表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

210/324

第210話 魔物のことは我に任せよ

 闘技場内は大混乱に陥っていた。


「何をやってる!? 早く進めよ!」

「おい、押すな! 前がつっかえてるんだ!」

「全然進まねぇじゃねぇか!」


 出入り口に人が殺到し過ぎたせいで、まったく人が流れなくなってしまい、外に出ることすらできなくなってしまっているのだ。

 その間にも、リングに出現した渦から続々と魔物が吐き出されていた。


『み、皆さん、慌てないでくださいっ! 順番に! 順番にお願いします!』


 実況が必死に訴えているが、観客たちは聞く耳を持たない。


「ガルアアアアアアアアアアッ!!」

「きゃああああっ!?」


 すでに壁を乗り越え、観客席へと侵入している魔物もいた。

 逃げる場所を失った観客の一人が、魔物の餌食になりかけた、そのとき。


「~~~~~~ッ!?」


 大型の魔物が吹き飛んでいった。


「もう大丈夫よぉん?」


 魔物を殴り飛ばしたのはゴリティーアだった。

 難しい顔をして彼はリングの方を見遣る。


「それにしても、あれは何なの? このままじゃ、人がいっぱい死んじゃうじゃない」

「ゴリティーア!」

「あら、アンジェちゃん」

「あの渦を破壊しない限り、永遠に魔物が出続けるわ!」

「あの渦のことを知ってるの?」

「少しはね! 普通の物理攻撃は効かないから、魔法が必要なのよ! ただ、あたしの魔法じゃ威力不足だし……」


 ともかく二人は渦の方に向かうことに。

 幸いこの大会の出場者たちが、観客を魔物から護ろうと戦い始めている。


「魔物のことは我に任せよ。どのみち我の攻撃は、あの渦には効かぬからな」

「了解よ、あんたに任せたわ!」


 この場はリルに託して、アンジェとゴリティーアは、渦のすぐ近くにいるファナとオリオンのもとへ。

 二人とも魔物に取り囲まれてしまっていたが、無理やり抉じ開けて彼女たちのところに辿り着いた。


「ファナ!」

「ん、アンジェ。師匠は?」


 ファナは疲労と怪我で酷い有様だった。

 オリオンも似たようなものだ。


「街中に同じのが幾つも現れたのよ! そっちを片づけに行ってるから、ここはあたしたちだけでなんとかしないといけないのよ! それよりまずはこれを飲みなさい!」


 言いながらポーションをファナに渡す。

 試合中だったせいで、回復アイテムの類を一つも持っていなかったのである。


「あんたも飲みなさい!」

「かたじけない……っ!」

「回復するまで、アタシが時間を稼ぐわぁっ!」


 ファナとオリオンが急いでポーションを飲み干すと、見る見るうちに傷が塞がっていった。


「な、なんだ、このポーションはっ? こんなにすぐに傷が治るなんて……っ! これほど高性能なポーション、見たことないよ……っ?」


 実はレウス特製のポーションなのである。


「この渦には魔法しか効かないわ! それも中途半端なものじゃ無意味! 一気に消し飛ばすほどの強力な魔法が必要よ! ファナ、あんたできる!?」

「ん、多分、無理」

「まぁそうよね。あんたもあたしも、あくまで魔法はサポートとして使ってるだけだし……」


 そうしている間にも魔物の数が増え続けていた。

 今はまだ辛うじてリルや大会出場者たちが抑え込んでいるが、このままでは観客の多くに被害が出るだろう。


「……ぼくがやろう」


 覚悟を決めた声で告げたのは、オリオンだった。


「ぼくが全力で雷魔法を放てば、この渦を消し飛ばせるかもしれない。……いや、必ず消し飛ばしてみせる。勇者として、そしてこの国の皇子として、ぼくには国民を守る義務がある!」


 無論、オリオンとて、決して魔法が専門というわけではない。

 アンジェやファナと同様、この渦を破壊できるだけの魔法を発動できるかどうかは、かなり微妙なところだろう。


 しかし他に手はない。


「……あんたに任せたわ!」

「ん、頼んだ」

「さすが勇者よぉん! アタシたちは準備の間、是が非でもオリオンちゃんを死守してみせるわぁ!」



少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
ゴリティーアはこんな事態で何故本気モードの漢言葉ではないのだろうか モンスター自体は雑魚だからかな? 渦から出た魔物って素材は取れるのだろうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ