神様が操る能力③
「私は違う。そのすごい能力の家系じゃない。予知夢を見ようとしてみるなんかできないもん。
それに⋯⋯私は無能だよ?!だからEクラスなんじゃない⋯⋯。そうだよね?海!」
私が海の顔を見てそう尋ねると、海は下を向く。
「まなみ⋯⋯でも、夢の洋館⋯⋯。あの時貰ったものもあるんだよ。
でも。まなみは、そんな大それた家系の生まれじゃないと思う。田舎に住んでるオレの幼馴染だよ!」
そう言って海は私を見る。
そうだよね?
私と海の顔を見ると、ケンケンは悲しそうに笑った。
「まなみ、海くん。ここから先の話はうちの父の話を聞いてもらっていいかな?
桜井くんもこうやって関わってしまったから。一緒に聞いてくれるかな?」
ケンケンの隣の部屋は、本が沢山あって、書斎のような部屋だった。
そこには、ケンケンとそっくりな年配の男の人。
⋯⋯ケンケンのお父さんがいた。
ケンケンのお父さんは、私をなぜか懐かしそうに見つめ。ほほ笑んだ。
「はじめまして。まなみさん。」
ケンケンより低い通る声。優しい声。
「あ。はじめまして。」
慌てて頭を下げる。
海と桜井くんも私の後ろで会釈する。
「座りなさい。」
椅子に座るように言われ。私達はテーブルの前の椅子に座った。
「父さん。話は大方したから。」
ケンケンがそう伝えると。ケンケンのお父さんは。
「そうか⋯⋯。
少し昔話をしようか⋯⋯。」
懐かしい目をしながら話しだした。
「記憶操作の西家は、予知能力の東家の力を欲していて。東家は常に西家に監視される生活をしていたんだ。でも。莫大な資金をもつ西家の保護下でいる方がいいと考える一族のものも多かったから。従うことしかできなかったんだよ。
でもね。なかなか予知能力の子どもは産まれなかった。」
神様が世界を調整しているように。簡単には産まれないって言ってたよね。
私達は静かに話を聞いていた。
「そうだな⋯⋯今から十数年ほど前。念願の予知能力を持つ子が産まれそうだと話が出てきたんだ。」
え?最近に?
私と海は顔を見合わせる。
でも。産まれそうってどういうこと?
ケンケンのお父さんは、私を見つめると、話を続けた。
「皆のスキルを判断するには、スキルを確認できる能力の者が産まれる時に判定することは知っているよね?」
うん。そうだよね。
産まれた時に持っている能力は何かを産まれてすぐ判定されるの。
それを見る能力の人がいる。
私も産まれてすぐ判定されたって言われたもん。
「強い力はお腹にいる時から分かるんだよ。」
ケンケンのお父さんの話に、びっくりした。
お腹にいる時に分かるものもあるんだ⋯⋯。
じゃぁ、その予知能力の力は強いから、産まれる前に分かったってことなんだ⋯⋯。
「西家はね、大喜びしたそうだよ。産まれたらすぐ引き取る準備を始めていた。
東家は逆らうことはできなかった。でもね、さらに力をつけていく西家は手が付けられなくなる。世界を思いのままに操ることができることは、とても危険だ。
私達一族もこれ以上西家に力を持たせるのは危険だと思っていた。でも、誰も口出しが出来なかった。
予知能力の力は莫大なもの。使い方によって、プラスにもマイナスにもなる。誰もが固唾を飲んで産まれるのを待っていたんだが。その予知能力の子は死産だったんだよ。」
え?!
死んだってこと?
私はびっくりして言葉が出なかった。
死産だったんだ。じゃぁ、この世の中には、その能力の者はいないってこと?
ケンケンのお父さんは悲しそうに目を伏せると、また私を見た。
「難産だったようで。産まれる時に母子ともに死んでしまったんだよ。
西家はその報告を受けて怒り狂った。でも、母子ともに死んでしまったものを見せられて。立ち会った父親までもショックで亡くなってしまったのを目の前でみて。あきらめるしかなかった。
でも⋯⋯それは、表向きで。その子どもは本当は産まれていた。
私はね難産で、母子ともに危険だったため、治癒の力を使うために立ち会っていたんだよ。」
⋯⋯え?
どういうこと?
「まなみ。大丈夫?」
ケンケンが私の肩をそっとなでる。
優しい力が私の体を包む。
「ありがとう。大丈夫だよ。」
私が頷くと、ケンケンのお父さんは話をつづける。
「母親はね、産まれる子どもの力が分かったときに、西家に使われることを危惧していた。愛するわが子をそういう危険なそして、汚い世界に連れて行かれたくないと⋯⋯。
私に何度もその話をしていたんだ。私もね、その事には賛成だった。西家にこれ以上力をつけさせるのは危険だったから。
でも。産まれた子どもを隠すことは出来ない。
強い力は、産まれる前にわかってしまっていたから⋯⋯。どうしたらいいのかを考えた時⋯⋯。
その子どもの能力を封印したいと言ってきたんだ。父親と母親すべての命の力をつかって、子ども力を封印すると。」
⋯⋯そんなこと⋯⋯
「⋯⋯私達3人はね、幼馴染だったんだよ。彼女は優しくて、私の憧れだった。アイツと恋に落ちて、2人は結婚した。私は別の人と結婚をしたけど⋯⋯。もちろん大切な2人の結婚は私もとても嬉しかった。
その2人の決めたことを私は拒否することができなかった。
3人で念入りに計画をして。準備をした。
あの日⋯⋯難産だと言うことで私は呼ばれ。処置をするために力をつかうから。人払いをした。
強い能力だからこそ。人払いをするのは当たり前だからね。簡単に力を見せてはいけないものだから。
怪しまれることなく私達は3人になったよ。
力を封印することは命を持って行う危険な行為だ。
でも2人は迷いもなくやってのけたんだ。
産まれた子どもは可愛い女の子だった。使用人に、とても口の硬い水の力の強い女性がいて。事情を話して、遠くへ身を隠すように⋯⋯手はず通りに。産まれた子どもを遠い土地へ隠した。」
ケンケンのお父さんは私を見つめて。悲しい顔で。でも懐かしそうに私を見つめた。
「君は⋯⋯幸子さんにそっくりだ。君を見ていると、幸子さんと話しているようだ。」
え?⋯⋯幸子さん?
聞いたことのない名前⋯⋯。誰のこと……?
ケンケンのお父さんは、悲しそうに問いかけるように私を見ている。
「君は力を封じられたけど、全てを封じることはできなかった。力があまりにも強いからね。でも、残ったのは大したことのない、夢をみる能力だけだったんだ。
夢は誰でも見るものだからね。ただの『変わった夢を見る能力』だけが残ったんだよ。
予知のスキルはね、夢を通して未来を見るんだ。でも知識のない田舎なんかだと、予知能力についての情報なんて一切ないだろ?だから『変わった夢を見るだけの無能スキル』として片付けられるんだ。本当は東家の特別な力なのに……気が付かれないまま。命をかけて守った両親の願い通りにそこでできる限り幸せに暮らしていけるはずだった⋯⋯。
でも私達の思っていたより強い力だったために、少しずつ少しずつ、力が戻ってきてしまったんだよ。」




