第10話 「変わらないで」と言われると逆につらい
「お別れだね、やみこ」
中学校の卒業式。
やみこと友人は卒業証書の入った黒い丸筒を手に、今日で最後となる帰り道を歩いていた。
「……お別れっていっても、遠くに行くわけじゃないし」
「そうなんだけど、もう一緒の学校じゃないって思ったら、なんだか寂しい気がして」
言いながら、少しだけ瞳をうるませる友人。
やみこは公立の高校、友人は少し離れた私立の高校に進学することが決まっていた。
「咲の学校、県内一の進学校でしょ。がんばってね……」
「うん。やみこの方こそ、高校にいってもずっと変わらないでいてね」
「ずっと変わらないで――」
その瞬間、やみこの顔が青ざめた。
「ど、どうしたの、やみこ」
「私、高校では変わろうと思っていたから……」
「えっ」
驚く友人の前で、やみこはうろたえた表情のままとつぜんしゃがみこむ。
「いまの自分が嫌い。いまのままだと友だちもできないし、どうせ暗い未来しか待っていない。大人になってもずっとこのままで、おばあさんになってもずっとこのままでいたら、私、一生ひとりぼっちだから。だから変わらなくちゃいけない……。でも咲に『変わらないで』って言われたら、もうどうすればいいか分からない。変わりたい。変われない。どうしようどうしよう」
頭を抱えだすやみこに焦る友人。
「お、落ち着いて。そんなに深い意味で言ったんじゃないから。やみこが変わりたいなら、それでいいと思うよ」
「……本当に?」
「うん。やみこが変わりたいっていうなら、私、応援するから」
「…………」
「だから、元気だして、やみこ」
「……うん。じゃあ変わる。ぜったい変わる。高校に行ったら私は変わる。もう私は昔のやみこじゃない。じゃあ帰る」
「あ、待ってやみこ!」




