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結局二日間学校を休むことになった。
頭と足にケガを負ったので、病院にも行った。
幸い打撲程度で済んだのだが、大事をとって二日休むよう促されたから。
そんな俺の暇つぶしはDSP。
榊という不良集団にボコボコにされた俺は、DSPの破壊される様を見ていた。
割れた液晶画面も、飛び出したボタンも、何事もなかったかのように真っ黒なDSPが俺の手元にあった。
とりあえず起動すると、入っていたジュエル☆クイーン♡スクーリングのソフトが表示された。
~~エメラルド城・アズライトの部屋~~
そこは白で統一された家具が置かれた部屋だった。
高級感さえ漂うその部屋に、画面中央に出てきたのはアズライト。
ゲームの中さえも全く問題なく起動していた。
「おかえり、大ちゃん。昨日はなんで入らなかったの?」
といきなり出迎えたのはアズライトだ。
そんなアズライトは、今の俺みたいに頬に傷を負っていた。
「アズライト、無事だったんだな」
「無事って当たり前だよ、ボクはそんなんじゃ死なないよ。かすり傷さ」
ん、なんか会話がかみ合っていないようだな。
それにしてもアズライトはやっぱり男の子って感じだな。
「アズライト、それよりゲーム機が破壊されたんだけど」
「何のこと?ねえ、昨日ボクは戦ってきたんだよ」
「戦った?戦争か?」
「この国は平和なようでそうでない。内なる敵だっているんだ。
だからそれを倒しに行ってきた」
「そうか……大変だな」
「でも大丈夫、内乱を未然に見破って僕たちが襲撃したからね」
えへへっ、と剣を振るって自慢するアズライト。
「でも、ボクは一応兵士として志願しているから。
ほら英国だって、王子が軍隊にはいったりするでしょ。おとなしくしているのはしょうにあわない。
ボクはエメラルド王国のために戦うんだ」
「まあ……そうだね。遠征はどれぐらい?」
「一日かな、辺境っていってもそんなに遠くないし。
ターフェライトの加護もついているし、何よりボクは戦いに慣れているから。
今回が、初めての実戦でもないからね」
アズライトが剣を抜いて無邪気に笑っていた。
やはり一昔前の戸破と同じ表情をして連想された。
水泳で好タイムを出したときの戸破と、アズライトである今が重なった。
生き生きしているアズライトは、なんだかこっちも元気になるな。
「実戦をしてきたのか、早速疲労度を見せてくれ」
「う、うん」ちょっとだけ照れたアズライト。
早速パラメーターを確認、疲労度は5%だ。
強制イベントの類だから、体力の減りは思ったほどない。
当然のごとく、剣技と格闘が上がっていた。もちろん、勉強系の能力が軒並みダウン。
(武闘派一直線だな、これはこれでアズライトらしいか。
アズライトのように能力に偏りがあるキャラは、むしろ短所よりも長所を伸ばすのがいいのかもしれない)
などと思いながら、いつの間にかパラメーターを凝視していた。
すると、全体姿のアズライトが声をかけてきた。
「ねえ、今日も教育してくれる?」
「ああ、分かった。じゃあ早速だけどバイトするか」
「うん分かった。ボク、バイト頑張るよ」素直なアズライトだ。
「さて、何があるのか?」
俺はバイトのアイコンを覗き込んでいた。
だけど、バイトのアイコンをタッチしようとしたとき、画面には真っ白な何かが全てを遮っていた。
「なんだ?」
「覚悟っ!」と声がする。
「ボクは負けないよ」
そのまま剣がガチッと交わる音が聞こえた。
ギギギッて火花散る音の後に、アズライトは真剣な顔で剣を受け止めていた。
俺は次の瞬間、白い何かの正体が分かった。
視界が開けたその先には、小さなドワ太とアズライトがなぜか剣でつばぜり合いをしていた。
「なんだ、ドワ太か」
「むう、大臣か。今は忙しい……後でに」
「はいはい、そういう事は後でな」
タッチペンでドワ太をタッチすると、あっという間に首根っこを掴まれた小さなおっさん。
必死に抵抗しながらドワ太は、両手をじたばたさせていた。
このドワ太はアズライトにいつも切りかかってくるが、どういう意味があるんだよ。
「ドワ太、何しに来た?」
「ああ、大臣よ。わしは重要なことを伝えに来たのだ」
「ん、何の話だ?」
「右端のクリスタルゲージを見たか?」
「えと……なにこれ」
右端のクリスタルゲージがいきなり半分以上減っていた。
昨日始めたばかりで、クリスタルゲージが満タンだったのにもう半分もなくなっていた。
「減っている、どういうことだ?」
「そりゃあDSPの修復に労力を使ったからな」
「労力?DSPの修復?一体、どういうことだ?」
「『Jクイ』は、絶対に壊されることはない。
このゲームカードリッジをセットしたゲーム機は完璧だ、無敵だ。
巨大な象が乗っても壊れては必ず治る」
「無敵って言われても……」
困惑する俺をよそに、ドワ太は話を続けていた。
アズライトもなんだか退屈そうにドワ太の話を聞いていた。
「このゲームは絶対に無くなることがない、ゲームとしての存在をなくすことはできない。
それはエメラルド王国の魔法の力がかかっているからな」
「魔法の力か?なんと抽象的な話だ」
「エメラルド王国は、魔法の国でもある。だから魔法があるのは当然じゃ。
このゲームはエメラルド王国公認だからな、ターフェライトのご加護じゃよ」
「はあ……」
「大臣、信用していないだろう」
「いいや……そうしておくしかないだろうな。俺もほかに説明する方法がない」
「信じぬのなら、次の説明じゃ。
ここで問題じゃよ。一般的にRPGで魔法を使うのに使う力のことを二文字でなんという?」
「クイズか……MP」
「ブー」ドワ太が意地悪そうに言ってきた。
なんか結構むかつくぞ、これ。
「違うのかよ、ひっかけか?」
「パラメーター好きのお主ならそう答えるからな」
「うるさい、正解はなんだ?」
「答えは『魔力』じゃよ。このDSP復元には多くの魔力を使う」
「それがクリスタルゲージか」
「さようじゃ、魔力を得るべくクリスタルゲージを消費したわけじゃよ。
つまりはあれじゃ、何かを得るには……」
「何となく分かった。で、クリスタルゲージが減ったと。でも半分はきついな」
「仕方ないだろう、それだけ大掛かりな魔力を浪費したのじゃ。
そんなことより、拙速にアズライトの問題を解決しないと消滅するぞ」
「分かっている、だけどイベントが……」
俺は妙にあせっていた、そんな俺はあることを思い出した。
「アズライト、イベントマーク出ていない?」
「うん、実はね……ボク」
もじもじするアズライト、なよなよしいアズライトは女の子っぽかった。
イベントマークはどうやら出ていないようだ。
「どうしたんだ?アズライト」
「ボクは、遠征することが決まったんだ」
「遠征?」
一瞬わからなかったが、すぐにアズライトは剣を持った。
「そう、僕は遠征する。リッチバルの遠征軍に参加するんだ」
「えっ?」
いきなりの急展開に俺は首をひねっていた。




