第29話 違和感
山城に通じる道は、一面に木の葉が舞っている。日は既に落ちようとしていた。ひんやりとした山道を馬車で登った先の城が、シェルバン・カンタクジノ氏の館である。招待を受けていたユキはバルク、クイナ、タリウトの3人と共に館の中に入った。
「よくいらっしゃいました、シェルバン様がお待ちかねで御座います」
執事が慇懃な仕草で4人を出迎え、「お食事のご用意が整っております」とユキを案内する。だが、バルク達3人が後に続こうとするのを止められた。
「旦那様は、ユキ様おひとりとの食事をお望みで御座います」
「分かったわ」
ユキは3人に目で合図をすると、ひとりで部屋に入って行った。バルク達は別室で待たされる事になる。
「気分悪いぞ、なんか嫌な感じだぜ」
「たしかに前もそうだったが、シェルバンって奴は何となく気に食わねえな」
「お前もそう思うか?」
「ああ」
3人の一致した意見だった。
「エヴァさんの紹介でさえなけりゃあんな奴とは……」
やがて3人の待つ部屋にも、食事とワインが供されたが、
「おい、用心しろよ」
「酒も飲むんじゃない」
「分かった」
シェルバン氏と向かい合い食事をしているユキは、何故か違和感を感じていた。以前にエヴァ夫人と共に会ったシェルバン氏とは、どことなく違う雰囲気を感じるのだ。あの首筋に感じた冷たいものも無い。
食事も終わり、打ち解けた話をしようとしたらしいシェルバン氏が、
「ユキ殿、実は……」
「ご主人様」
現れた執事が、何やらシェルバン・カンタクジノ氏にささやいた。
「ユキ様、お仲間がお待ちで御座います」
「…………?」
執事に促されて、バルク達の待つ部屋に戻って来た。
「ユキさん何か変わった事でもありましたか?」
ユキの表情から察したのか、タリウトが聞いて来た。
「特には何も無かったわ。ただ……」
「皆様のお部屋は以前来て頂いた時と同じで御座います」
執事が再びユキ達を部屋に誘導した。
深夜になり、
「クイナ、起きてるか?」
バルクが部屋の前で軽くノックをすると、クイナがドアを開けた。
「帰って来たユキさんの表情が変だった。あの紳士野郎の正体を見届けてやる」
「…………」
「行くぞ」
「はい」
クイナも眠る事など出来なかったのだ。
「タリウトさんはどうします?」
「寝かせておこう」
「おれなら起きてるぞ」
振り向くとタリウトも剣を携えそこに居た。




