タイトル未定2026/07/14 22:48
「あなた、犯人ですか?」
聞き覚えのある声がして、しまった、と体が一瞬固まる。
ルーティンをこなしていたら、そのまま笑麻ちゃんをつれて散歩に来てしまった。
近くで殺人事件があったから今日は散歩しない方がいいと文也が言っていたのに。
今日もかわいい笑麻ちゃんは、すうすうと寝息を立てて眠っている。
あーかわいい。
なんでかわいいんだろう。
天使かな?
なんて、現実逃避をしていたら、またあの警察官、シムラさん?って人が話しかけてきた。
「あなた、昨日もここを通りましたよね?
誰か不審な人は見てませんか?」
あ、私は容疑者から外れたのね。
ホッとしながら先週頃のことを思い出そうと空を見た。
「んー、、、特に見てないような、、、
そもそも犯人が昼間から活動するとは思わないんですが」
あ、これは文也が書いたメモにもあったなぁ。
(これからは文也メモと名付けよう)
「確か、時間と場所、、、」
「あなた、何か知ってます?」
小声でつぶやいたはずなのに、耳ざとく聞いていたシムラさんはまた難しい顔をしてこちらの顔を覗き込んできた。
「あ、いえ。
家で夫に事件があったことを話したらそんな事をメモしていて。」
半歩離れて無意識に笑麻ちゃんを守る姿勢になり、シムラさんにそう答える。
警察官にこんなことしなくてもいいかもしれないが、体が勝手に動いたのだ。
「そうですか、、、
しかし、実際に密室殺人事件で、犯人も捕まってませんから、帰り道には気をつけてくださいね。」
さらっと爆弾発言したでしょ。今。
「え!?密室殺人事件なの!?」
口の中に入った角煮を私に見せながら、文也は目を輝かせて大声で言った。
あーあー、ご飯食べてる時話しちゃいけないのよ。
ごっくんしてから喋りなさい。
「あ、ごめんごめん。
角煮とっても美味しいよ。」
そうでしょうとも。
角煮は作るのに時間がかかるんですからね。
そんな事を思いながら話を続ける。
「それは本当みたい。
後から警官がやってきて、そのシムラさんて刑事さんめっちゃ怒られてたから。」
守秘義務があるだろうに、あんなにポンポン喋っちゃう人が刑事さんなんて、周りの人は大変だろうな。
「今日も気持ちいい朝だね〜笑麻ちゃん」
いつもの散歩道、いつもの風景に今日は何かが引っ掛かった。
いつものおばさまトリオがマスクをつけた背の高い綺麗な人を取り囲んで賑やかに話している。
少し遠くだからか、あまり会話を聞き取れないのが残念だ。
少し近づいて聞き耳を立ててみる。
「あなた、この前………観たわよ!」
「あのド……よかったわ〜!」
「写真は……してもいいかしら!」
うーん、よくわからない。
後で聞いてみよう。
それにしても、おばさまパワーはすごい。
綺麗な人が引いてる顔してもお構いなしでグイグイ話しかけている。
引いているし、なんか具合が悪そうで儚げな美人だなぁ〜と物陰から見ていると、おばさまトリオの1人、佐藤さんが私に気づいたようだった。
バッチリ目が合って美人と別れてこっちにくるようだ。
「えぇー!!あなた、あの諏訪部 誠を知らないの!?」
佐藤さんが驚いて大声を上げた。
ちょ、絵麻ちゃん起きちゃいますって。
ごめんごめん、といいながらおばさまトリオが教えてくれたのは、今売れっ子の俳優、諏訪部 誠という人だった。
なんでもアイドルでもないのに綺麗な外見で、歌って踊れて演技も上手いらしい。
プライベートでもファンに優しく、非の打ち所のない聖人のような人で、3年ほど前にデビューして、すぐにドラマに大抜擢されて今もテレビに出続けているそうだ。
「それでね、デビューしたのは17歳の時で、今20歳なんだって!
私たちよりうんと年下なのに、立派だわ〜!」
と、佐藤さんが締めくくった。
「でね、デビューした時バラエティにでてて、芸能界入りしたのは従兄妹のためなんだって言ってたの!
きっと芸能界に憧れた従兄妹だったのね。
あんな綺麗な人が身内にいたら私だって推薦するわ〜!」
さっきの出来事を思い出しながら目を輝かせているのは田中さん。
鈴木さんは握手してもらった手を見つめながら、もう手を洗わないわ…と1人呟いていた。
「起きて…起きてください…」




