野良猫、最初の男2
「ねぇ。オレの昔話、聞いてくれる?」
夜斗がそう切り出すと、ヨウタは「ホットミルクを持ってっ来るよ。」と言ってキッチンへと消えていった。どうやら長い話になるのを感じっとたらしい。ヨウタがキッチンからマグカップを2つ持ってくると、1つを夜斗に手渡してきた。そして、夜斗の向かい側に座ると、「どうぞ。」と夜斗の話しを促してきた。
「なんて事はない。母親は水商売をやっていて、オレは母親の連れ子。父親は母親の店の客だった。父親は朝から酒浸りになる程のクズ野郎で、ある日からオレの事を"そういう目"で見るようになったんだ。」
「...そういう目、とはつまり...」
「お察しの通り"性的な目"で、な。」
夜斗はそう言うとホットミルクを一口飲んだ。まだ適温にはなっていなかったようで、思わず「あちち」と声を漏らす。
「最初は見てるだけだったんだ。でも、母親が店の催しで旅行に行く事になって、数日間家を開ける事になったんだ。」
ここまで話しが来ると、ヨウタも続きが読める。
「母親が家を出た瞬間に、父親はオレの腕を縛り付けて自由を奪ってオレの身体を好き勝手にしたよ。」
「...性的虐待ってことで間違いないかな?」
「そだね。...それから毎日毎日、父親の言いなりになったよ。時には父親の仲間にも行為を強要された。母親がいる時はただの酒飲みクズ野郎だけど母親が仕事に行くと必ずと言っていいほど...」
「もういいよ!...もう何も話さなくていい。頑張ったね。よく生きていてくれた。」
ヨウタはそう言うと椅子から立ち上がり夜斗に近寄る。そしてそっと夜斗の身体を抱きしめた。抱きしめる際、夜斗の身体がびくりと震えたがお構いなしだ。そしてヨウタは驚愕する。確かに見た目も細かったが抱きしめた身体は骨と皮の様だったのだ。
「ご飯は食べてなかったのかい?」
「...母親も仕事から帰って来るとすぐ寝るから。メシらしいメシは食べてこなかったなぁ。」
「学校は?給食は出てただろう?」
「それはかろうじて食ってた。でももう食えないし...。」
「何故だい?」
「中学卒業したから。高校受験もしてない。だからこれからお先真っ暗。」
ヨウタは只々唖然とするしかなかった。何故ならまだ小学6年生くらいだと思っていたからだ。それが中学を卒業したばかりだとは...。これはこのままにしておくわけにはいけない。ヨウタは思い切って話しを切り出した。
「ヨル。君が嫌でなければ、ウチで一緒に暮らさないかい?勿論僕が仕事でいないときに外に出たりするのも全然咎めない。ただ、これだけは約束してほしい。」
「?」
「ご飯はきちんと食べる事。そして、僕が教えるからパソコンの操作を学ぼう。WordやExcelについて。」
「...わーど?えくせる?」
夜斗はまるで呪文を聞きましたとでも言うようにヨウタの言葉を繰り返した。そんな夜斗の様子に、これから先は長い道のりになるかもしれない...。そう思うヨウタであった。




