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ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
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第9話「選択、崩壊」

空間のひび割れが、ゆっくりと収束していく。


残っていた“選択肢”が、一枚ずつ消えていく。


・続行する

・保留する

・再定義する


最後に残った「再定義する」が、薄く揺れた。


少女が小さく息を吐く。


「……やっぱり、そういう選び方なんだね」


声はさっきより静かだった。


敵意ではない。


どこか確認するような響き。


ビッグサイロの腕部が、わずかに下がる。


構えが解けていく。


戦闘態勢ではなくなる。


「終わったのか……?」


勇希の声は、まだ疑いのままだ。


少女は答えない。


代わりに、視線だけを向ける。


その視線の先で、空間がゆっくりと“ほどけていく”。


火の痕跡も。


歪みも。


選択肢の残滓も。


全部、薄れていく。


「あなたはまだ、“壊してない”」


少女がそう言った。


それは責める言葉じゃない。


事実の報告だった。


次の瞬間。


少女の輪郭が、少しずつ崩れ始める。


(消える……?)


勇希は一歩前に出かけて、止まる。


止めるべきじゃないと、本能が告げていた。


少女は最後に一度だけ、笑った。


「また、選ぶときに」


その言葉だけ残して。


空間から“抜けるように”消える。


空間は元に戻っていた。


何も起きていなかったかのように。


ただ一つだけ違う。


“選択肢が出る世界”になったこと。


勇希はゆっくりと息を吐く。


「……終わったのか?」


ビッグサイロは応答しない。


だが内部のどこかが、まだ微かに熱を持っている。


それは戦闘の余韻ではない。


もっと嫌な感覚だった。


(まだ続くやつだ、これ)


監視室の照明は、一定の明るさを保っている。


いつも通りのはずだった。


モニターは正常。


ログも正常。


通信も——正常のはずだった。


だが。


「……消えてるな」


チーフの声は低かった。


手元の端末には、先ほどまで存在していたはずのデータがない。


戦闘記録。


音響ログ。


観客反応。


すべてが“途中から欠落”している。


まるで最初から、何もなかったように。


「またか……」


椅子に深く座り直す。


指先で画面を切り替える。


別系統の監視ログ。


しかしそこにも同じ現象。


「記録されていないイベントが発生している」


チーフは一度だけ目を細める。


「機竜でもない」


「恋愛バグでもない」


「分類不能だ」


画面の片隅に、微弱な波形だけが残っている。


それは戦闘でも、音楽でもない。


“選択の痕跡”。


チーフはそれを見て、少しだけ沈黙する。


「……選択が、現実に干渉している?」


言葉にした瞬間、自分でも馬鹿げていると思う。


だがログは嘘をつかない。


そして今回は——


ログすら存在していない。


「これは“研究対象外”じゃないな」


小さく息を吐く。


「そもそも……研究の外側だ」


画面が一瞬だけ乱れる。


そしてすぐに戻る。


だが、その一瞬だけ。


確かに“何か”がこちらを見た気がした。


チーフはゆっくりと背もたれに体重を預ける。


「……次はどこだ」

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