level.35 どらのすけ が こっちを じぃーー!!
「以上が、今回の被害状況です」
かたかたかたかたかた……。
映写機の稼働音にございます。
実物を見るのは、これが初めて。
廃れて久しい、とても古風な出力装置ですな。
まだ現役ばりばりで【迷いのまの森】支店では稼働中。
「次は私が提案する万能資源『 POW 』を盗掘する“常習犯”に対応するため」
かたかたかたかたかた……。
なんとも、もの悲しい響き。
映写の都合上、ぴしゃりとすべての窓が閉め切られ
外の光を遮断する暗幕の張られた【視聴覚室】は、かーなり蒸しております。
『くーらー』などありません。
天井に設置された、たった一基の壊れそうな扇風機が
ぶうぅぅん………と、
わずかばかりの涼を定期的に運んでくるのみ。
しかし、本日は“記録的な猛暑”ということで、
それぞれが席に着く学級机の下で『ぶりき製防火ばけつ』に満たされた
『こおりみず』が特別に用意されました。
さすが、おりんちゃん。経費削減が徹底されております。
きんきんに冷えた『こおりみず』に両足をとっぷり浸し、
古き良き文化を皆でちゃぽんと体験中♪
「あっつぅ」
私のとなりの席の《猫男》から、思わず本音がこぼれます。
「今日、あっつーわ。たまらねえな」
はい、か、いいえ、の選択をとなりの席の《猫男》に迫られました。
友達になれるか、なれないかの『友好度めーたー』に影響しそうです。
じゃあここは……「はい」で。
「だよなあ」
効果音が鳴りません。
変動せず、ということでしょうか?
「いいえ」を選んだ時の《猫男》の返しが気になりますな。
「なあ、転校生」
そういう設定なのですか。
そういえば、なんだか急にそんな気がしてきました。
系列の支店へ出向する私。
やはり精神的に不安です……。
「一緒に抜けようぜ」
「は? 抜ける……とは、この会議をですか! そっ、そんなこと!」
「しーっ。静かにしろ、聞こえるぞ。こんな会議、暑くてやってらんねーよ。俺がこの森を案内してやる。どうだ、行かないか?」
なんと。
初日から旗が立ちました。
「流行りの『植物ばー』が近くにあるんだ。女子社員がうじゃうじゃの」
おお。
《猫男》とは、さっそく親友になれそうな予感。
「ちょっと、真面目に聞きなさいよ。また怒られるよ」
と、《猫男》の前の席に座る風紀委員の《犬女》が
小さく振り返って、きっ――と、おしゃべりする我々をたしなめます。
さすが。
しつけが行き届いておりますな。
「またかよ委員長。関係ないだろ」
「だから……委員長じゃないって何回言わせるのっ」
「静かにしないと駄目なんだろ。怒られるぜ、《犬女》委員長」
「だから、委員長じゃないっ。違うんだってば《猫男》くん!」
「――おいそこ、さっきからなにを騒いでいる。静かにしないか」
「すぅ、すみませんでしたあっ」
「なにか、お前も言いたそうだな、夜幻」




