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すぐに俺はDSPを確認した。
メールが入っていて、再起動してくださいとメッセージが来ていた。
信じたくなかったが、指輪はすぐにゲームに反映されていたのだ。
俺は強張った顔で、ジュエル☆クイーン♡スクーリングを再起動した。
~~オープニング・アズライトの部屋~~
再起動後ゲーム画面には、『新入学』と書かれた文字が見えた。
それを見つけては、俺は愕然として後悔した。
(このゲームに戸破を参加させてしまった)
脳裏によぎったのは前回の純花だ。
何気なくリアルを育成するということで、純花をゲームに巻き込んでしまった。
純花の問題を命からがら解決したけれど、正直達成したというより怖いという思いが強かった。
ゲームではなくリアルに、純花を危険にさらしてしまったのだから。
(これはただのパラメーター上げじゃない)
それでもゲームに参加したら、二度と後には引けない。
指輪をはめた時点で戸破はゲームに参加してしまったのだから。
ゲーム画面には早速見えた目をつぶった戸破。
だけど髪は金髪のロングソバージュではなく、黒のショートカットだ。
(これは……もしかして昔の戸破?)
俺は髪が短い戸破を見て、ゆっくり画面が下に……
「裸……戸破の」
妹の体に欲情するわけではないが、少し懐かしさはあった。
健康的な小麦色に焼けた肌、意外と長くすらりとした手足、なにより筋肉質な体、それから胸。
(ヤバッ!)
俺は思わず恥ずかしくなった。なんで妹の裸体をゲームで見ないといけないんだ。
ゲーム画面前で俺が焦っていると、目をつぶっていた戸破が目を覚ました。
「あれ?ボクはなにを……」
「ボク?」
「ああっ、男の人?あなたがボクの大臣さんか、なんか強そうだね」
「えっ……うん」
俺のこのゲームでの役割は教育大臣という肩書だったな。
クイーンを育てる専属の大臣で、国の文部科学大臣とは全く違う。
当然相撲協会を管理してはいなくて……こんな話はどうでもいい。
それにしてもボクって自分のことをいうのは、やはり数年前の戸破みたいだ。
髪もそうだし、健康そうな戸破を見ては懐かしくも思えた。
「初めまして、ボクはアズライト。なるほど、この子は『菅原 戸破』っていう子なんだ。
大臣の兄ちゃんとは兄妹の契りを交わしたんだね」
「契りじゃない、普通の兄妹の血縁関係でしかない」
「そうか、なんでもいいや。ボクはバカだから」
「バカって、あまり自分を卑下するいい方はするもんじゃないよ」
「そっかごめん」
素直に謝った、戸破の顔をしたアズライト。
申し訳なさそうな顔が、やはり今の戸破ではないみたいだ。
純花の時もそうだが、なぜリアルと違う雰囲気でゲーム内だと出てくるのだろうか。
「いや、分かればいいんだ。それより服を着ようか」
「うん」
やっぱり素直に返事を返してくるアズライト。
アイテムボックスから俺は、アズライトの服を出した。
アイテムボックスの服は茶色のベストに白いシャツと長ズボン。
後はファンタジーらしく『アズライトのショートソード』も中に入っていた。
あったものは全部着せてみよう。
すると、凛々しい女兵士の姿が現れた。
服の上に分厚い革の鎧と、二本のショートソードを腰に携えた女兵士だ。
「似合う?」
「うん、似合う。腰には剣もついているんだね」
「そうだね。ボクはね、これでも剣の腕は自信があるよ。
大ちゃんってもしかして腕利きの剣士なの?」
戸破でもあるアズライトが、あまりにも俺に軽快に喋ってきた。
俺が腕利きの剣士、このアズライトにはそういうキャラに俺が見えるのか。
リアルの俺は、戸破に対して極力抵抗しない空気対応をしているのに。
この場合は最初のインパクトは重要だからな。
ほら選択肢が出てきた、ここで好感度が上がる仕組だろう。
ならば選ぶのはこれかな。
「ああ、俺は元最強の剣士だ。
かつてはエメラルド王国に襲ってきた、山賊の軍団を壊滅させたこともある」
などと適当に話をあわせると、俺のハッタリに目を輝かせてきたアズライト。
顔がドアップになって、尊敬のまなざしで俺を見ていた。
「すごい、すごいよ大ちゃん。じゃあじゃあ、ボクの兄ちゃんとどっちが強いの?」
アズライトの純粋な目で俺は思わず困惑してしまった。
「兄ちゃん?アズライト……じゃなくて戸破の兄は俺だけど」
「ううん、違うの。大ちゃんは大ちゃんだよ」
「なあ、ちょくちょく出てくる『大ちゃん』って?」
「『大』臣の兄『ちゃん』、略して大ちゃん。なんか言いやすくて」
はにかんだアズライトは、気取らないかわいさがあった。
礼儀正しいセレスタイトと違い、こちらは無垢なアズライトだ。
だけど単純に疑問が残った。
アズライトの話し方だと、兄と俺は別の扱いなのか。
兄はそれとも俺で……ゲーム内だとリアリティがあまりないな。
別人と喋っているみたいだが……いやいや戸破の過去も今のアズライトだ。
だとすれば前のセレスタイトも、過去の純花の姿なのかもしれない。
「そっか……それよりアズライトの兄さんの話を詳しく聞かせてくれないか?」
「いいよ」
そう言いながら、アズライトは近くにあった豪華そうな白いソファーに腰かけていた。




