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それから二日が経過した。
岩本祭まであと三日、授業が終われば即部室に行く生活。
一応DSPは持っていたが、必死にパソコンに向かってボイカロイトを作っていた。
部室では俺以外にも工藤先輩ともう一人がパソコンに向かっていた。
曲の方は大体できた、CGキャラ『KUNI』のモーションを少しいじらないと声があわない。
パソコンに向かって俺は微調整が続いていた。
俺がいつものようにパソコンに向かう中、外に出ていた部長が帰ってきた。
そのまま俺の背後に腕を組んで立っていた。
強い殺意のようなものを感じて、俺はさすがに振り返った。
「菅原」
「なんですか、部長?」
「二度と佳乃に近づくな」
「へ?」
俺が振り返ると、部長の顔はさらに険しくなっていた。
体が大きいけど、痩せているから純花ほど迫力はないが。
「佳乃がこの前倒れたそうじゃないか」
「ああ、急に体調が悪くなったから」
「全部お前のせいだ」
「な、なんでですか?」
いきなり俺のせいにされて、俺は当然反発した。
だけど部長は俺の肩を掴んで肩をゆすってきた。目を血走りながら。
「お前は佳乃のことを何一つ知らない。
お前が佳乃に対し、今後半径3メートル以内に近づくことを禁じる!」
「それを部長に言われる筋合いはない!」
「やはり佳乃は学校に通わせるべきではなかったんだ」
「それは……絶対違います!おかしいですよ」
「お前は口答えをするのか」
部長は肩を掴んでは、俺のことを後ろに突き飛ばした。
だけど俺はその手を振り払って、部長を見返していた。
「部長は妹のことで急におかしくなりますよ」
「うるさい……兄が妹を心配して何がいけない?
佳乃は唯一、俺だけしか頼れる人がいないんだ」
「それは違う!」
「じゃあお前は佳乃の悩みが分かるのか?
佳乃は……お前のクラスに苦しめられているのを知っているのか?」
「なんですかそれ?そんなハズは……」
「お前は何も知らない、お前は何もわからない。
そんな得体も知れないお前は、絶対佳乃に近づくな!」
最後にそう言いきって部長は再び部室の外に出て行った。
俺はパソコンでじっとKUNIを見ながら、部長の言葉を考えていた。




