プレゼントは気持ちが大事?
34.
俺とちかげは、しばらくデパート内を二人で歩いていた。
テナントには、チョコレート専門店が、軒並みバレンタインデーフェアを開始している様が見受けられる。
「ねーねーたける。さっきからチョコレート専門店ばっか見てない? もしかして、意識しちゃってるー?」
ちかげは、テナントをじっと見ていた俺を煽ってくる。
「バレンタインデーもうすぐだもんねー。フッヒッヒ、楽しみにしてなよたける☆」
気味の悪い笑い方だな。まぁ意識してないと言えば嘘にはなるが。
俺には確約しているやつが二人いる。
一人はここにいる、ちかげ。
もう一人は、ちとせだ。
まぁ、色々あって二人からもらうことになったのだ。でも今それは関係がない。
それにしても、デパートに来たのはちとせのプレゼントを買うために来たのだろう?
もう少し、それらしい発言が出てきてもいい頃なんだが。
「たける!」
ちかげは俺を元気な声で呼んだ。
「そろそろ本題のプレゼント買いに行くわよ!」
人差し指を立てて、ウインクをしている。
何故そんな自信満々なんですかねぇ、この娘は。
「やっと、思い出したかー。俺てっきり忘れてるのかと思ったよ」
俺は当然のことを言う。
「えーっと、だってーだってー」
ちかげは何やら、手をモジモジとしている。
「たけるとデートしてるみたいで、楽しいんだもん。こういう風に出かけるのって、小さいころ以来でしょ?」
途端にしおらしくなるちかげにドキッとする。
こいつのこういう所って、なんか可愛いんだよなぁ、不意打ちっていうか。
「私、ついたけるに夢中になっちゃった。テヘヘ・・・」
恥ずかしそうにちかげは笑う。
ったくこいつは、こんな恥ずかしいことを、本人の前で言えるかね。んまぁ、別に悪い気はしないけど。
「もう、たけるとのデートは終わり! ちとせさんのプレゼント買いに行くわよ!」
ちかげはサムズアップする。
まぁ、これでやっと今日の本題に入れるわけか。良かった良かった。
「まずね、たける。女の子は形に残るものをプレゼントとして求めてるの!」
ふむふむ。
「食べ物とかでも、喜ぶ娘もいるわ。でもね、そんなすぐに無くなっちゃうようなプレゼントだったら、いつでも渡せると思わない?」
妙に納得できる。いいぞいいぞ。
「従って、今日買いに行くのは・・・ズバリ、アクセサリーよ!」
なるほどね。
「ということは、アクセサリーショップに向かえばいいんだな」
「そういうこと!」
目的の物は決まった。
いざ、アクセサリーショップへと、向かおうではないか。
俺とちかげは、デパートの3階にある、アクセサリーショップへと向かうことにした。
店に着いてみると、女の子用の髪飾りが置いてある。
可愛らしいのから、ちょっと大人っぽい雰囲気のヘアピンが、様々な色で並んでいる。
到底俺には、理解ができない世界のお店である。
ちかげと来てて良かったぜ。俺一人じゃ、何選んだらいいかわからん。
「キャー、これ可愛い! キャーキャー☆」
ちかげは、商品を見るなり、大きな声ではしゃいでいた。
そんなに大きな声だすなよ。周りの人もいるんだから。
ちかげは、商品を取っては、試着取っては、試着を繰り返して、鏡を覗いている。
「ねーねー、たける。これ似合うかな? どう? どう?」
ちかげのキレイな黒髪ロングストレートに、可愛らしい緑色のヘアピンが、付けられていた。
うっ、いつもと雰囲気が違ってて、なんか可愛い。
ちかげはいつも、自然体だからな。ヘアピンしてるとこなんて、見たことがない。
「こぉーんなのはどうかな?」
休む暇もなく、ちかげは俺にヘアピンを見せてくる。
ちかげの髪型は、いつの間にか、ポニーテールに変更されていた。
元々活発な性格のちかげだ。ポニーテールとヘアピンの相性が抜群すぎる。
まるでスポーツでもやってるかのような、健康美少女だ。
「ねー、たけるったらー」
ちかげの一言で我に返った。
どうやら俺はちかげに見惚れていて、自分の世界に入り込んでしまっていたようだ。
「な、なんだよ?」
ちかげはジト目で俺を見る。
少しの間が空いた後、ちかげはニヤニヤとしながら、俺に話しかける。
「たけるー。実はー、ちかげちゃんに見惚れてたでしょ!」
「そ、そんなことねーよ!」
平常心とは程遠い、テンションで返答する俺。なぜ見抜かれたし。
恥ずかしくて目を合わせられない俺は、ちかげの顔とは逆の方向に、目を逸らした。
「えっ?」
ちかげの驚いた声が聞こえる。
「ご、ごめんね、たける。私、ちょ、調子に乗りすぎたかも。アハハ、アハハ・・・」
ちかげの方を再び見ると、今度は逆にちかげが、俺から目を逸らしていた。
「は、早く、ちとせさんのヘアピン、か、買うわよぉー」
上ずった声になってるぞ、ちかげ。何があったんだ? なんか顔を手で隠してるし。
まぁいいか。
「よし、これにしよう!」
俺はヘアピンがどんなものか、よくはわからないが、わからないなりに、ちとせへのプレゼントを選んだ。
可愛らしいうさぎをアクセントに、全体がアクアブルーで塗られているそのヘアピンは、ちとせの清楚でキレイなイメージを、そのまま映しているかのようだった。
選定理由は正にそれが決めてだった。
あと、ちかげに装着してもらって、大体のイメージ湧いたしな。ちかげには感謝感謝だ。
「どういたしましてー☆」
「ほんと、ありがとうな」
俺とちかげは、目的を終える。
さぁて、用事も済んだことだし、そろそろ家に帰るか。
そう思い、帰路に立とうと思った時、ちかげに服の裾をグッと掴まれた。
「たーけーるー? まさかそれそのまま、ちとせさんに渡すだけじゃないでしょうねー?」
なんか怖いですよちかげさん。
「だーめよー。プレゼントは確かに効果抜群だけど、気持ちが大事なんだからね、気持ちが!」
ちかげは俺に渡し方を教えてくれているようだ。
そうだよな、ただ渡すだけじゃダメだよな。うっかりしてた。(反省)
「そうよ、ここからはたけるの気持ちが大事なの。どういう風に渡すかは、たける次第。プレゼント選びまでは付き合ったけど、もうこの先はダメ。あとは自分で考えなさい」
厳しいお言葉をいただく。
今日のちかげ、マジ先生。
「で、でもさ」
俺は唐突に日付を思い出した。
「今日土曜日だろ? 明日日曜日で休日だぜ? どうやってちとせを誘えばいいかわからないぞ」
学校があるなら、色々口実にできそうなもんだが、いかんせん休日となると、携帯に連絡でもしない限り、会うことはない。
プレゼントを買えたっていうのに、まさか、こんなところに落とし穴があったとは・・・。
「大丈夫よ!」
な、なんだって!? 今日のちかげ、マジで頼りになる!
「だってね」
ちかげは、焦らすようにして間を空ける。
ふ、ふむ・・・。
「さっき、ヘアピン売り場の隅にいたんだもん」




