09
車に乗り込むと、瞬時にワープ装置が作動した。
ワープスポットに依らず、独自の装置が搭載されている車は高い……。
「大丈夫だよ、姉」
弟がモバイルホログラムを立ち上げていた。
手のひらに大猿のライブ中継が浮かび上がっている。
「楓は無事だ。やっぱりどこかに連れて行くみたいだ」
「……ていうか、ここドコ!?……ていうか母、その手首どうしたの?」
「これは……」
母は、今朝はなかった包帯を手首に巻いていた。
アタシとシュウジは、暗い車庫みたいなところで、真っ白なジャケットを着せられていた。
なんかコレ、警察の人たちが着てるみたいな……。
「今日、君たちのお母さんの献血で適合判明したんだよ」
サングラスの男が、私たちを見下ろした。
「時間がないんだ。乗って!!!」
「は!?」
車庫の壁がガガガガ……と開いて行く。
「おぉー!!!!!」
弟の目が輝き始めた。
鎌倉の大仏みたいな大きさのグリーンのロボ……ット???が、
車庫の中でスポットライトを浴びている。
「いやいやいや、ちょっと待ってよ。バカじゃないの!?」
「君のペットを助けられるかもしれない」
「はぁ!?」
「こうですか?」
「そうだ!シュウジ君!」
into と書かれたタイルにシュウジが乗ると、ロボットの胸に吸い込まれていった。
「いやいやいや!おかしいでしょ!」
「実華、早く来なよー」
弟の声に合わせて、ロボットの三角の白い目が金色に光った。
「えー……、ほんと、何?……まじで言ってんの?」
トン、と背中を押されて、私は into のタイルを踏んでしまった。




