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第45話「魔力に満ちた泉を調査する(2)」

「確か……お父さまは言っていたの。王が開拓(かいたく)した土地の作物は、王のものになるって」


 ぱしゃり、と、ティーナがお湯をすくう音がした。


「同じように、王が見つけ出した土地の魔力は、王と結びつくそうなの。土地を(ひら)いた良き王に、魔力という恵みがもたらされるんだって。だからきっと……この泉の魔力は、マスターと結びついてるの。だって、ほら」


 さわさわ、さわ。


「お湯を身体にかけると、マスターを近くに感じるの」

「「「そうなのですー!!」」」


 なるほど。

 王が開拓した土地の作物は、王のもの。

 それは土地の恵みの権利が王に(ぞく)するから。


 同じく『土地の恵み』である魔力の泉は、それを見つけ出した王と結びつけられる。

 だからこの温泉のお湯は、俺と繋がっている。

 それで……温泉に入っているティーナは、俺の存在を近くに感じる、ってことらしい。


 だけど、それにどんな意味があるんだろう?


 泉のお湯は魔力ポーションとして使える。

 温泉は、精霊たちの保養施設(ほようしせつ)にもなるだろう。


 だけど、それじゃ足りない。

 俺が欲しいのは、魔力の泉で採れるという素材なんだから。


「実験してみよう。悪いけど、ティーナは温泉から出てくれないか?」

「はーい。マスター!」

 

 ざばり、と、ティーナが立ち上がる音がした。

 精霊たちが「お身体を乾かすですー」と言って、魔法を使い始める。

 俺はスーツの上を脱いで、枝にかけた。


 しばらくして、樹木の後ろから白い腕が伸びて、スーツを回収。

「こっちを見ていいの」と言われて振り返ると、スーツの上と、下着だけを身に着けたティーナがいた。


「温泉、気持ちよかったの」

「うん。それはよかった」

「マスターを、近くに感じることができたの」

「……そうだね」

「でも、この姿でいると、マスターをもっと近くに感じるの」

「…………そうなんだ」

「…………うん。そうなの」


 気まずい。

 精霊たちは「お似合いですー」と手を(たた)いてるけど。


 それはさておき。

 まずは『魔力の泉』で実験をしてみよう。


 俺は温泉に腕を突っ込んだ。


 必要なのは、素材だ。

 メルティが『魔力の泉』の近くには貴重な素材があるといったとき──その素材を『欲しい』と思った。

 マジックアイテムの強化に使えると思ったんだ。

 だから──


「精霊王にして魔王のコーヤ=アヤガキが、泉に命じる」


 この泉が本当に俺と繋がっているなら……それは、俺の一部になったようなものだ。

 もしかしたら、俺の意思に反応するかもしれない。


「お前に新たな素材を生み出す能力があるなら、俺にそれを分けてくれ。灰狼(はいろう)に住む者には、王家に対抗する力が必要なんだ。この土地が独立を保ち、みんなが平和に暮らすために」


 呼びかける。

 地の底……深い深くところに向かって。



 そのまましばらく待っていると──反応があった。



 ぽわん、と、温泉が泡立ちはじめる。

 徐々にそれが、強くなる。


 ぽわんぽわん、ぽわん。

 ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ……って。


 やがて……お湯の中から、泡のかたまりのようなものが浮かんでくる。

 もとの世界の温泉に()く、湯の花に似てる。


 ただ、こっちのそれは半透明だ。

 透き通っていて、柔らかい。

 スライムのようにも見える。けれど、生きているわけじゃない。

 大きさは、手のひらに乗るくらい。


 泉はそれを生み出して、また、もとの状態に戻った。


「これは……?」

「魔力の……結晶体なの」


 俺の手の中にある結晶を見て、ティーナは目を見開いた。


「地下深くに眠るという、濃密(のうみつ)な魔力が固まって、結晶化したものなの。しかもマスターの魔力が交ざっているの。たぶんこれは……マジックアイテムの素材になるの」

「マジックアイテムの素材に?」

「あのね。お父さまの……精霊王の杖にも、同じようなものが使われているの」

「精霊王の杖にも?」

「お父さまが言ってたの。あの杖には、純度の高い魔力結晶が使われているって。その魔力はお父さまと繋がっていて、精霊王の継承権(けいしょうけん)を持つ者を選ぶんだって。そして──」


 ティーナは緊張した表情で、


「たぶん、魔力結晶は初代王アルカインのマジックアイテムにも使われてると思うの。アルカインが土地を開拓(かいたく)して、土地から魔力を引き出して……それを素材に、あまたのマジックアイテムを作ったんじゃないかって、お父さまは言っていたの」


 マジックアイテムの素材となる、魔力結晶。

 それが『魔力の泉』で採れる、貴重な素材の正体か。



「びっくりなのです!」

「温泉が精霊王コーヤさまに反応して、素材を生み出したです!!」

「魔力結晶からは、精霊王の杖と似た気配を感じるです……。ジーグレットさまも、こうやって杖の材料を見つけ出したのですね。すごいのです……」



 メルティが、泉を探すように(すす)めるわけだ。

 彼女の言葉通り、魔力の泉には貴重な素材を生み出す力があった。

 あとは、これをどう使うか。

 いや……それよりも、もっとたくさん魔力結晶を生み出す方法を考えた方がいいな。


「アリシアとメルティを呼んで来よう。ふたりも魔力結晶について、なにか知ってるかもしれない」

「わかったの。じゃあ、精霊たち!」

「「「はーいっ!!」」」

「飛んでいくのは服を着てから! マスター以外に肌を見せたらだめなの!!」

「「「しょうちなのですー!!」」」


 精霊たちは山のふもとへと飛んでいった。


 さてと。

 アリシアたちが来る前に、もう少し、魔力の泉を調べてみよう。



 次回、第46話は、明日か明後日くらいに更新する予定です。



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