↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
四話:不良な戸破とアズライト
PR
36/137

36

戸破と母親の喧嘩の片づけを、夜まで手伝わされた。

八時を回ったころ、俺はようやく自分の部屋に帰ってきた。

夕食もインスタントだし、二学期早々今日は最悪の一日だ。


それに今の俺は、どこかモヤモヤしていた。

戸破の事や工藤先輩の事でいろいろ整理できないことが起きていた。

結局のところ、自分のことを顧みると何か満ち足りない気分になっていた。

それを満たすために部屋に帰ってゲームをつけた。

今日も俺は『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』をDSPにセットしていた。


~~エメラルド城・セレスタイトの部屋~~


女王候補セレスタイトの部屋は、花柄の家具をそろえていた。

部屋の家具も、バイトしたお金でそろえることができる。

家具をそろえることで、部屋の雰囲気が変わる仕組みだ。

まあ、家具に金を使う余裕はあまりないのだが。

ちなみに本人が勝手に買ってくる場合もある、お金を消費しないので


花が好きなセレスタイトに買ってあげた花柄の家具を、彼女はとても気に入ってくれた。

そして俺はいつも通りゲーム機に挨拶をしていた。


「セレスタイト、ただいま」

DSPの画面にはセレスタイトの姿があった。

相変わらず笑顔で穏やかなセレスタイト。

大きな瞳をたるませて、ピンク色のドレスを着たまま出迎えてくれた。

ミドルヘアーの香水の香り……はゲーム機で表現できないが甘い香りを感じるほどに髪がきれいだ。


「おかえりなさい、光輝さん。今日も会えてうれしいです」

「そうか……セレスタイトも元気で何よりだ」

ゲームに入ってセレスタイトといつも通りたわいもない会話。

こうしてみると純花の顔ってやっぱりかわいいな、とセレスタイトを通して思ってしまう。


だけどセレスタイトの右隣にあるクリスタルゲージは、もうカラだ。

死亡フラッグもいつの間にか消滅していた。彼女をこれ以上教育して成長することができない。

でも俺はセレスタイトに対して何もないのに会いたい、そんな衝動に駆られていた。

だから毎日ゲームには入っていた。


「今日、新しいお花をとって来たんです」

いつもながらにセレスタイトは、笑顔で鉢植えを見せてきた。

鉢植えの中には黄色く小さな花が咲いていた。


「これは?」

女郎花(オミナエシ)、花言葉は『約束を守る』。

光輝さんは、ちゃんと約束を守ってくれました。だからこれを送ります」

「約束?」

「うん、約束です。純花ちゃんを……あたしを助けてくれたから」

セレスタイトの頬が赤くなった。

穏やかで純粋、それでいて気遣いも忘れない。純花とは別人のようだ。


「それは約束じゃない、俺は純花もセレスタイトも守りたかった……ただそれだけ」

だから俺も真剣に彼女に言葉を返した。

そんなセレスタイトは、なにかもじもじしている様子だ。


「ねえ、光輝さん」

「ん?」

「あたしのクリアから半月経ちましたね」

「ああ、半月経ったな。月日が経つのは早いものだな」

「もしかして……次の子も育てるの……よね」

「う~ん、どうするかな」

セレスタイトを育て終えて、リアルの純花にも変化があった。

今まで喧嘩腰だった純花は、少し大人しくなったように思えた。

空気を読むような行動ができた純花は、セレスタイトほどではないが女として見られるようになった。

いや、俺が避けていた純花の本当の顔なのかもしれない。


「まあ、Jプリはこれからもやろうと思う。

今日は、九月一日だし前回のトパーズはちゃんとクリアできなかったから」

「ダメ……」

上目づかいで言ってきたセレスタイト。


「セレスタイト?」

「あたしをちゃんと見て、光輝さんは浮気しちゃだめなの」

「え……うん。なんかごめん」

「嘘は嫌なの」

「分かっているけど……俺はいつも誰かのパラメーター上げがしたい」

それでも俺の満たされない心は、きっとパラメーター上げをしていないからだ。

そう勝手に理論づけて俺は、ゲーム画面の彼女から目を逸らした。


ゲーム画面から離れてみるのが隣の部屋を遮る壁。

隣には、戸破が今頃ふてくされて寝ているだろう。

そんな時、再びDSPから声が聞こえてきた。


「あわわっ、また胸がムズムズします~ぅ」

セレスタイトがうめき声を出してきた。思わず俺はゲーム画面を注視した。

そのまますぐに出てきたのが赤い三角帽子、ドワ太がセレスタイトの胸元から顔を覗かせた。


「久しぶりじゃな、大臣よ」

「ああ、相変わらずだな。リアルだとやはり即死モノだぞ」

「大臣よ、指輪はまだ余っているようだな」

「一応はある」

そう言いながら大事にしまってある指輪を引き出しから取り出した。

青い指輪と白い指輪がそこには大事にしまっていた。


「まだリアルを育成してみないか?」

ドワ太の誘いとも取れる言葉に俺は二の足を踏む。

ドワ太は次の俺の言葉を待っているようで、退屈そうにひげをいじり始めた。

俺は指輪を見ながらも難しい顔になっていた。


それは、前回の純花の件があるからだ。

ゲームとはいえ、純花をもう少しで殺してしまうところだった。

純花を助ける緊迫感のあるイベントだけど、リアルの人間が死なれるのは嫌だ。

リアルの女は嫌いだ、だけどリアルの誰かが面倒なことになるのはもっと嫌だ。

今の俺には、家族内で厄介ごとを抱えているんだ。

ちらりと浮かぶ戸破の顔に、俺は必死にもみ消していた。


「……今はその気はない」

俺の言葉に目の前のセレスタイトの表情が赤い。

どこか、少しうれしそうにも見えた。


「大臣よ……リアルは嫌いなのか?」

「非生産的で非合理的だ、感情的で理屈に合わない。

学校の先輩が言っていた、リアルはきれいじゃない、汚いんだって。

だからリアルではない二次元が存在している。そこはとてもきれいで……」

「ふむ、それは現実逃避をしているだけじゃないのか?

逃げたところでリアルは永遠に追いかけてくる。

大臣の言うところのJプリも、リアルがあって出来上がった世界だろう」

「勝手にしろ、俺はいつもの生活に戻すだけだ」

俺は一言そう言いながら、そばにあったジュエル☆プリンセス♡スクールのカードリッジに手を伸ばした。


だけど、急に俺の背中の方から冷たい風が流れ込んできた。

どうやらリアルで感じるものがあった。

そして俺が振り返った時、俺を見下す目をはっきり見つけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。