第209話 情報を共有しているのか
「嘘でしょ!? あんなところにも!?」
「あれだけじゃないよ。ほら、あそことあそことあそこにも」
「なっ……全部で五か所も!?」
眼下に現れたものに加えて、街中に四か所。
全部で五つも〝魔の渦旋〟が出現し、そこから魔物が溢れ出してきているのである。
さすがの俺も、これらを一人で消していくのは骨が折れるし、時間がかかる。
その間にどんどん魔物が増え、被害が拡大していくだろう。
「というわけで、ここのは任せたよ」
そう言い残して、俺はメルテラと共に飛行船から飛び出す。
「彼女たちだけで大丈夫でしょうか?」
「多分ね。一応、この大会のために集まった猛者たちもいるわけだし。それより一か所は任せてもいい?」
「無論でございます」
「じゃあ、あそこのは頼んだ」
一つはメルテラに任せて、俺はリントヴルムに跨って全力飛行する。
一気に街の北にあった一つ目の渦へと辿り着いた。
「幸いみんな逃げて、近くに人はいないな。リントヴルム、全力で魔法をぶっ放すぞ」
『了解です』
この〝魔の渦旋〟を破壊しようとするなら、中途半端な魔法は無意味だ。
少しでも渦が残ってしまったら、すぐに拡散してしまった魔力を集め直し、復活してしまうからである。
なので一撃で完全に消滅させなくてはならない。
「獄炎竜巻」
〝魔の渦旋〟を呑み込むように、凄まじい勢いで渦巻く炎の柱が出現する。
周囲の建物が溶けていくほどの高熱で、街路樹に至っては一瞬で燃え尽きてしまうほど。
やがて炎が収まったとき、そこには渦の欠片も残っていなかった。
「よし、一つ目。次はあっちだな。だがその前に……追跡型広域駆除魔法」
すでに街中に解き放たれてしまった魔物を、片づけておかなくてはならない。
俺が放った無数の光の矢が、魔物だけを選んで貫いていく。
「グギャアアアッ!?」
「オオオオオオッ!?」
「ブモアアアアッ!?」
建物と建物の間にいるような魔物も逃がさない。
そしてリントヴルムに乗って、街の西にある渦へと向かう。
するとまるで俺が脅威であることを理解しているかのように、そこから吐き出された飛行系の魔物が一斉にこちらへと殺到してきた。
「おいおい、こっちの渦にはまだ何もしてないはずだぞ? まさか、渦同士で情報を共有しているのか……?」
もしそんなことが可能だとしたら、前世の俺も知らなかった現象である。
「渦同士が魔力で繋がっているとしたら、あり得ないことではないか……だが……」
『マスター、今は考え事をしている場合ではないかと』
「む、そうだったな」
我先にと迫りくる魔物の大群へ、俺は真っ直ぐ突っ込んでいった。
魔物が俺の張った結界にぶつかって吹き飛んでいく。
「お前らの相手をしている暇はないんだよ」
あの渦を破壊する上で重要なのが、湧き出してくる魔物を無視して本体を叩くということである。
そうしなければ永遠と魔物と戦わされ続ける羽目になるからな。
「獄炎竜巻」
先ほどと同じ魔法をぶっ放し、二つ目の渦を消滅させる。
「追跡型広域駆除魔法」
それから魔物を片づけていく。
「ふぅ、さすがに疲れるな。赤子の身体には重労働過ぎるだろ」
『マスター、東の方の渦の気配が消えました』
「メルテラが上手くやってくれたんだな。さすがだ」
ちらりと東の方に視線を向けてみると、氷の尖塔のようなものが見えた。
彼女の魔法で渦ごと氷漬けにしてしまったのだろう。
「闘技場の方は……まだ残っているようだな。まぁ最悪、メルテラがどうにかしてくれるか」
そうして俺は街の南にある渦へと急いだ。
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