第36話「観測、以後」
三日後。
東京湾岸。
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ComicMall会場は、封鎖されていた。
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白い規制線。
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警察車両。
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報道ヘリ。
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だが。
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空だけは、何事もなかったみたいに晴れている。
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政府会見。
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「大規模通信障害による集団認知錯誤——」
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「最新AR演出システムとの複合的影響が——」
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誰も、最後まで聞いていなかった。
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もう。
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世界中が、“見てしまった”。
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SNS。
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動画サイト。
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切り抜き。
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解析動画。
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無数の視点。
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無数の“違う映像”。
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ロボット。
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騎士。
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怪獣。
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光の巨人。
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全部違う。
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だが。
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“何かがいた”。
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その事実だけは、完全に一致していた。
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海外ニュース。
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『TOKYO GIANT INCIDENT』
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『THE DAY REALITY CHANGED』
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『COGNITIVE ENTITY THEORY』
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世界規模で、新しい言葉が生まれ始めていた。
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ILS。
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認識同期。
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観測現象。
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都市伝説ではなく。
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現実として。
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■都内某所
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鳥羽宏は、ノートPC画面を見ていた。
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再生数。
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八億。
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まだ増え続けている。
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世界中から、メッセージが届いていた。
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取材依頼。
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脅迫。
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政府抗議。
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全部無視して、鳥羽は画面を閉じる。
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窓の外。
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夕方の東京。
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小さく呟く。
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「……まだ終わってないな」
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■地下監視室
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薄暗い部屋。
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モニターの大半は落ちている。
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富野は、無言でログを見ていた。
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空白だらけだった。
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戦闘記録。
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波形。
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同期ログ。
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重要部分だけが、綺麗に欠落している。
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富野が低く言う。
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「また消えてる」
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チーフは冷めたコーヒーを飲む。
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「毎回だ」
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静かな声。
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富野はモニターを見る。
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世界地図。
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各国で、小さな光点が増えていた。
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観測反応。
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チーフが小さく呟く。
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「……始まったな」
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その時。
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監視室モニターの片隅。
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ほんの一瞬。
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ノイズが走る。
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赤い文字。
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■NEXT OBSERVATION READY
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次の瞬間には、消えていた。
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チーフは何も言わない。
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ただ。
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静かに画面を見続けていた。
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続く。




