変化
24.
家に帰ってみると、携帯にメールが1件入っていた。
件名:「ダーリン☆」
本文:「愛してる」
なんて簡素かつ、本質をとらえたメールなのだろう、と感心した。
んまぁ、予想してなかったわけじゃないが。なんか求愛行動エスカレートしてきたな、ちかげ。
そんなちかげに呆れつつも、俺はメールを返すことにした。
件名:「Re:ダーリン☆」
本文:「オレは愛してない」
よしっ、送信完了っと。
ピピピ・・・。
ん? もう返信帰ってきたか。
件名:「Re:Re:ダーリン☆」
本文:「呪ってやる」
ちょ、ちかげさん、ヤンデレですか!?
さすがに、冗談が過ぎたかと思った俺は、すぐさま謝罪のメールを送り、ひとまずその場をなだめた。ふぅ、危なかった。(いろんな意味で)
それから、ちかげが機嫌を直してくれたのかは定かではないが、メールのやりとりは、これで終了した。
明日、ちかげと会うのが楽しみだな。
今回の件で、ちかげとの仲がグッと深まって、幼馴染以上の何かになったと思う。
別に、恋人を思うような、うれしい気持ちになったという感じではない。そうではないと、否定すると嘘にはなるけど。
正直嬉しいし、ちかげを恋人にしたいと思わないこともない。
あぁ、なんか俺、じれったいな。
だって恥ずかしいじゃないか。今まで、恋人として意識なんかしたことがない幼馴染を、意識するようになるのだから。
さっきのメールみたいな他愛のない会話ができるのも、正直嬉しいし、ちかげを思うと、妙に愛らしくなる。
これが恋というものなのだろうか。
マンガや雑誌で読んだときは、半信半疑どころか都市伝説とでさえ、思っていた。
だけど、今はちょっぴり信じることができると思う。
こんなに大切にしたいと思うやつは、今の今まで出てこなかったしな。
ちかげと、その・・・キsとか・・・。
そういえば、あいつの唇、キレイで、柔らかそうだったな。
枕に顔をうずめながら、よからぬ妄想をする俺。
あれ? 俺キャラ変わってないか?
しかしながら、俺は、タイムリーなイベントや、気持ちの高揚に、しばらくベッドで一人悶えていた。あぁ、恥ずかしい。
眠くなってきたな。もう23時か。そろそろ疲れたし、寝たほうがいいかな。
俺は、ちかげのことを思いながら、ほんわかとした空気に包まれて、消灯と共に、長い長い一日を終わらせるのであった。
25.
一方、同時刻、パジャマ姿のちかげは、枕を抱きながら、ベッドに寝転がっていた。
「はぁ・・・」
ちかげは、大きくため息をついた。
「はぁ・・・♥」
枕にギュッと力を込める。
「たけるに、抱きしめられちゃった・・・」
枕に込める力を、さらに強くする。
「たけるに、抱きしめられちゃったー!」
嬉しそうな奇声を上げて、ベッドをゴロゴロと転がる。
「キャー☆」
ちかげはしばらくの間、奇声を発していた。そう、恋人(否認可)のたけるが、自分にしてくれたことを、心から喜んでいるのだ。
「さっき、愛してるってメール送っちゃったー。送っちゃったー!」
しかし、喜んでいたのもつかの間、愛しのたける王子(?)からは、『愛していない』と返信が来たのだ。
ちかげはそれでも嬉しかった。そんなの冗談とすぐに受け取った。
「もう、たけるったら、恥ずかしがり屋さんなんだから☆ ・・・呪ってやる(この間0.5秒)」
嬉しさのあまり、気持ちが高揚して、すぐには気付かなかったが、よく見ると、実にKYな文章が、書かれているではないか。
瞬時にそう判断したちかげは、テンプレート機能で張り付けるよりも速く、『呪ってやる』とメールを作成し、たけるに深い愛情の様をぶつけることを決定した。
すぐに冗談であると、説得のメールが来るまでは、本気で怒っていたので、物凄いスピードでプチプチを30枚ほど仕留めていた。(5秒で1枚)
ちかげの自己記録更新である。
すぐに冗談だとわかり、ちかげはホッとした。
そして頬を少し赤らめて、
「たけるとこういう風に、冗談を言い合えるのって、楽しいな♪」
と改めて思うようになっていた。
あまりの嬉しさに疲れてしまったか、枕に顔をうずめて、そのまま寝る体勢に入る。
ポスン! と音を立てて、ベッドに入ったちかげは、今日の出来事を思い返して、また嬉しくなり、
「たける・・・大好き」
と何度もつぶやいた。
大好きな人を思いながら、明日への期待を胸に抱きながら、ゆっくりとゆっくりと、ちかげは、眠りにつく。
「ふふっ、明日もいいことありますように」
最後にそうセリフを残して、ちかげは、深い深い眠りについた。




