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ゴブリントレーナー~ゴブリンを我が子同然に愛したら、成長率が凄いことになった~  作者: 心音ゆるり


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9/9

ゴブ子はファンを魅了する



 誠との話し合いをしたけれど、結局のところ『この状況は秘匿しておくべき』ということになった。そして、今後の世界の情勢について、一般市民ながら考えた結果、


「俺たちが強くなってから言えばいいか」


 という結論になった。強ささえ手に入れてしまえば、探索者はわりと融通が効くというか、好き勝手に命令されずに済むらしいのでね。核兵器とまでは言わないんだろうけど、それに近しいことができてしまう個人もいるようだし。


 まぁそれは良いとして。


「どうもみなさんこんにちは。『ゴブ子の成長記録チャンネル』です。昨日はあの後二層も進んだんですけど、問題なさそうだったので、今日はさらに飛ばして三層にチャレンジしてみようと思います」


 嘘である。

 昨日は一層でしか探索していないし、一層の奥にある階段を下り二層に行ったのは今日のこと。


 配信を始める前に、準備運動がてら魔物を倒してみた結果、俺もゴブ子も『なんだか張り合いがないな』となってしまったので、そのまま二層をテクテク歩いてさらに階段を下り、三層へチャレンジすることにしたのだ。


 レベルは二のままだが、そのことは秘匿しておく。情報漏洩は災いの元だ。スキルは戦闘中に見せてしまうことになるが、レベルはわざわざ公開する必要もないし。


 三層に来るまでにかかった時間は一時間ちょっとってところ。慣れたらもっと早くなりそうだ。


「今日も張り切っていくぞゴブ子、怪我には気を付けような――って、殺し合いをしてる探索者が言うことでもない気がするけど」


「ぐぎゃ」


「とにかく、勝てないと思ったらすぐに撤退だからな? 安全第一で慎重に倒して行こう」


 と、この配信を見ている人やアーカイブを確認する人を意識して言ったものの、二層でレベル上げをすることなく進んでいる時点で、慎重とは言えないよな。

 まぁいい。いざとなったら俺が肉壁となる。


「三層の敵は、Dフロッグですね。皆さんご存知でしょうが、大型犬サイズのカエルの魔物です」


 チラリとスマホで視聴者数を確認。ゼロだった。ゴブ子はこんなに可愛いのになぜ見ないのか。世界の気持ちがわからない。


 さてこのDフロッグ。ゴブ子と同じような色合いの魔物なのだが、攻撃手段は舌を伸ばしてくるのみ。

しかし、その舌の攻撃の種類がいくつかあり、単純な打撃、粘着して行動を阻害、尖らせて刺すという三種の技を繰り出してくる。たぶん、一般人ならわりとすぐ死ぬ。


 俺の場合、盾を奪われないように気を付けておくべきだろう。きちんと他のダンジョン配信者さんの動画をゴブ子と見て予習しているので、あまり怖くはない。

 テクテクとゴブ子と三層を歩くこと数分、第一カエルを発見。


「じゃあゴブ子、予定通り行こう」


「げぎゃ」


 ゴブ子が頷いたのを確認して、俺を先頭に距離をじりじりと詰めていく。

 敵がこちらに気付くか気付かないかのラインを知っておきたいので、敵がこちらを認識するまでは近づき続ける予定だ。


 そして、敵が反応した瞬間――、


「ガァアアアアアアアアアアッ」


 あ、叫んだの俺です。魔物じゃないです。


 ~~~~~

 スキル名:威嚇

 SPを自身のレベル×5SP使用。(最大50SP)

 敵を大声で相手を怯ませることができる。

 能力差や状況で成功確率は変化する。

 ~~~~~


 現在俺のレベルは2。つまりSPは10使用している。

 俺の咆哮を受けたDフロッグは、こちらに顔を向けた状態で硬直した。しかし、その硬直は一秒も持たずに解除されてしまう。


 なるほど、本当に一瞬だけど、使いどころ次第では有用なスキルだな。うるさいけど。

 あと単純に、ストレス発散にはなりそうだ。


「ゴブ子! ウインドソード!」


 そして、これまた配信前に相談していたこと。硬直が切れたことを確認した瞬間に俺が叫び、俺は盾を構えたまま突進。


 敵の視線を俺に仕向けた状態で、背後からゴブ子が俺を飛び越し、頭上から攻撃。


 ~~~~~

 スキル名:ウインドソード

 SPを自身のレベル×発動秒数×5SP使用。(最大50SP×発動秒数)

 装備している武器に風魔法を付与する。

攻撃範囲を1・5倍。攻撃力を1・1倍にする。

 ~~~~~


 ゴブ子のスキルであるウインドソードは、発動時間によってSPを消費するタイプらしい。レベル2のゴブ子の場合、一秒あたり10消費している。


 で、そんなスキルを発動した状態で、頭上からDフロッグを襲撃したゴブ子。空中から綺麗な一太刀を浴びせたところに、突進してきた俺が追撃の攻撃。


 それでDフロッグは魔石を残して消滅した。これで五百円なり。

 こいつをニ十体倒せば一万円――毎日通えば一か月で30万円。すでに節約すれば暮らしていけそうな収入だな。


「よーしよしよしよしよしよし! 完璧だったなゴブ子! ジャンプもめちゃくちゃ綺麗だったぞ!」


「げぎゃっげぎゃっげぎゃっ」


「ゴブ子はすごいなぁ」


 魔物を倒したら即座に褒める。別に褒めて伸ばすとかは考えてなかったけど、単純にすごいと思ったから褒めただけだ。


 頭を撫で終えると、ゴブ子はその場でぴょんぴょん楽しそうに跳ねまわったのち、思い出したように魔石を拾い、俺に渡してくる。偉い子やで~。


 ゴブ子の雄姿をリアルタイムで見ることができたラッキーさんはいるかなぁとスマホを確認してみると、視聴者がいた! 昨日もいたCHERRYさん! もう常連さんといっても過言ではないだろう。



CHERRY:こんにちは~、お邪魔します!

CHERRY:今日もお二人は仲良しですね! でも、急に三層に挑戦して大丈夫でしょうか? 危なくなったら逃げましょう

CHERRY:Dフロッグ! いますね!

CHERRY:そうです、慎重に、慎重に、忍び足のゴブ子ちゃん可愛い~

CHERRY:昨日は気付きませんでしたけど、ゴブ子ちゃん竜の絵が描いた靴を履いてるんですね! 可愛い!

CHERRY:ツカサさんが使ったスキル、威嚇でしょうか?

CHERRY:ゴブ子ちゃんはウインドソード! 探索二日目でスキルが二つとは良い調子ですね!

CHERRY:鮮やかでした~! すごいです! そしてゴブ子ちゃん可愛い! ツカサさんは良いパパって感じですね!


 おいおいCHERRYさん最高かよ……。俺のことを『パパ』なんて言ってくれるし、ゴブ子のことはべた褒めだし。


 視聴者数は残念ながら一――じゃない、四人もいるじゃないか!

 昨日のクソ共はブロックしているから、新規さんが三人もいる!


「え、えっと、CHERRYさんいらっしゃいませ。始めての方もいらっしゃいませ。ゴブ子のことをたくさん褒めてくれてありがとうございます。ゴブ子、ドローンの向こうの人がな、ゴブ子のこと可愛いって言ってくれてるぞ。それにすごいって」


 そんな風にゴブ子に声を掛けると、ゴブ子は「ぐぎゃっ」と言ってドローンに向かって頭を下げる。そして剣を掲げてキリッ。可愛いなぁ。


CHERRY:か、可愛いぃいいいいい!


 ふむ。さすがは最古参にして常連。良い反応をしてくれる。こちらからスーパーチャットでCHERRYさんにお金を投げたいぐらいだ。


 その後も、CHERRYさんに応援を貰いながら、スパスパとDフロッグを討伐。

 数匹倒したところでレベルが上がってしまったので、急激な身体能力向上を疑われないよう、配信を終えることにした。


 スキルは覚えなかったけれど、SPは昨日と同様、200上昇していた。これで500。


 2レベル上がって400の上昇をしているわけだが――これって一般的な人と比べると、8レベル分の上昇をしているってことだよな?


 そりゃ普通に進んでいたら手ごたえが無くなるわけだ。



~~????Side~~


「この人に決めました! 私はこの人を担当したいです! 声掛けたいです! ゴブ子ちゃんの可愛さは全人類が知るべきです!」


 社長室にて。昨日よりもさらに熱量の増した声で宣言すると、社長は苦笑しながら「まだ相手がどうするかもわかってないだろう」と言った。


「それはそうですけど……ゴブ子ちゃんの可愛さだけじゃなくて、ツカサさんもゴブ子ちゃんも、かなり探索者として優秀ですよ? 社長がそこを求めていないのは知っていますけど、早急に対応しなければ他のダンジョン配信をやってる事務所が目を付ける可能性が高いです!」


「あぁ、今日は私もチェックしていた。おそらく誠と華凛もな」


 あぁ……ゴブ子の成長記録チャンネルが順調に広まっていると思っていたけど、全員ウチの事務所みたいだ。でも、社長はともかく、なんで誠さんや華凛さんも見ているんだろう? ゴブリンブーム?


「戦闘時の動きは聞いていた通り、ツカサくんもゴブ子ちゃんもかなり洗練されている。相当訓練したんだろうな。それにさっそくスキルを得たのも大きい。そして――いや、うん。レベル上げも頑張っているようだ」


 社長の言葉に少しの違和感を覚えたけど、それよりもゴブ子ちゃんたちのことを前向きに検討してくれているという事実のほうが、今の私には重要だった。


「ですよね! たぶん昨日か今日の配信前にレベル4ぐらいまで上げたんじゃないでしょうか? だから、今は5レベル……? 結構無理してるかと思ったんですけど、二人とも疲れた気配は全くなかったんですよね」


「そこはマネージャーとして見ていてやればいいだろう。しかし、二人が平気そうなら止める必要はないぞ」


「はい、わかりました!」


「なにはともあれ、本人たちにやる気があるか次第だな」


「そ、そうでしたね……どう魅力を伝えたらいいかなぁ……」






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