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悪代官サマ と ユカイな仲マたち  作者: 中田 春
【 迷いのマの森 】 編
32/82

level.31 よめ(?) は いきりたって おそいかかった!!!!!


 ――こほん。



 では張り切って……おりんちゃん、どうぞ。




 「ひっ捕らえろ!」 




 『ごーごー!』ですっ!!!!!!


「な……で、で、出たぁ……“妖怪”だぁっ!」

「これが“噂の妖怪軍団”……逃げろぉぉ、全力で、全力で逃げろぉぉぉ」

「ヤツらを生きて出すな! 《食人木(はんぐりーぼっくり)》、噛んでよし!」

「ひえっ、ひえっ。“妖怪軍団”……お願いしますぅ、僕を殺さないでっ」

「オラア、サッサと逃げるんだよッ! 掘り出した万能資源『 POW 』を、とにかく風呂敷に包めェ!」



 さあさあ……楽しくなってまいりました。

 ぐへへ。すっかり私も悪役が板につきました。

 蜘蛛の子を散らしたように必死で逃げ惑う〈にんげん〉どもを見ると

 ついつい心が弾みます。

 あの頃の『おふぃすわーく』時代には戻れませんな。

 うひょひょひょ。



 森のいたるところで大口を広げる《食人木(はんぐりーぼっくり)》。

 そして本体は一体どこ? 

 白くて長い首をぐるぐる巻きつける《大首(びっくびー)》。

 恐ろしげな《山姥(ぐらんば)》が研ぎ澄まされた庖丁を振りかざし、

 両手に持つ火打石をかちかちして

 《丑之刻舞利(だんしんぐ・ないともー)》は楽しそうに横で踊りますぅ~。



「もうやめてっ! 私たちのHP(ひっとぽいんと)は残ってないのっ! 万能資源『 POW 』は、ここに全部置いていくから! だからお願い、お願いだから見逃してちょーだい!」



 げへげへ。

 だったら始めから来るなぁ。

 やるんじゃない、そんなこと。



「ひい。あの“経験者”はどこ行った……? はやい、はやいよ逃げ足が。あんなに山積みだった万能資源『 POW 』が、いつの間にかごっそり消えているし……残された俺たちはどうなるっ!」

「やっぱりここは、俺たちの『れべる』じゃ無理だったんだ!」


「当たり前だ。ちなみに推奨レベルは四十より上だ。入り口に立てておいた親切な立て看板が、お前たちにはどうして見えないんだ。あれほど赤いマジックペンで強調しておいたのに……まったく。少なくとも、今度はフル装備で来るんだな。特に――そこのお前、《革の胸当て》なんて軽装で来られると【迷いのマの森】支店の“格”が疑われる。ここは格式高い“プロフェッショナル仕様のダンジョン”ということを忘れるな。ビギナーは最初からお断りだ」



 ひゅう。かっこいい……。



「なあ、戻してくれるんだよな? 俺たちが次に目覚めるのは、街の【宿屋】だよな? こんな場所で『げーむおーばー』には絶対ならないよなぁ」

「通常ならな」

「ああっ、よかった~。これで、かあちゃんに会える」


「だが今回はダメだ。掘り出した『 POW 』と共に、お前たちは森の一部となってもらう」

「う、嘘だろ……そんなの、そんなの“お約束”が違うじゃないかっ! そんなの絶対に許されないぞっ!」

「もうしない。秋の新作なんて欲しくない。だから帰りたい、私を帰して!」



「黙れ」



 とっても凛々しい、おりんちゃんに、私の『はーと』は鷲掴みにございます。


 もっと、もっと強くぎゅっとして!


「この森は“本社へと至る最後の試練”。【アンゾルゴンのア大灯台】のように、すべてのモノに開かれてはいない。奇妙な話だが、我々が歓迎するのは大殿(おおとの)に挑むことを許される、選ばれた〈ニンゲン〉――つまり〈光のモノ〉のみ。お前も私も、決められた“お約束”の範囲内で自由だ。だが、“ルールから外れる選択をしたお前たち”に『次へ』はない」


 彼らに裁きが下ります。

 

 “あのお方”の表情が、すっと消えました。



 「気にするな。これはすべて、私の独り言だ。安らかに眠れ」




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