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リアルの女は嫌いだ。
俺は日曜の夕方に呼び出されていた。
夏の暑い日、シャツとズボン姿で俺はゲーム機片手にハンバーガー店のカウンターにいた。
最悪なことに、そのリアル女にクソ暑い夏の日に呼び出された。
俺の名は『菅原 光輝』、進学校岩本高の二年だ。
「今すぐゲームやめてこっち見なさい!」
俺の隣にいた浴衣姿の女が、眉間にしわを寄せて顔を覗かせた。
鋭い目つきな女は、俺の持っていた携帯ゲーム機『DSP』を取り上げようと手を伸ばした。
だけど、その手をかいくぐって俺はゲームを続けた。
ゲーム機略奪に失敗した女は、ムスッとした顔で俺を見ていた。
女の名は『宿坊 純花』。同じ学校のクラスメイト。
水色の朝顔が描かれた浴衣を着た純花は、服に似つかわしいハンバーガーを食べていた。
「純花……お前が呼び出したんだろ。夏休みの貴重な時間を使うな!」
「何を言っているの、今はデートじゃない。
かわいい美少女とデートできるなんてリア充真っただ中、まさに青春よね」
「お前の青春を押しつけるな。それにお前は美少女で……」
「黙んなさい!」
純花はすかさず素早く手を出して、俺の頬を引っ張った。
「す、すひま……せん」
「分かればいいのよ。あなただって、高校生活をバラ色にしたいでしょ」
「めんどくさい、俺はリア充やビッチは嫌いだ。ゲームの中の方がはるかに居心地がいい。
うるさくもないし、何より数字で人間が分かる」
「まぁ!ミツノマルがなんかオタク臭いわ、なんかいやだわ」
純花が臭い物の様に鼻を抑えた、なんと失礼な奴だ。
ちなみに『ミツノマル』とは俺につけたあだ名、純花ぐらいにしか言われたことがないが。
そんな純花からすると、俺とは恋人っていう関係になっていた。
一年の美術の時間で知り合った腐れ縁だ。この純花がいきなり俺を彼氏に指名した。
それが俺にとっては面倒な高校生活の始まりとなった。
純花はリア充よりリアルな変り者だ。学校中で有名な世間知らずだ。
「ねえ、市街地のお祭りってさすがに賑わっているわね」
「ああ、純花のあたりは人がいないもんな」
「ミツノマルはあたしの生まれ故郷を、しれっと馬鹿にするんだ」
「馬鹿にはしていない。自然豊かだし、山奥だし、夜の空は綺麗だし。
ただ携帯の電波がつながらない、そんな場所だ」
「電話線はちゃんと通っているわ。そんなことより、初めてなんだから祭を見にいこっ!」
浴衣姿の純花は、急に太陽の様な明るい笑顔になった。そのまま俺の手を引っ張っていく。
「純花っ、俺まだポテトを食べていないんだけど……」
「食べるのが遅すぎ、ずっとゲームばっかりやっているからよ!ホラ、早く!」
「腕力80台で引っ張るな」
「何を言っているの?またパラメーター?さっさと行く!」
純花は無理矢理、俺を引っ張っては立たせていた。
俺はDSPを最後まで大事そうに持ったまま、急かされてファストフードを出て行った。




