第11話 第2、第3・・・と刺客がいっぱい
件の土曜日が来た。天候には恵まれましたが寒い。やはりこんな日はこたつみかんに限るとこたつに潜る。ごろごろしていると瑞希に急かされる。もう少しごろごろしていたかったのですが、「約束」という言葉を持ち出されては、従わざるを得ない。約束の時間に間に合うように支度をする。今日の服装は白いハイネックのセーターの上から黒に近い緑と赤のタータンチェックのジャンパースカートにライトブラウンの腰丈ピーコート足元は前回と同じローヒールのブーツに赤いフレームのメガネで出動です。駅に先に来ていた由早は私たちを見つけると駆け寄ってくる。駅そっちだからそこに居てくださいよ。とか思っているとお得意の海外式挨拶?ハグをされた。今日は寒いので暖かくて気持ちいい。何もしないで任せていると上目遣いで顔を覗いてくる。え?っと思いましたが私の背が高いので上目遣いになるのですね。
由早 「最近拒否せーへんね。」
紗希 「寒いから。面倒臭いです。」
と適当にあしらって都花との待ち合わせ時間に間に合うように電車に乗る。都花とは姫路で合流予定です。姫路駅に着くまでポチポチとスマホをいじっていると由早に怒られた。
由早 「せっかく遊びに行くんやからスマホ弄っとらんともっと楽しそうに。ね。」
半ば強制罰ゲームで特に用のないお買い物。上がる要素あまりないのですが・・・でもそれは私の理屈で由早たちには関係の無い事。せめてもの救いは気のおけない友達と行くということ。こういうところを楽しくするのがコミュ力向上の一歩と思ったが何をしていいやら分からずとりあえずスマホをしまった。
紗希 「由早面白い話してください。」
由早 「むちゃぶり!」
突っ込む由早に手段を間違えたことを認識した。
瑞希 「いっちゃん達もう着いているみたい。」
瑞希は私たちの会話を無視して都花とLIMEで連絡をとっているようです。ん?「達」他に誰かいるのですか?茶道部?いい予感がしない。世の中私の知らないことが多すぎますねと可能性を模索していたら姫路につきました。ホームから続く階段を恐る恐る降り改札の手前まで行くと都花に群がる男子4人を確認した。その中に谷八木の姿を確認。理解した。「スターナントカ・ワールド」私の時間が再びとまる。改札から出られない。とかふざけていると瑞希が手を引く。
瑞希 「待たせてるから行くよ。」
時間通りに来てるし、待たせた覚えないし、知らない人いるし行きたくない。
紗希 「帰る。」
瑞希 「約束。」
卑怯者と罵りながらも抵抗のできない私を連れて瑞希はにこやかに都花達に手を振りながら改札を出た。一日無駄になるけど黙っていても時間は過ぎるのでやり過ごすしか無いようですねと自分に言い聞かせ足を動かす。
都花 「おはよう。男子めっちゃ早かったよ。」
由早 「がっつきすぎちゃうん?」
由早は冷ややかな視線を男子に向ける。
宗磨 「いや、女子待たせるのダメでしょ。」
あ、この人知っている「日富美 宗磨」上位常連の人ですね。意外とチャラいですね。赤いセルフレームのメガネがなんかお揃いっぽくて嫌なので私はメガネを外す。由早もこの事知ってたみたいですね。裏切り者と視線を由早に向けると視線が合う前に背を向けられてしまいました。
瑞希 「おはよう。意外と紳士なんやね。」
宗磨 「意外とって俺どんなんよ。」
おどけてオーバーに振る舞うのがうざい。もっと普通にできないですかね。
氶太良「おはよう。カズチャラいからな。」
谷八木はそう言いながらさりげなく立ち位置を瑞希の横に取る。今日は間違えませんでしたね。あなたも十分チャラいですよ。状況把握の為に見渡すともう一人知っている人がいました。「上ノ丸 蒼甫」彼は私が勝手に天敵認定している人物で試験では目につく範囲で上にいる嫌な人です。逆恨み。もっと努力しようよ私。
宗磨 「そんな事無いって。とりま自己紹介しよっか。」
自己紹介も何も呼ばれた趣旨が分かっていない私。瑞希をつついてこっちを向かせて周りに聞こえない様に尋ねる。
紗希 「これどう言う事ですか?」
ん?とかわいく小首を傾げてとぼける。イラッとしたので私も笑顔でコート中に手を入れて脇腹をつねる
瑞希 「痛っ。」
紗希 「どうかしましたか?」
心配する振りをして人の輪から少し距離を取る。
瑞希 「えーだって言ったら絶対こーへんやん。」
それはだまし討ちをしていい理由にはならないですよ。妹で無ければ脇腹をつねつねしている所ですよ。もうつねりましたが。
紗希 「知らなかったの私だけですか?」
瑞希 「由早ちゃんも知らんかったと思うよ。いっちゃんが言ってなかったらやけど。」
知らなかったとしたら由早の適応能力には脱帽です。由早さん疑ってすみませんでした。
紗希 「で?この集まりは何ですか?」
事と次第で私は帰らざるを得ない状況ですよ。
瑞希 「んー休日を楽しむ会。」
この状況で私が楽しめる筈がない。つねつね。
瑞希 「ごめん。氶君にデート?誘われて断ったらこうなりました。」
端折り過ぎてよくわからない説明でしたが長くなって不審に思われてもなんなので輪に戻ると自己紹介が始まった。
宗磨 「じゃ俺から。日富美 宗磨 カズでいいです。今日は噂のカルテットとデートでいろんな意味で上がってます。」
ん?デートなの?いろいろ突っ込みどころありましたがデートと言う言葉が一番引っかかりますね。違いますよね?と瑞希に視線を向けると小さくふるふると首を振って否定する。
氶太良「じゃ次俺 谷八木 氶太良です。瑞希さんには氶君って呼ばれてます。緊張してます。」
さり気に瑞希と仲良いアピールで周りを牽制ですか?にしても一言多い自己紹介をする人達ですね。テンプレですか?
泰河 「大蔵谷 泰河です。よろしく。」
あれ?この方は意外とあっさりしてますね。んーどこかで見かけたような・・・前の二人よりは好感度高いです。前の二人よりはです。
宗磨 「ちょ、もうちょっと何かあるやろ。京神の誇る美女を称える賛辞とか。」
いえ、公衆の面前でそんなのいらないです。引き気味の私の表情を捉えた日富美はさらに調子づく。
宗磨 「ほら、金ヶ崎さんひいてるやん。つまらん男やと思われるで。」
全てあなたですよ。日富美はこれで私より成績がいいのが悔しい。もちょっと真面目に勉強しとけばよかったです。
蒼甫 「カズ引かれてるんお前やって。上ノ丸 蒼甫です。」
普通こう解釈しますよね。流石私の好敵手(勝手に認定)。
宗磨 「いやむしろ俺は引かれてるより惹かれてます。」
上手いこと言ったよとドヤ顔で決める。絶望的にだめだこの人。原稿用紙5枚分くらい余裕でダメ出しができそうなレベルです。「ははは」と愛想笑いをする都花と瑞希に少し不満気な日富美。いや活字だと分かりますが言葉だと伝わりにくいですから。面白くもないし愛想笑いだけでもありがたいと思ってください。
蒼甫 「こんな騒がしい奴らですけど今日はよろしく。」
なんか綺麗にまとめましたね。こういうのは嫌いじゃないです。
宗磨 「ちょ、お前何スルーしてまとめよんねん。」
瑞希 「はい。妹の方の金ケ崎 瑞希です。よろしくね。」
瑞希も日富美を華麗にスルーする。予期せぬ方向からのスルーにへこむかと思えばさらに調子づいた。
宗磨 「ちょぉ、金ケ崎さんまでスルーとかどんな扱いよ。」
蒼甫 「気にせず続けてください。」
日富美の扱いはなれているらしく上ノ丸は縋る日富美をあしらい都花にどうぞと自己紹介を促す。
都花 「長坂寺 都花です。って知ってますよね。なんか恥ずかしい。」
都花の発言で気づきました上ノ丸と大蔵谷はクラスメイトでした。だから全く知らない二人よりは好感度が高かったのですね。でもクラスメイト忘れてたとかどんだけ交友範囲狭いのですか私。
由早 「南貴崎 由早です。でこっちが金ケ崎姉の紗希ちゃんです。ちょっと無愛想ですがよろしくお願いします。」
自分の自己紹介してくださいよ。なんか私痛々しい子になちゃってませんか?
紗希 「自分で言いますよ。金ヶ崎紗希です。途中で迷子になっても無事なので探さないでください。」
痛々しい子でした。
宗磨 「迷子キャラとか新しいなぁ。でも俺が迷子になんかさせへんから。」
もっと痛々しいのがいました。途中で帰っちゃいますよという意味だったのに・・・え?分かってて阻止するって意味ですか?ストーカー?見張られているみたいで怖いです。一通り自己紹介が終わったところでボウリングに行こうと言う事になっていた。行きたくないのですが。7対1で駄々を捏ねるわけにもいかないので従い歩き出す。なんなのですかこれ。先頭は瑞希と谷八木、直ぐ後ろに都花と大蔵谷これでグループを形成している。となると最後方の私と由早の前には好敵手上ノ丸と問題の日富美がいた。よりによって一番苦手なタイプの人達と一緒になるとかついていないと言うか瑞希と谷八木が一緒にいる時点で上の丸と日富美が仲がいいならこの分け方は確定だったのでしょうね。
宗磨 「紗希さんクールやね。クールビューティーやわ。」
ちょ・・・いきなり下の名前で呼びますか。クールビューティーって褒め言葉じゃない様な気がするのですが気のせいですか。いろんな意味で冷たい視線を送ると察しがいいのか弁明をする。
宗磨 「あ、いやほら金ヶ崎さんって呼んだらどっちかわからんやん。」
瑞希は少し離れているし今は金ヶ崎で通じますよ。
紗希 「無愛想ですみません日富美さん。」
絶対「カズ」とか呼びませんから。クールビューティーを無愛想と皮肉った私の意図はつたわったのでしょうか?
蒼甫 「金ヶ崎さんは話すの苦手なん?」
場の空気を察したのか上ノ丸は柔らかく迷子の子供に尋ねる様に聞く。こういう気遣いは嫌いではないし、申し訳ないとまで思ってしまいます。由早もそれにすばやく対応する。あ、申し訳ないです。
由早 「うちらとは大丈夫なんやけど、言葉きついし、何故か言い負かそうとするから自重しているみたいなんよ。」
由早さん説明ありがとうございます。と、感謝しているとどさくさに紛れて由早が腕を組んできた。歩き難いですって。
宗磨 「俺は平気やで。むしろきつい言葉で言って欲しいわ。」
え?変態さんですか?
紗希 「どMですか?」
宗磨 蒼甫 『いや、』
ハモられた日富美があっけにとられていると上ノ丸がまるっとお見通しとばかりに続ける。
蒼甫 「そっちのほうが距離が縮まるとか、本音で言い合える方がええねんっとか言うつもりやろ?」
うわーこれ人に言われると恥ずかしいですね。
由早 「うわー。」
由早さん声漏れていますよ。
蒼甫 「金ヶ崎さんそう言うの苦手みたいやからおとなしくしとこうか。」
そう言いながらばつの悪そうな日富美の肩をバシバシ叩いて諭す。何この人怖い。私だったら恥ずかしくて逃げ出すレベル。だからそんな台詞は口にしませんが。
宗磨 「そういうお前やってあれやろ。俺の方が辛辣やから安心しろアピール。」
あーそう言う事なのですか。無駄に頭がいいですね。でも読み取る私が最後まで言ってもらわないと分からなかったのでそこは済みませんでした。一連のやり取りを理解した私は単なる言葉遊びに作っていた壁やら緊張を解され知らない人と会話するのも悪くないかもと思いました。ただし賢に限る。
紗希 「キモっ。」
ここでもやってしまう私誰か助けて下さい。治んないかなこの性格。
宗磨 「ほらキモいって。」
勝ち誇る日富美。ポケットに手を入れたままおどけて上ノ丸のふとももに軽く膝蹴りを入れる。
由早 「いや二人ともちゃうん。」
由早も私が孤立しない様に合いの手を入れてくれる。
蒼甫 「いやきっついわ。」
上ノ丸も気にしてないよとおどけて話す。なにこのもてなし。ホストクラブですか?行った事無いので想像で言いました。ここまで気を使われて大人対応をされては、ちゃんとしないと自分がみじめなので今日一日は頑張りますよ。あくまで自分の為ですからね。ツンデレとかじゃなくて。




