これは見つけてもよかったのでしょうか。
不貞寝した翌日でも体はいつも通りに目覚めてしまった。
「……うう……」
微睡むこともなくスッキリと目覚めてしまう健康的な体が今だけはとても恨めしかった。
とりあえず与えられた義務はこなさなければならないのでメイドたちに身だしなみを整えてもらって執務机に向かう。
今日は与えられた仕事と、夫人のレッスンと……
「あ」
そう言えば本を返却していなかった。
また遭遇してしまったらどうしよう。視線を彷徨わせる。
「……どうかなさいましたか?」
ただならない様子に思えたのかメイドが声をかけてきた。
「図書室へ本を返却しに行きたかったのだけど……」
「かしこまりました。」
あ、行ってくれるみたいだ。
……まぁ、それが普通だよね。ノームではメイドの代わりに様々な分野の学者がずっと私に付き従っていたからか、どうもメイドに頼み事をするという習慣がない。
正直私が自分自身で朝の支度をした方が断然早かったため、研究をしたかった身としてはない方が良かったのだ。国王夫妻……両親には許可をもらっていたし。
私って王女としては不適格な育ち方をしたのだと改めて思う。それを嫁ぐことが決まってから、知識だけ詰め込んだ。だから筆記試験で王妃教育に触れそうなものも問題なく解答できたけれど、実技の方は一切備わってないと言える。魔法、体術、商人的な交渉は出来るが、貴族の社交は壊滅的。王妃として1番求められると言っても過言ではないことが出来ていない。
今更だけどよく受け入れてくれたものだ。
手元の書類を眺める。……事務処理能力が高いからかな。あと、社交が苦手であることの延長で、感情は読みにくいかもしれないが、上手い嘘のつけないことも分かっているからかな。
不安が胸の中に雨雲のように広がる。
……しごとすらできなかったら、わたしはみかぎられてしまうかもしれない。
無心になって手を動かすことにした。
「……あれ、」
数字がおかしい。違和感に気づいて、無心タイムが途切れる。報告するようのしておこうと領地の情報などに目を通す。
「……!」
そこにあった領地の領主はアンヴィグ侯爵だった。
……この国の貴族に同じ名前の者はいない。つまりこの方はあの図書室の令嬢の父ということだろう。
これは、報告してもいいの?だって、報告したらまず間違いなく陛下とあの令嬢は親しくすることが難しくなる。陛下が国を腐敗させられるわけが無いし、絶対そうだ。
そう、報告してしまえばあの二人は引き裂かれる。
この嫉妬も解決する。……けれど、謎の後ろめたさ、罪悪感が私にのしかかってきた。
報告、しないといけないのに、また、どうすればいいのかわからなくなってしまった。
正しい判断が出来なくなっていた。
読んでくださりありがとうございます。




