憧れの魔法使い
――魔法使いに、なりたかった。
昔から、憧れだった。パパとママのような、たくさんの人を助けられる素敵な魔法使いに。そして、いつかはなれると信じ頑張ってきた。
――だけど、時間が経てば嫌でも知ることになる。それが、僕のような無能には過ぎた願いだということを。
「――やぁ、ハンス。今日も注目の的だったね〜。僕らエリートには無縁だから、本当にうらやましくて仕方がないな〜」
「ふふっ、ほんとよね〜、アルベルト。あんなにも目立つなんてできないものね〜、私達エリートには」
ある日のお昼前のこと。
三時間目の授業の後、鮮やかなステンドグラスが彩る廊下を歩いていると、後方から話しかけてきたのは一組の男女生徒。男の子はアルベルトくん、女の子はティナさんで、二人とも僕と同じ二年F組のクラスメイトで。僕なんかにお褒めの言葉をくださり、何とも恐悦至極な心境で。
……なんて、もちろん皮肉であることは明白。先ほどの授業にて、今日も今日とて何の魔法も使えず嘲笑の的になっていた僕に対する皮肉で。
さて、ここはブリトール王国――ヨーロッパに位置する小さな島国で、遥か昔から魔法の研究が盛んに行われていたとのこと。そして、昔から現在に至るまで世界一の魔法大国と称されているとのことで。
なので、国内には数多の魔法使い養成機関が存在するのだけど――僕の通っているここマギア魔法学院は、その中でも最上位と言って差し支えない名門校で。なので当然、国内全土から選りすぐりの魔法使いの皆さんが集うわけなのだけども……うん、ほんとなんで受かったんだろうね、僕。おじいちゃんとおばあちゃんが強く勧めてくれたから受験してみたけど……でも、二人には申し訳ないけど、僕としては受かるなんて文字通り全く以て思っていなくて、いわゆる記念受験みたいなものだったんだけれど……うん、ほんとなんでだろうね? 実は選考にミスがあった、と言われてもきっと驚かないし、むしろ大いに納得すると思う。ともあれ、そんなエリート集う当学園の中でもひときわ異彩を放っているのが――
「……おお、流石はユリアさま……」
「……うん、今日も神々しい……」
四時間目の授業にて、広い教室内から口々に感嘆の声が。皆さんの視線の先には、本日も息を呑むほど見事に風を操る、鮮やかな銀髪を纏う可憐な少女のお姿が。彼女はユリアさん――クラスのみならず、学年、いや校内でもトップと言って差し支えないであろう能力を備える女子生徒で。そして、言うまでもなくまさしく僕とは住む世界の違う人で……うん、きっとお話しする機会とかもないんだろうなあ。今、こうしてお姿を拝見できているだけでも本当に僥倖という他ないわけでして。




