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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
一話:リアルを教育するゲームとセレスタイト
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――『ジュエル☆プリンセス♡スクール』はオンラインに対応していた。

だけど、俺はオンラインでゲームをしたことがないが。

そんなDSPのゲーム内に、確かにメール受信画面。


俺が見たメールの差出人は『ドワ太』。

ドワ太とは、このゲームに出てくるヘルパー小人の事。

小さい体に、白いひげ。青い三角帽子に青い服を着た小人。ドワーフという妖精をモデルにしていた。

それはあくまでゲーム内でのキャラクター。一ゲーム内のイベントだ。

しかし、メールを開いた瞬間にゲーム画面が光った……目がくらんだ。

そのあと俺の足元に一人の小さな男がいた。


「ど、ドワ太?」

立体CGでできた一人の人間がそこにはいた。

青い帽子の小さな老人、白いひげを蓄えた小さい男。

人間としては一メートルにも満たないの小柄で、小太りの老人がそこにいた。

でも動いていたし俺に手を振ってきた。間違いない、ゲーム内の『ドワ太』だ。


「おお、聞こえたようじゃな。少年よ、ようやくつながったな」

「えと……あんたは?」

「見て分からぬか?ドワ太じゃよ。この凛々しい顔を忘れたとは言わせぬぞ。

『ジュエル☆プリンセス♡スクール』のお助けキャラじゃ、ヘルパーじゃ、分からんか?」

「お助けキャラが実写化かよ……なんかおしゃべりだし」

「ふむ、あまり驚かないんだな」

「興味ない、ただのちっさいおっさんだろ」

俺はあっさりと言い放った。

俺の冷めた反応を見て、ドワ太は何かを考える仕草を見せた。

そのあと、小さい体を一生懸命ジャンプさせて俺に指を指してきた。


「実にお前はつまらぬ男だ」

「それより何のために出てきた?メールを送るってことは、そちらに用があるのだろ」

「そうだな……お前はリアルを育ててみないか?」

「はあ?何を言っている?」

俺はドワ太の言っていることが、全く意味が分からなかった。


「リアルの人間をシュミレーションゲームの題材に、お前は教育大臣にならぬか?」

「リアルかよ……リアルの女は苦手だ」

「だが、そのリアルを覗くのは悪くはないと思うぞ。

少年よ、お主は現実社会に対して偏見があるのだろう」

「もちろんだ」

ドワ太のいう事は最もだ。偏見はあるし、なによりリアルにはろくなことがない。

だからリアルの人間がどんな奴かは気になる、なんでいつもあんな無駄な行動をとるのか。

なんで俺がリアルの女を嫌うのかを。


「普通の世の中だと、人間は見えないパラメーターを持っている。

だけどそれが何なのか分からないし、理解もできない。まずは……左手を開け」

指示通り左手を開くと、ドワ太が小さい体をジャンプさせて掌に置いたのは三色の指輪。

赤い宝石、白い宝石、青い宝石と一個ずつ綺麗な宝石が埋め込まれていた。

俺はその指輪を左手広げながらじっと見ていた。


「これを使って、リアルの人間をシュミレーションする。そのゲームが……」

「『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』、これのことか?」

俺は指輪の中にDSPのカードリッジを見つけた。

「そうじゃよ、最新バージョンのゲームだ」


ソフト名には『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』と書かれているが、それ以外は真っ白だ。

タイトル名しか書かれていない、DSPカードリッジをじっと眺めた。


「なんか海賊盤(マジコン)っぽいな。

ドワ太……リアルの人間を育てると言ったが、育成中はリアルの人間はどうなるんだ?」

「指輪をつけた人間の全く同じことがコピーされるのじゃ。

その人間の能力、その人間の容姿、その人間の趣味嗜好、完全にゲームの中にコピーされる。

またゲーム内の起きた行為が、リアルに反映される。イベントじゃな。

無論、お主の大好きなパラメーター上げもできるぞ」


ドワ太に言われて、なんだか心惹かれる自分がいた。

俺は数字が大好きだ、パラメーター上げが趣味だし……なにより生きがいだ。


「それに、人の相対評価を見る意味もある」

「相対評価か」

「ああ、そいつがどれぐらいの才能の持ち主で、どんなことを考えているか。

何が好きで、何が嫌いで、何が苦手で、何が得意か全てわかる。

普段接している身近な人間は、表面的一部かもしれない。

そう考えたらリアルに対する見方がきっと変わるだろう」


ドワ太の言葉に俺は迷っていた。

ゲームの女には思い入れがない、純粋にパラメーター上げの戦略を考えるのが楽しいだけだ。

純花に言っても、もちろん理解はされないでオタクと一刀両断されるが。

もしリアルが育成できるのなら、パラメーターで合理的に人を育てることができるのか。

それはそれで面白いかもしれない。退屈で嫌いなリアルの理由は、俺が欲しかったアクセントだ。


「なあドワ太……」

そんな俺がドワ太に言おうとしたとき、俺の目の前には一人の人影が見えた。


「ただいまっ、ミツノマル!」

俺が顔を上げるとそこには純花がいた。一緒にいた工藤先輩はいない。

その純花は相変わらず笑顔を見せていた。


「おう」

「何しているの?」

「いや……純花。ドワ太が……」

「ドワ太?なにそれ?頭がおかしいんじゃない?」

そんな時、俺の掌に乗っていた三つの指輪を見つけた純花。

純花が俺の持っていた指輪をじっと見ていた。


「その指輪は何?もしかして、あたしへのプレゼント?」

「いや……そうだよ。あそこの露店で買ってきたんだ」と、適当な嘘をついた。

「ホントに?」

「ああ、ホントだ。純花にどれでも一個だけやるよ」

「うわ~、めずらし~。ミツノマルがあたしにプレゼントなんて」

そう言いながらも、純花は赤い宝石の指輪を手にしていた。


「じゃあ、あたしはこれにするわ」

純花は笑顔で俺に応えていた。すぐさま純花が指輪を右手人差し指につけた。

だけど指輪をはめた瞬間、純花は驚いた顔を見せた。


「あれ?はめた指輪が消えたんだけど」

純花が不満そうに言うが、俺はすかさずほかの指輪をポケットにしまった。



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