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付き合っていないと言いつつイチャつくカップルが面白い  作者: masterpiece (村右衛門&モ虐)
<中学2年生--2学期>

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第六十七話「束の間、然し茶番」


「……これは、由々しき事態や」


「ですね。――早々に手を打たないと、厄介なことになるでしょう」


「手遅れになってからでは手遅れや」


「そんな、頭痛になったら頭痛になったみたいな……」


 体育祭を終え、束の間の静けさを享受する関西倉北中学校。その某所で陰謀を張り巡らせる密会が開かれていることを、生徒会本部名目上のトップである大輔は――知っていた。

 では、彼の右腕になったり左足になったりもしくは障害にもなると噂の議長、里奈はというと、彼女もまた、知っていた。

 ならば、最近になって頭角を現したのか馬脚を現したのか分からない公式お手伝い係祐介はどうだろうかと……彼もまた、知っていた。


 ――茶番である。彼らこそ、密会の主要メンバーであり、何なら彼ら以外にメンバーはいないのだから。


「由々しき事態になりました……」


「繰り返すとおもんないぞ、副会長」


「繰り返すと白けるで、お兄さん」


「急に辛辣……?!」


 茶番は続くが、何にせよ確かなことは『由々しき事態』が起こっているという事実だ。

 彼らがこうして集まり、美術室の片隅で密会を開いているのは他でもない。体育祭が終わって暇になったからなどではなく、『由々しき事態』に対処するためなのだ。


「本来ならこれは、我々で済ませることの難しいスーパーヴェリーエクストラハーデストミッション……しかし! 我々だけでやり遂げなければならない!」


「あ、まだ茶番が続くんですね?」


「何にせよ、時間に余裕がない。話を進めようか、同志諸君」


「話を進めたいなら茶番をやめたほうがいいのでは?」


「今回諸君らに集まってもらった理由は周知のとおりだ……」


 ひとまず、茶番が終わらないだろうことを悟り、大輔は諦めの溜息をつく。

 こんな様子で適当な会話を展開している彼らだが、少なくとも『由々しき事態』というのは本当にあるもので、それを理由に集まったことも事実だ。


「本当に、由々しき事態だ……」


「引き伸ばさないでさっさと本題に入りましょう! 任務対象『健美』に関する情報収集プロセスが途絶えつつあることに対する懸念の解決、でしょう?!」


「茶番引きずってるのか、副会長の言葉選びが独特なんか、どっちやろ」


 ボソッと里奈が疑問を差し込むが、それに答えてくれる人間はいなかった。

 本題が提示され、彼らが纏う空気が変わる。


「我々『傍観者』が生徒会本部に固まりすぎてるのが問題なんよ。高橋が公式お手伝い係にならなきゃ健美の情報もある程度手に入ったし、リレーの実況は上手くいかなかったのに! あん時はありがとな!!」


「それはそう、そしてどういたしまして!!」


 実際のところ、里奈の言うとおりだ。何故か生徒会本部の公式お手伝い係というポストに固執する祐介だが、彼が遊撃隊として動いていれば、という『たられば』は惜しい。

 とはいえ、そのことは祐介もある程度理解していたことだろう。それでも公式お手伝い係になりたがったのはそれだけの理由がある証拠だ。


「とはいえ、体育祭は終わりました。これからは……それこそ合唱コンクールまでは時間に余裕もあります」


「そう呑気に構えていられるかな……? 健美カップルは私たちの知らない間に数学のポスターコンテストに参加している!!」


「な、っなんですって?!! ――だから何なんですか……?」


「制作チームは二人、製作には本校の図書準備室が使われるッ!!」


「何ですって……!!? あの『本校生徒に聞いた! 位置が分からない教室ランキング☆』堂々の第一位、図書準備室で二人っきり?!!」


「よし、このノリによく耐えた、副会長」


「頑張ったな、お兄さん……」


 今までになく勢いと熱量のあるノリに乗り切り、議長の無茶振りにすんでのところで応じ続けた大輔。

 荒い息を吐いて疲労困憊の彼、他の二人がその健闘を労った。


「そんなこんなで、私たちの知らん間にあいつらはどんどん先に行ってんねん。見過ごしたイベントが何個あったか分からん……!!」


「確かに……これからは時間の余裕があるからこれまで通り、なんて甘かったんですね」


「これまで通りじゃあ、見逃した数々を埋め合わせるには足りない。つまり、体育祭以前よりも出力を上げないとな……」


 ようやく、面々の中で危機感が共有される。

 これは確かに『由々しき事態』なのだと、二番煎じですらない単語を再確認したのだ。

 

「さて……ここで一つ、提案がある」


「何ですか、議長。重々しい言葉、凄まじい提案なのでしょう」


「合唱コンクールの前に、一つイベントがあることを忘れているだろう……生徒会本部は関わらない、職業体験!!」


「そりゃまあ、あるけど……何が提案なんよ」


「――職業体験で向かう場所を、コントロールする」


「なっ、そんなの……流石にご法度やろ!」


「――職業体験前にアンケートが行われる。その回答を全員で揃え、あとは運に任せる……」


「あぁ、全然ご法度じゃなかった。ただの運任せや」


「すべては、健美カップルを見守るために……」


「体育祭が終わって緊張の糸が切れたんですね、お可哀想に……」


 ――と、いうことで。

 体育祭は終わった。次の舞台は、職業体験だ。

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