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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
四話:不良な戸破とアズライト
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俺の家は普通の四人家族の一軒家。

いや、端から見るとかなり理想的な一家だ。

だけど実際は違う……おそらくその顔は近所にさえ見せていない顔だから。

俺の家の中、中央にあるリビングは今戦争が起きていた。

俺はシステムキッチンの裏に隠れてやり過ごすしかない。


戸破が帰宅して十分も経たないうちに、自宅のリビングはすぐにめちゃくちゃになった。

戸破が帰ってきて、母親と喧嘩を始めたのだから。

きっかけはもちろん母親の説教、きれた戸破は近くにあった置時計を母親に投げつけた。


当然母親も引かない。俺の母親はかなり強気なのだ。

すぐさま食事用のナイフを戸破めがけて投げ返してきた。

戸破をそのまま殺す気じゃないか、絶対に負けられない戦いがリビングで起きてしまった。


取っ組み合いの喧嘩から始まり、物が乱れ飛び家具がめちゃめちゃに散らばる。

こんなものを他人に見せられない、母親と戸破の怒号が飛び交う。

俺は二階で避難……ということもできないので、母親側についていたわけだが。

俺のそばにいるエプロン姿の中年女性の母親が、怒りに任せて戸破を怒鳴りつけた。


「戸破、なんであんたはいつもそうなの!」

台所に隠れた俺の母親は、手にはコップを投げる準備をしていた。

一方リビング中央を陣取っていた戸破は、テーブルを盾にしながらも不満を爆発させていた。


「うっせえババア!そっちこそ黙れ!」

「まあ、母親に対して汚い言葉は許さない!戸破、あなたはいつもだめなのだから」

「黙れよ、あんたが全部悪いんだろ?」

母親と戸破の罵り合いが続くリビング。

当然のようにリビングでは物があちこち飛び交った。


「近所迷惑だから大人しくして」

「光輝は黙って!」

俺が優しく母親に促すが全く聞く耳は持たない。

母親が戸破に対して、大きなまた板をブン投げていた。


こうなることが分かっていたから、帰るまでに戸破を何とかしたかった。

最近の戸破が不良化して、母親と喧嘩をするこの流れ。

警察沙汰は今回初めてだけど、学校で問題を起こしていて、戸破との関係はどんどん悪くなっていた。

そのたびに母親が戸破と喧嘩をする。


しかも母親は、元教師だったのでプライドが許せないのだろう。

そんなとばっちりを受けるのは俺だ。

リアルな女は本当に嫌いだ。


「だいたい、アンタはいつも遊んでばっかり、勉強もしないし。

怠けていたら、光輝みたいになれないわよ」

「なんであたいが、兄貴みたいな草食人間にならないといけないんだ!」

母親の投げる物に、戸破が物を投げ返して応戦。

母親と戸破の喧嘩は全く収まる気配がない。


こうなってしまうと、俺はただ嵐が過ぎるのを待つしかない。

俺の言葉は届かないし、互いの言葉も届いていない。

実に無意味な時間だと俺はいつも思う。


「あんたは、いつからそうなったのよ!ちゃんと学校行きなさい!」

「あたいは学校が大嫌いなんだ、勉強とか教師とかありえねえよ!」

「せっかく学校に行かせているのに、光輝みたいになれ……」

「兄貴になりたくねえって、言っているんだろ!」

戸破は顔を赤くしながら、大きな座椅子を抱え上げて、母親に向けて投げつけてきた。

座椅子は台所のコーナーに激しくぶつかって、床に転がった。

息を切らして、顔を赤くした戸破は最後に「ババア!」と言い残して自分の部屋がある二階に上がっていった。


取り残された俺は、戸破がさっきまでいたリビングの中心を見ていた。

戸破が勢いよく階段に上がり、俺はゆっくりとシステムキッチンの壁の上から立ち上がった。

リビングはすっかりめちゃくちゃだ。平和の面影もない。

ソファーの椅子も、棚の中も、かろうじてテレビは守られていたが。


(面倒な女だ……けど妹なんだ)

俺はそれでも戸破に対して一抹の罪悪感があった。


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