私は感謝しとうからそれでええの。」
由早とはよく喧嘩もしました。大体次の日には仲直りできました。主に私が悪いのですが、ほんとすみません。よく付き合ってくれていますね。感謝しきれません。言葉で言い表せませんと言葉にしておきます。今思えば、小学生なのに由早さん大人対応でしたね。由早が男子だったら恋に落ちてたかもですね。男子だったらが前提ですよ。感謝の気持ちを恩返しとかは押しつけがましいので、私は単純におばあちゃんになっても由早とは一緒に笑っていたい、そうなる様に私なりに歩んでいこうと思います。何言ってるのでしょう私恥ずかしい。




