野良猫、餌付けされる
夜斗は野良猫の様に警戒心を静かに持ちながら玲央の後に着いてタワマンの外へと出た。そしてここへ来た時に乗っていたリムジンに再び乗り込む。
「さぁ、ヨル。約束通りフレンチを食べに行こうか。」
「!フレンチ...!!」
...警戒心は何処へやら。"フレンチ"の言葉に釣られて夜斗は涎を垂らした。そんな夜斗の様子に玲央は微笑ましいものを見る目を向けた。そしてリムジンを走らせると、いつもの酒場の前を通り過ぎ、高級フレンチ店へと辿り着く。店内に入ると玲央は店員に何やらカードを手渡していた。
「?なんだ、そのカード。」
「ここは完全会員制なんだよ。だから予約なしでも来れるんだ。」
「...今までにも高級店に連れてって貰ったことは多かったけど、ここまでスゴい所は...初めてだ...。」
夜斗はキラキラと目を輝かせながらこれから食べる料理に心を踊らせ席に着く。そして、アミューズ、オードブル、スープ、メインディッシュ...と次々と料理が運ばれてくる。それを慣れた手つきで口へと運ぶ夜斗に玲央は感心した。
「驚いたな...。ここまで手慣れているなんて。作法がとても綺麗だ。」
「パパや男どもの中には金持ちが多かったからな。こういう場所でのマナーは一通り身につけてある。」
「...気に食わないな。」
「え?何?」
ボソリと呟く玲央に夜斗は聞き返すと、玲央は笑みを顔に貼り付け「何でもないよ」と答えた。
「あぁ、そうだ。これを渡しておこうと思って。」
そう言う玲央の手には黒いカードが。
「?なんだ...ってコレ...ブラックカード...」
「これで好きなだけ買い物していいよ。あ、勿論ネットでね?外に出る時は僕と一緒の時だけ。」
「ヨルは僕の飼い猫なんだから、分かるよね?」とサラリと軟禁宣言をしたのである。オレはもう自由気ままな野良猫には戻る事は許されないのだろう。そう悟った夜斗なのだった。
「...まぁいいぜ?アンタがオレを満足させてくれるような男であるのなら、な?」
そう言うと夜斗はワインを口に含む。その様子に玲央は満足気にニコニコと笑うと、
「君を満足させられる男になれるよう、努力しよう。野良出身の猫が逃げないようにするのが飼い主の役目だからね。」
と言う。ワイングラス越しに夜斗を見つめながら。




