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ゲームをやめて俺はベッドの上で横になっていた。
夕方になって、窓から夕日が差し込んでくる。
自宅で過ごすのは、俺は安心できた。学校だと俺は数字オタクの変り者。
おまけに純花というリア充押しつけ彼女がいた。でも家にいればそう言われることもない。
そんな俺に来客が来ていた。
純花だろうと思いながら、俺はとりあえずベッドで横になることにした。
だけど俺の部屋には予想外の人物が来ていた。
「あの……」
その声は聞き覚えがあった。少し前に会った甘い声。
出てきたのは少女。上品そうなロングヘアーに、同じ岩本高校の制服を着ていた。
何よりたれ目で穏やかな姫のような少女だ。
「えと……あっ、思い出した。伊勢ヶ崎部長の妹さんか」
「はい、『伊勢ヶ崎 佳乃』と言います。菅原君は体の方大丈夫ですか?」
伊勢ヶ崎さんは、かなり丁寧に俺に頭を下げてきた。
長い髪が、ちょっと知的に見えた伊勢ヶ崎さん。
「うん、大丈夫。明日にでも」
「そうですか~、じゃあ学校でプリントでたから」
そう言いながら、足元に置いた通学かばんを取り出した。
そのまま伊勢ヶ崎さんは俺に対して一通の封筒を手渡した。
「これは?」
しかしそれは、学校のプリントではなかった。
そこに書かれていたのは、『茶会の招待状』だ。
「えっ、それは……」
それと同時に、伊勢ヶ崎さんは急に顔を赤くして俺の方に手を伸ばしてきた。
そのまま俺の持っていた封筒を強引に奪ってきた。
「ご、ごめんなさい」
あっというまに縮こまった伊勢ヶ崎さん。
そんな俺は机のそばに置いてあった指輪に目をやった。
「何かあったの?」
「えと……はい」
小さくなった伊勢ヶ崎さんはとてもかわいらしい。
普段は天然で穏やかな伊勢ヶ崎さんが、こんなに顔が赤くなるのは見たことがない。
そんな彼女が見せた隙、俺は何となく彼女を助けたいと思った。
「菅原君あのね……」
伊勢ヶ崎さんが話そうとした瞬間、俺の部屋のドアが再び開いた。
「ミツノマルいる?」
それは聞きなれた声だ。純花のもの、あっという間に俺の部屋に来ていた。
いつも通りの明るい純花の顔が、物の一秒もかからないうちに目つきが険しくなった。
もじもじする伊勢ヶ崎さんと俺、それからなぜか純花といきなり俺は修羅場に遭遇してしまった。




