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影魔法ってなぁに?

「そういえば兄貴の、あの鳥を使った扉の魔法に磨きがかかってるんだよなぁ」


 砦の食堂にて。

 カイルが真っ赤な肉炒めを食べながらぽつりとつぶやいた。

 

「あれか……無駄に扉の意匠が凝ってきてるな」

「縁取りとかドアノブが無駄にオシャレなんだよな」

「確かに、あの鳥が扉に変身して、消えるまでの時間が短くなっている気がする」


「わたしそれ見たことないんですけど、それって転移魔法なんでしょうか?」

「さっぱり分からん。王立図書館とか行けば文献があるのかもしれないが」

「あれ文献とかなしに兄貴独自で開発してるんだよな。話によると使えば使うほどあの鳥がレベル上がってるっぽいとかなんとか」

「えー、すごいけど大丈夫なの?」

「大丈夫かは分からんが腕がすごいことは確かだな。……ジャミル君は剣士よりも魔術師の才能の方があるのかもな」

「えー、でも魔術の資質はなかったはずじゃ」

 

「魔術の資質と魔力はまた別の話で、魔法が使えなくても魔法の道具を使った時の威力とか、魔術への耐性とかが魔力に関係しているんだ。魔力が高ければ行動を制限してくる影の魔術が効きにくいらしい」

「影の魔術って、沈黙(サイレス)とかですよね?」

「そう。あと影縛(バインド)とか、幻影(イリュージョン)とか」

魅惑(チャーム)っていうのもあるよなぁ。あれは精神作用だから黒魔術になるんだっけか。まあ耐性あると強いだろうな」

「へええ……」


 ジョアンナ先生の授業ではそこまで習わないなぁ。やっぱ実戦経験があると違うなぁ。


「魔術の資質はなかったけど、あの鳥が兄貴の魔術師の才覚を引き出したって感じなのかなぁ。危ないことしなきゃいいけど」

「ほんとに……」

 

「それにしても……俺なんて資質も魔力もないから耐性がザルなんだよな。魔物が催眠(スリープ)してきたら簡単に寝ちゃう」

「あはは……」

「耐性のある魔石とかアクセサリー買って着けておけよ、寝られたら迷惑だ。誰が洞窟から爆睡野郎を引きずって連れ帰ってきてると思ってる」

「それは悪いけどひどいな~。自分には効かないからってさぁ」

「効かない? それって紋章があるからですか?」

「たぶんな。数少ない便利ポイントだ」

「へええ~……」

 

 

 ◇

 

 

「あっ、そういえばわたしの学校の先生が自分の影をうにょーんって伸ばしてペチンって人を叩いたんですけど、あれってどういう魔法ですかね?」

「「……」」


 二人は顔を見合わせて無言になる。

 

「なんだろう。お前知ってる?」

「さあ……影の魔法は種類が多いからな。生活に根付いてる系も多いし、そっちは俺はあまり」

「うーん、影で、打撃……影パンチとか」


 カイルが唸りながら自分の考えを発表してくれる。無駄にかっこいい顔で。

 

「あ、ううん、知らないなら別に――」

「芸がない。もう少しひねれ」

「ええっ」

「偉そうだなー、上官か? そう言うならお前も考えろよ」

「…………」


 カイルの言葉を聞いて、グレンさんもアゴに手をやって何やら思案に暮れる。

 

「あ、いえ。知らないなら先生に聞きますから――」

「やっぱりこう……(シャドウ)って付けるとかっこよくなるんじゃないか?」


 ナイスアイディアといった風にグレンさんがカレーをすくっているスプーンをカイルに向ける。


「あの、かっこよくしてくれなくていいですー」

「ああー、それは言えてるな。じゃあ……影平手(シャドウ・ペチン)は!?」

「ははははっ、バカだ。はははっ」


 パキンとかっこよく指を鳴らしてわたしを指差すカイル、そしてそれに大いに吹き出すグレンさん。

 

「………………」

(……ダメ。こんな話を振ったわたしがバカだった……)

 

 ――しばらく28歳と26歳の成人男子二人による(シャドウ)大喜利が繰り広げられた。

 

 以前カイルが言っていたように、彼らは本当につまらないことを言い合っている。

 わたしがグレンさんと付き合いだしてから、彼らはこのやりとりをわたしの前で隠さなくなっていた。

 10年来の付き合いのグレンさんとカイル。悪ノリが始まったらもう止められない。

 

 ちなみに後日ジョアンナ先生に確認したら、正解は影使役シャドウ・サーヴァントでした。

 教えてあげたら

「えー!? めっちゃ かっこいい――!!」

「見ろ、やっぱり(シャドウ)だ」

 って感動したりドヤ顔したりしてました。

 何が、『見ろ、やっぱり』なんだろうか。

 

 クライブさん――もとい、カイルが以前遊びに来てた時もこんな話してたんだろう。


 これじゃ、クラスの男子とさほど変わらないよ……。

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