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~~現在・エメラルド女王・フローライトの部屋~~
「キャー助けて!」
始めに聞こえたのが悲鳴。声はフローライトだ。
その部屋で俺は見てはいけないものを見てしまった。
白黒の部屋にゾンビの集団、それは異様だった。
ゾンビの数は十匹、それを取り囲んでいるのがヨッシーマ王子のゾンビ。
ゾンビの群れが取り囲んでいるのがフローライト。
青いドレスを着たフローライトは、腰を抜かしてゾンビの方を見上げていた。
顔がおののいたフローライトは、まさにホラー映画さながらだ。
「来ないで!」
「フローライト、お前は永遠に離れられない」
「なんでそんなことを?」
「お前は俺をゾンビにした……ならばお前をゾンビにすればいいだけの事」
「なにを……お兄ちゃんはなんで?」
「お前は永遠に俺の妹だ……ゾンビになろう」
ゾンビであるヨッシーマ王子が、フローライトに近づく。
フローライトを周りのゾンビが追い込む。
そんなゾンビであるヨッシーマ部長の首元には真っ黒な宝石が埋め込まれていた。
「ダメ……私は女王になる」
「ゾンビに……なれ。我が妹よ。お前を喰らってゾンビにしてやろう」
さらに近づき、フローライトは完全に怯えていた。
身震いが止まらないフローライトに、俺の目の前に二つの選択肢。
もちろん言うまでも無く答えは一つ。
「やめろ!ヨッシーマ王子!」
当然、俺は『助ける』の選択肢を選んだ。
『無視する』なんかできない。助けなければ男じゃない、俺は柄にもない選択をしていた。
「大臣か、ひっこめ!」
「あんたはフローライトの幸せを第一に考えていた。それなのに……」
「それだから……だ」
ヨッシーマ王子の顔はさらに泥のように崩れる。
だけど飛び出た目の奥には、何か鋭い眼光のようなものが見えた。
「だからフローライトをゾンビにする」
「それはさせ……」
俺がかっこつけようとするが、俺の周りにゾンビがあふれて邪魔をする。
なんだ、ゾンビがどんどん増殖していくぞ。
「邪魔はするな、これは俺と妹の問題だ」
「やめろ!フローライトが……」
だけどそのあとゾンビの手が伸びてきて、いきなり画面が真っ暗になった。
ゾンビの喘ぎ声とフローライトの叫び声が数秒間、ゲームから聞こえてきた。
そんな俺の目の前が、少し明るくなった。
「ドワ太?」
視界に入ってきたのはドワ太。青い帽子と白いひげが特徴の小人。
俺は起き上ったのか、視界が少しだけ上がった。
「立った様じゃな」
「立ったって?」
「『死亡フラッグ』」ドワ太が言うなり、右端のクリスタルゲージを見る。
そこにはほぼ5%にも満たないクリスタルゲージと、下には死亡フラッグが見えていた。




