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13 眷族


 ゾーイが消えた後、コウはルドルフとの保護活動を続けていた。二人とも時々亜空間にゾーイの家を見に来た。今にもゾーイが出てきそうなのに、明かりがつかない家。二人はゾーイが消えた場所の近くに座って泉を眺めた。


 クロはゾーイが消えた辺りの土に自身の魔力を込めて龍を二匹作った。意外と良い出来で今にも動き出しそうだった。

「クロ上手いな。」

「クロさま、魂が入ったら動き出しそうです!」

ルドルフはコウ以外には丁寧だった。


「俺、魂七つあるから入れてやろうか?」

「え。コウすごいな。動くとこ見てみたいけど、コウは魂が減っても大丈夫なのか?」

「やった事ないから分からないけど、大丈夫な気がする。ま、やってみよう。」


「何色がいいかな。赤と青ならまだ紫があるから良いか。」

赤い玉と青い玉がコウの体から出た。一つずつ土の龍に入れる。


 土の龍は赤と青がそれぞれ混じって、紅色の龍と碧色の龍に変わった。

「紅龍と碧龍。紅と碧でいいか。おーい、聞こえるか?紅!碧!『成れ』」

色付いた土の龍は赤と青に光ると大きくなって、空に向かって飛んだ。

「すごいな、コウ!」

ルドルフは興奮してコウをバシバシ叩いた。


 クロはニヤリと笑った。

「少しは元気が出たか?お前たちが静かだとゾーイが驚くぞ。」

二匹の龍が戻ってきた。

「「初めまして。クロさま、コウさま。よろしくお願いします。」」


「紅、碧、こっちへ来い。お前たちには仕事がある。」

「もしかしてクロ、ユーエラニアの監視業務大変だった?ごめん。俺監視してなかった。」

「お前は王都を監視しろ。紅、碧、説明する。」

「紅、碧、俺はコウ。虹龍だ。よろしくな。」

紅龍と碧龍は紅と碧と呼ばれて嬉しそうだった。


 クロの案内で紅と碧は結界の外に出た。

「あれが魔獣だ。元は動物だったが、シロの魔力を浴びてなぜか魔獣になった。少し数を減らしたい。」

「どれでも良いのですか?」

「好きなのを選んで良い。」


 三匹はそれぞれ狩りに行った。

「あの綺麗な鳥も魔獣なの?」

碧が鳥に近づいた時、鳥に突かれた。碧は驚いて声も出なかった。鳥は碧の血を舐めてしまったようで。動かなくなった。慌てた碧はクロを呼んだ。

「血を舐めてしまってから様子がおかしいの。」


「眷族になってしまったな。言ってなかった。すまない。」

「眷族?」

「龍の血を与えると契約が成立する。碧の命に従う頑強で長寿な生き物になったという事だ。碧、名を与えてやれ。」


「ルリ。」

呼ばれた鳥は碧色に光った。

「碧さま。名をくださってありがとうございます。」

「俺も眷族欲しい!この狼はクロの眷族?かっこいいな。良さげなのに血を与えるんだったな?行ってくる。」

しばらくすると紅は紅い犬を連れて戻ってきた。シバと名付けた、とご機嫌だった。


「ロウ、ルリとシバの面倒をみてやってくれ。」

「かしこまりました。」


ーーーーーーー

 

 さて、魔法を使った舞台を初めて観たニーナは泣き腫らした顔をしていた。事前にドニに渡されていたタオルが役に立った。

「ドニ、ありがと。涙止まらないかと思ったよ。シロさまとクロさまかっこよかった。コウさまとルドルフさんは辛かったね。ゾーイ、ゾーイさんのこと考えるとまた涙が。」

「ゾーイ様は果報者です。」


「コウさま、意外と強引にゾーイさんをお世話猫にしてたね。」

「実はゾーイ様はかなり危険な状態だったようで、コウさまと血の契約をしたから生きていられたんだそうです。お世話猫は頑強で長寿なんですけど、従属の首輪は本当に厄介な物なんです。」


 ドニの案内で移動した先には綺麗な金色の石が置いてあった。

「さあ、ニーナ様、こちらゾーイ様の癒し石です。有名なんですよ。撫でながら魔力を込めるといい事があるんです。ニーナ様も是非どうぞ。」

「綺麗な石ね。ゾーイを包んだ光の色みたい。ここに魔力を込めるのね?」


 ニーナはジャンやアンナへの感謝。ドニへの感謝。舞台の登場人物の姿を思い浮かべた。そして、助からなかった人たちが今は心安らかであるように、願いながら魔力を込めた。


「魔暴走は実際に起きたことなんだよね?」

「ゾーイさまは有名で尊敬もされてましたから、当時の猫族が徹底して調たんです。現場に居た人やクロさまにもお聞きしたそうですよ。上演するにあたってクロさまの許可を取って、お二人のお姿も忠実に魔法で再現しているんです。まだシロさまとコウさまにはお伝えしていませんけど。」


「舞台演出もすごかったよ。お世話猫大会は今年もあるの?」

「ええ。今年はちょうどもふもふ度の部ですよ。そろそろお伝えしようと思っていたんですが、ニーナ様は特別審査員です。来月に備えて、もふもふ度を極めてもらいます。」


「もふもふ度を極めるとは?」

ニーナを迎えに来たジャンは、そこだけ聞こえたようだった。

「ジャン様、ワタシは、もふもふ度最高のお世話猫なんですよ。最強の師です。」

「ジャンも一緒にもふもふを極めようね!」

「ニーナが楽しいならもうなんでもいい。」

ジャンはニーナが幸せならそれで良かった。


 翌月、ドニのきめ細やかな指導で、猫族のもふもふについて熱く語れるようになったニーナは、立派に審査員を務めた。ついでにジャンももふもふになった。




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