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俺は急に思い立ってリビングに来ていた。
気になっていたことがあったから、夜になって俺は自宅に戻っていた。
自宅のリビングで俺はアルバムを手に入れていた。
アズライトの会話が最後どうしても引っかかっていた。
その言葉は、アズライトではなく戸破から聞いたことがあったから。
母親とは……全然会話していない。そんな母親も、夜十二時を回っているので眠っていた。
父は転勤で横浜に行ったから、年末までは戻ってこない。
だけどジュエル☆クイーン♡スクーリングのアズライトは教育中だ。皮肉なものだ。
アルバムを見ながら、俺はずっと考え事をしていた。
戸破が不良になったきっかけを探さなといけない。あまり時間もないようだ。
アルバムに映っていたのは、幼き日々の俺と戸破。
わずか一つしか離れていない俺と戸破。
(あのころはかわいかったな)
ショートカットの戸破は、アズライトと同じ雰囲気だ。
爽やか系の妹は、健康優良なかわいい自慢の妹っただ。
いつも運動会ではトップの成績、明るくて笑顔の写真が多い。
(それがソバージュの今になるんだな)
どんどん年齢は上がっていき七五三、小学校の入学式、遠足と写真が続く。
小学校の終わりごろまでは正常で中学になってから、ある変化があった。
(戸破が不良になったのは、中学あたりだな)
それは二冊目の中学時代のアルバム。
地元の中学で俺は成績が優秀な優等生、戸破は水泳のチャンピオン。
不良との接点なんかどこにもない。
だけど、戸破の顔の笑顔がだんだんと消えているのが見えた。
(中三の時にはすでに写真もない……か)
どうやら中二の夏ごろから、写真を撮らなくなっていた。
そこで俺が見ていた中二の一枚の写真を見ていた。
それはプールで悔しがる戸破だ。
カメラに映っているにもかかわらず、プールで競泳用の水着を着た戸破が唇をかみしめていた。
(やっぱり……あっ)
俺ははっきり思い出していた。
それと同時に、俺は背中に人を感じていた。
「何見ているのよ、クソ兄貴!」
腕を組んで俺をはっきり見下した、戸破だ。
上下鼠色のスエット姿にソバージュ、睨んだ目をした戸破が俺の肩を掴む。
「戸破……思い出した」
「ああ、ウザいんだけど」
にらみを利かせて、脅しているみたいだが迫力にやや欠けた。
その戸破は、頬にはけがをしたのか絆創膏が貼られていた。
俺が中三で戸破が中二の夏、一緒にプールに行った。
何気ない出来事だったけど、それは事件と言えるものだった。
その時に撮られた写真を見て、戸破が目をキッと鋭くにらむ。
「面白いのかよ、クソ兄貴!」
「戸破……あの時は」
「面白いよな、お前は!優越感に浸っていられて」
そのまま俺の前に立ってアルバムを踏みつけた。
俺は踏みあげる足から戸破の顔を見上げた。
「こんなもん、クソみたいな記憶だ」
「クソかもしれない、でもあれは仕方ない。年齢的にも性別的にも」
「あたいは負けるのが嫌なんだよ!一番負けたくない相手に」
それは戸破が何気に俺と話したこの話しだ。
二年ほど前までさかのぼる、戸破にとって忌まわしい記憶があった。




