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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
36/82

level.35 どらのすけ が こっちを じぃーー!!



「以上が、今回の被害状況です」



 かたかたかたかたかた……。



 映写機の稼働音にございます。

 実物を見るのは、これが初めて。

 廃れて久しい、とても古風な出力装置ですな。

 まだ現役ばりばりで【迷いのまの森】支店では稼働中。



「次は私が提案する万能資源『 POW 』を盗掘する“常習犯”に対応するため」



 かたかたかたかたかた……。



 なんとも、もの悲しい響き。

 映写の都合上、ぴしゃりとすべての窓が閉め切られ

 外の光を遮断する暗幕の張られた【視聴覚室】は、かーなり蒸しております。

 『くーらー』などありません。

 天井に設置された、たった一基の壊れそうな扇風機が

 ぶうぅぅん………と、

 わずかばかりの涼を定期的に運んでくるのみ。




 しかし、本日は“記録的な猛暑”ということで、

 それぞれが席に着く学級机の下で『ぶりき製防火ばけつ』に満たされた

 『こおりみず』が特別に用意されました。



 さすが、おりんちゃん。経費削減が徹底されております。

 きんきんに冷えた『こおりみず』に両足をとっぷり浸し、

 古き良き文化を皆でちゃぽんと体験中♪



「あっつぅ」



 私のとなりの席の《猫男(どらのすけ)》から、思わず本音がこぼれます。



「今日、あっつーわ。たまらねえな」



 はい、か、いいえ、の選択をとなりの席の《猫男》に迫られました。

 友達になれるか、なれないかの『友好度めーたー』に影響しそうです。

 じゃあここは……「はい」で。



「だよなあ」



 効果音が鳴りません。

 変動せず、ということでしょうか?

 「いいえ」を選んだ時の《猫男(どらのすけ)》の返しが気になりますな。



「なあ、転校生」



 そういう設定なのですか。

 そういえば、なんだか急にそんな気がしてきました。

 系列の支店へ出向する私。

 やはり精神的に不安です……。



「一緒に抜けようぜ」

「は? 抜ける……とは、この会議をですか! そっ、そんなこと!」

「しーっ。静かにしろ、聞こえるぞ。こんな会議、暑くてやってらんねーよ。俺がこの森を案内してやる。どうだ、行かないか?」



 なんと。

 初日から(ふらぐ)が立ちました。



「流行りの『植物ばー』が近くにあるんだ。女子社員がうじゃうじゃの」



 おお。

 《猫男》とは、さっそく親友になれそうな予感。



「ちょっと、真面目に聞きなさいよ。また怒られるよ」



 と、《猫男(どらのすけ)》の前の席に座る風紀委員の《犬女(うーわん)》が

 小さく振り返って、きっ――と、おしゃべりする我々をたしなめます。

 さすが。

 しつけが行き届いておりますな。



「またかよ委員長。関係ないだろ」

「だから……委員長じゃないって何回言わせるのっ」

「静かにしないと駄目なんだろ。怒られるぜ、《犬女》委員長」

「だから、委員長じゃないっ。違うんだってば《猫男》くん!」



「――おいそこ、さっきからなにを騒いでいる。静かにしないか」

「すぅ、すみませんでしたあっ」




  「なにか、お前も言いたそうだな、夜幻(やげん)



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