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17 呼び出し


「ただいまー!」

ネオコルムの家の扉を通って亜空間の家にニーナが帰ってきた。

「おかえりなさい。今年のお世話猫大会はどうでした?もふもふ審査員長は大人気だったんじゃないですか?」


「凄かった。猫族に囲まれてもふもふでこんな幸せがあるんだって思うんだけど、私どうなっちゃうの?て不安にもなったわ。勢いがすごいの。あっという間に視界が全部猫だったの。可愛かったけど疲れた。ドニお願いします!」

「はい、どうぞいらっしゃい。」

ニーナはドニの胸に飛び込んだ。

「さすがドニ。今日も最高。幸せ。いい匂い。」


「新しいお菓子の味見をしたの。」

「甘味屋のですか?」

「そう。その後ゾーイに護身術を習ったんだけど、この後はジャムを作るらしくって、アンナが焼いたパンを取りに来たの。」

「アンナさんのパン、美味しいですよね。籠に入れますね。」

「ありがと。じゃあ、いってきます!」


 ニーナは亜空間の家とネオコルムの家を行ったり来たりしながら、習い事をしたり猫族と交流をしたり、毎日が楽しくて仕方なかった。そろそろ十五歳になるという頃、クロから話があると言われた。


 亜空間の家でもネオコルムの家でもシロに気づかれる、と言うのでパルニア公爵家の図書室に転移して、ジャンに外から結界を張ってもらった。人型のクロと二人、机を挟んで向かい合った。


「ニーナ、急にすまない。ニーナもそろそろ十五歳だ。人はそろそろ誰と婚約するとか、結婚するとか考え出す頃だろう?まあ、ニーナは特殊な環境で育ったから、しっくりこないかもしれないし、時代も違うかもしれないが、わしが見てきた中ではそういう者が多かった。」

ニーナは頷いた。


「誰にも言っていない事だから、黙っていてほしいんだが、実は、マリーにも同じ質問をした。」

「マリーさんにですか?」

「そうだ。マリーは別々に生きる事を選んだ。その先はニーナの答えを聞いてから伝える。」

「こたえ・・・」


「龍は子を成さない。子を持つ未来が欲しかったらシロは諦めろ。ニーナはどうする?」

ニーナは言葉が出なかった。シロと会わない未来。シロの側に居る未来。子が欲しいか、欲しくないか。自分が産む子どもに会ってみたい気持ち。母子の関係性はニーナにとっては想像でしかなく、実感がない。


「すぐ答えは出ないものだ。まずは昔話をしよう。ユーエラニアとネオコルムは元はドルムエラルという一つの国だった。そして大地にあった。我々は今浮島の上で暮らしている。」


ーーーーーーー


 マリーはクロの話を聞いたあと、恋人を作った。声をかけて来た海で仕事をしている人の誘いにのった。幸せそうなマリーを見て、シロはマリーに何か特別なお祝いを渡したかった。試しに剥がれた自分の鱗をこねると龍玉ができた。


「お、龍玉作ったの?誰かに贈るのか?まさかそのまま送るんじゃないだろうな。」

「このまま渡そうと思ってたけど。」

「俺に任せろ。街で良い細工師を見つけたんだ。綺麗な飾り箱を作ってもらうから待て。」


 コウは自分の魔力を込めた材料を用意して飾り箱を作ってもらった。シロの魔力をコウの魔力が相殺して、魔力が漏れない箱になる。その箱の受け取りの日、コウは街に降りた。コウが慌ててシロを呼ぶ声で、シロも急いで街に向かった。


 街と亜空間の出入り口の間にコウは居た。

「シロ!来たか。マリーの街まで炎が迫っている!行こう!」

「炎が?」

「まずは移動だ!」

「分かった。」

二匹は龍の姿で急いだ。降りると同時に人型になる。


 炎の魔法で破壊を繰り返す人を見つけた。複数いる。

「魔法使いか!」

「俺はあいつらを眠らせるから、シロはマリーを探せ!」

「分かった。マリーの気配・・・いた!」

シロはマリーを見つけた。よかった、無事だ。

「マリー!」


「シロ!ここは危ないわ。でもどこに逃げたらいいかも分からないの。家族は仕事で国中に散らばっているの。いっそ国ごと安全なところへ逃げたい。どうしたらいいの。」

「できるよ!」


 シロは結界魔法を使い可能な限り広く国ごと大地を切り取った。

「浮かぶよ。」

大地が揺れて、あちらこちらで悲鳴があがった。持ち上がる。人々は大地に縫い付けられた。


 コウが呼んでいたクロも来た。大地を土魔法で固定してくれて、揺れは止まった。ゆっくりと大地から離れて、ドルムエラル王国は浮島になった。


「マリー、マリーの家はどっち?」

シロは火の周りの空気を消して、火を消していく。コウは次々と人々を眠らせた。マリーの家にはマリーによく似た母親がいて、マリーのことを探していた。

「マリー!無事だったのね!」

母親に抱きしめられて、マリーはやっと安心したように見えた。

「じゃあマリー、またね。」


 シロとコウは龍の姿になって飛んで行った。その姿を見たマリーの母親は大興奮だった。マリーの家は元々画家の一族で、稀にある龍の目撃談を追って国中に散らばっていた。マリーの母親は龍の絵をたくさん描いた。絵本の絵はこの時のものだと思われる。


 コウはシロに受け取った箱を渡した。中には無断で持ち出したシロの龍玉が入っていた。この時のコウの店での様子や姿が職人の記録で残されていて、その上店から飛び立った龍型のコウも目撃されていた。会話や絵姿など詳細に記載されていた。国王に龍玉の存在を知られたのはこの記録があったからだとも言える。


 マリーと別れた後、三匹の龍は国を見て廻った。コウは人々の記憶に干渉して、生まれた時から浮島に居るとほとんどの者に思わせた。一部の者は大地から飛んだ衝撃で魔法が効かず、今いる地面は浮いている、龍の仕業だ、と騒いで周囲から敬遠された者も居た。


 シロは疲れて泉で眠ってしまった。


 人々は一先ず炎からは救われた。


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