ヒロインになりましたが厨二病の克服はできていないのでMyダーリンと幸せになります
7歳の時に気付いた、私は中学一年生の時に病死して愛読書の世界に転生して主人公のユニになった……と。
ちなみに愛読書は少女小説で王子様とドレスと馬車とコルセットのナンチャッテ貴族社会が舞台だ。
私の家は病弱な母親の薬代を捻出しなくてはいけないので貧乏だが、虐待されることもなく両親から愛情を注がれ普通に生活している。
物語にはドアマットヒロインも多いのだからこの設定はありがたい。
その後の私は10歳の時にどうでもいい小説の出来事を実体験したが「転生したから思わぬ外伝を体験しちゃった」なんていう幸運には恵まれなかったので推しだったMyダーリンと接触することなく平凡な毎日を過ごした。
私の人生が激変するのは15歳、お使いの途中で馬車事故に居合わせた私は負傷者を助けるために神様から与えられた神聖力で神聖魔法なるものを使い、重症患者を完治させて聖女として神殿に行くことになる。
その後はよくある話だ、王太子様に意地悪な王太子様の婚約者に政敵の悪役、最後に信頼していた護衛騎士に裏切られ攫われて刺される、なーんて展開を乗り越えて愛する王太子様と結ばれ結婚式で終了する。
ってことで15歳になった私はこの世界に乗っかり苦もなく手に入れられるMyダーリンの愛を今日、得ようと思う。
誤解しないで欲しいが、相手はいつまでも少年のような笑顔を持ち、ヒロインを一途に愛し、正義感の塊のような爽やか王太子様ではない。
私は物語の最後まで対人関係の悩みや陰謀が押し寄せてくるのを二人で乗り越えられないと手に入れられずに苦労に苦労を重ねなきゃならない壮大な愛じゃなくて、序盤に簡単に手に入るお手軽なのに激重なMyダーリンの愛を手に入れるのだ。
第一、壮大な愛は定期的に繰り返し読んだので素晴らしい展開と愛の言葉を一言一句、覚えているのでもういい。
私は運命と母親に導かれ、これから大通りで起こる何台もの馬車が事故に巻き込まれる大惨事に立ち会うため頼まれた買い物に来た。
この世界はお貴族様の馬車が優先なのは当たり前で、王制だから貴族は絶大な権力者であり江戸時代の斬り捨て御免(貴族バージョン)がまかり通っている。
そのため平民が道を横断する場合、貴族の馬車を足止めしないよう何が何でも避けなければならない。
物語の流れは馬車事故が起きる設定だった。
私だって冷静に考えることもあるので「起こらない方がいいな」と当然、思った。
だが私は平民でしかない、日々の生活に追われ何もできないまま日々は過ぎた。
だから私は転生して未来を知っているのに何もしなかったお詫びも兼ねて人助けをガッツリしようと現場にやって来たのだ。
「……凄いな、交通安全運動してる……うん、大丈夫そう」
私は「よかった、よかった」と胸を撫で下ろしながらも瀕死予定だった三歳年上の少年を確認した。
遊牧民だが部族闘争に敗れて一人だけ生き残った少年は、美しい筈の銀色の髪は薄汚れて灰色と茶色の斑になっているし、体は痩せすぎて枯れ枝のようだし、遊牧民の部族長の息子らしい刺繍が素晴らしい筈の服もボロボロ。
キャンペーンをしている人達に「その人を確実に保護してあげて欲しい」と念じながら見守っていると、無事に道を渡り切った元被害者予定の少年と目線がバッチリ合った。
赤面する元被害者予定の少年、どうやら大惨事が起きて私が少年の命の恩人にならなくても元被害者予定の少年が私に一目惚れする設定は覆っていなかったようだ。
激重愛を手に入れた証拠に、それからというもの私の周辺にストーカーが出現するようになった。
あからさまなのと、「まだ15ですけど、どうする気なの?」と聞きたくなる輩が三名……どうやら何かが起きているらしい。
そして事件が起こらなくても私の神聖力は開花するらしい、病弱だった母は健康を取り戻した。だが母は健康になったからといってウッカリさんなのは変わらないため買い忘れが多い、故に私は買い物のお手伝いを続行している。
私の聖女認定事件は起こらなかったが、それから私がお手伝いの買い物に出る度に事件に遭遇する機会が増えた。
暴れ馬・暴れ牛・暴れ羊?!に倒れる木材に崩壊する塀、火事・強盗・無差別殺人(被害者が出る前にあからさまじゃない方が捕まえて連行していったので未遂)・地面陥没!
私も私だが、あからさまな方は原作の強制力かもしれないが瀕死の被害者の設定され過ぎなのではなかろうか。
あからさまじゃない方にいつも助けられて無事でいるが……瀕死の重傷でも完璧に助けられるけど心配だから私のストーキングは止めて、私の家の近くで私の帰りをジッと待っていた方がいいのではないだろうか。
見兼ねた私は、今回も助かって繰り返し感謝の言葉を発しているあからさまな方を抱えている、地面陥没という天変地異に動揺して顔色を失くしたあからさまじゃない方のマント男に神聖魔法を使い気配を消してから近寄った。
靴もピカピカで明らかに高い身分がありそうな「じゃない方」は私に怯んでいるが、異世界チートも加わった私には神聖魔法で隠密行動もチョチョイのチョイだ。
「その方、貴方様か神殿に保護していただいた方がいいのではないでしょうか。厄病神な私も両親に頼んで神殿にお祓いしに行きます……ハハ」
前世も含め、この時ほど「もっと早く気付け自分」と思ったことはない。
乾いた笑いを残して立ち去るつもりでいたが、じゃない方の主人の周辺に前世日本人の記憶持ちな気配を感じ取った私は「私も転生者ですよ」をアピールすべく伝言を残すことにした。
「あのー、貴方様のお仕えする御方がどこのどなたか知りませんが、王太子様の婚約者様に伝言をお願いできませんか?「私の目的は殿下ではありません、その証拠に淡い初恋の思い出アイテムはどこにいったのか分からない状態です。私は崇高な精神を全く持ち合わせていないのでシンデレラストーリーに興味ないです。加えて尊き御方には使命が付き纏いますのでヒーローには近付きません、どころか御免です。私は我が儘でいつまでも少年気質を持って成長する男なんて恋愛対象外のため初恋ではありません!」とお伝え下さい」
伝言相手なじゃない方も、あからさまな方も、取り囲んでいる皆様も全員がキツイ方言を聞いた都民の顔をしているが、いくら見られても説明する気はないので私に集まっている視線をスルーして、じゃない方に保護されているあからさまな方に言葉をかける。
「何もなくてよかったですね」
あからさまな方に満面の笑顔を見せて誘惑しておく。
私のターゲットはあからさまな方だ、愛するよりも愛されたい私は簡単に手に入る愛でいい。
転生して健康を得て以来、地域の小さな神殿に併設された寺子屋みたいな学校や病弱な母(今は健康)のお手伝い、聖女後はこのボアル国のために冷水沐浴や往復三時間の山に行っての聖水汲みや一日に28回のお祈り(一回は8分で正式は一時間半・せめて16回にして欲しい……説明しよう、日本の少女小説世界なので星は24時間・365日でカレンダーも全く同じなのだ)に忙しく、現在はニート希望なので目眩く愛を受ける監禁も歓迎だ。
あからさまな方(Myダーリン)は私の笑顔に失神した、私に対する執着と拗らせも順調なようだ。
私は安息日に両親に連れられて家の近所にある神殿に行った。
ちなみに、この世界の神殿というのは学校(貴族は家庭教師だから主に平民が通っている)や病院や礼拝のための聖堂が一箇所にまとまった場所で、規模は様々なのだが私がいつも通う地域の神殿は特に規模が小さい。
予想はしていたが聖堂に入るなり清らかなプリズムの光が私を包んだ。
貴族席の方を見ると案の定、目の大きな物凄い美少女が鎮座していた。
美少女は不安な顔をしているから好きな相手はMyダーリンではないと思われる。
(破格の美少女なのに意地悪な「王太子様の婚約者・ルーレンディア」ちゃんは転生者と見た!)
仲良くやっていけそうだと判明したのでMyダーリンを確認すると、処女であるのを求められる「聖女」となった私をお嫁さんにできないと判明した衝撃を受けているのか膝から崩れ落ちていた。
今日から私は聖女修業があるし、Myダーリンは聖騎士に成長するまでに時間がかかるから私も真面目に修行することにしよう。




