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ドワ太はヘルパーだ。
ゲームの進行の手助けをするのが目的。
そんな彼がこちらからヘルプを開かないと何もしないのが普通だ。
だからこそ、アプローチをしてくることは珍しい。
フローライトをランニングの教育に行かせる中で、俺はドワ太と話をしていた。
ちょこんと座るドワ太、白黒のテーブルで座る椅子にドワ太の足がついていない。
「で、何の用だ?」
「フローライトは異変がないか」
「ああ、やはり小心者なところがあるが……だいぶ好感度が上がったようだな」
「ふむ、死亡フラッグは?」
「まだない」
クリスタルゲージの下には何も出ていない。
逆に言うとクリスタルゲージは、それなりに減っていた。
「死亡フラッグが出ないことは……いい事なんだろ。
クリアすれば問題なく……むしろ佳乃が死ぬことが問題なんだ」
「生死をかけることは必要だ、女王になるには」
「どういう意味だ?まさかこのゲームの女王候補は死が義務づけられているのか?」
「当然じゃ」
俺に質問にドワ太が堂々と言い放つ。
「当然って?」
「リアルで子供を育てたことはなかろう」
「当り前だ。俺はまだ高校生だ。しかも男だから、子供すら産むことはない」
「今の人間は、いや親は子供に責任をもたなすぎるのじゃ」
「もたないって……まあそうだけど」
「本来教育とは、しっかりと子供を育てることにある。
だけど教育に対して未熟な親が多すぎるのじゃ。
全ての原因を親だけが責任を負うのもわしはどうかと思うのだが。
それでも親になった以上は、子供に愛を持って接するべきじゃと思う」
ドワ太が真面目に教育を語った。
そんなドワ太の教育論を、俺は何となく聞いていた。
「それが死ぬことが必要なのと何の意味が?」
「女王とはあまりも孤独だ。故に強い精神力が必要だ」
「ならば精神力のパラメーターを上げれば……」
「バカモノ、精神力のパラメーターごときで決して計れはせん。それに女王の魂は特別なのだ。
まあそれは後々知ることだろう、本番はこれからなのだからな」
「本番?」
「いずれわかろう。ほれ、フローライトが戻って来たぞ。彼女は教育を待っている」
そう言ったドワ太の先には、疲れた表情のフローライトが立っていた。
体操着を着たフローライトが汗だくで戻ってきていた。
「終わり……ました……」
激しく息を切らして、俺をじっと見上げていた。
そんな時、画面上に『!』マークが点滅していた。




