兆候
夜空の下、乾燥した荒野に巨大な電波望遠鏡が屹立している。
上空へ向けられたパラボラアンテナは、幾重にも交差する鋼鉄のトラス構造と、それを支える強固なコンクリートの基部によって構成されている。直径数十メートルに及ぶパネルの集合体である反射面は、特定の仰角を保ったまま静止していた。
周囲には砂礫と丈の低い灌木が広がるばかりで、動くものといえば乾いた風に揺れる植物の枝葉程度だ。巨大な建造物の足元には平屋の施設が併設されており、四角く切り取られた窓から人工的な明かりが荒野の地面へと漏れ出ている。
雲のない暗い空には無数の星が散らばっており、その下で、巨大な金属の塊はただ物理的な質量を伴ってそこに存在していた。
その構造物の基部から這い出る太いケーブルの束は、砂礫の地面を伝い、隣接するプレハブ棟の壁面へと吸い込まれている。
星明りが斜めに差し込む室内で、スチール製のデスクの群は、無秩序に積み上げられたプリントアウトと、底に褐色の澱が乾き付いたマグカップ、そして色とりどりのスナック菓子の空き袋で埋め尽くされていた。黒い合成皮革のオフィスチェアは、デスクから不規則な角度で押し出されたまま静止している。空調設備の低い稼働音だけが、単調な空気の振動として空間を満たしている。
部屋の奥、乱雑な書類の山に埋もれるように配置されたコンソール画面が、突如として青白い光を放った。
暗転していたモニターに、空間座標を示す散布図が浮かび上がる。徐々に明瞭になる無数の微小なピクセルの中、ある一点だけが不自然に輝度を帯び、鋭く点滅していた。
手垢のついたキーボードの前に座る者は誰もいない。密閉された暗がりの空間で、モニターが放つ光だけが、丸められたスナックの包み紙の表面に冷たく反射し、一定のリズムで明滅を繰り返していた。




