13話 戸惑い
『なぁ、賭けようぜ』
その日から、何度も心の中で問い掛けられる。僕の中に潜む悪魔がそう囁くのだ。誘惑に負けない様に心の中を空っぽにする。
が、何も考えない。
と言うのは無理があるのだ。道を歩いていた時に不意に囁く。
『次、女か男かどちらがすれ違うが賭けようぜ』
え!?
連想してしまった。
男だと。たまたますれ違った人は男だったので、安堵する。
『ちっ』
なぁ、この場合だと、どうなるんだ?
『賭けの対価を決めない場合は、その賭けの内容に左右される。今のは軽いから、くじ引きで何か当たるくらいじゃねーか?』
はぁ、僕は心の中でため息を付いた。
『遅かれ、早かれ、何かで見返りは返ってくる。そう心配するな』
僕はそういう心配をしてないんですけどね!
最近、悪魔との会話が成立してイライラする。無視が一番なのだが、そう簡単な事では無い。今回の発言もかなり重要な事だったし。
対価を決めた場合は、それに対して支払う。
対価を決めない場合は、その難易度に対して報酬が決められる。
『ハイリスク、ハイリターンって奴だな』
いや、そんな賭けしませんから!
校内を歩いていると、伊集院さんに出会う。
巫女姿と違い、制服姿は斬新だ!やはり制服はいい!
「寺師羽根君、最近はどうなの?」
「ん?ああ、これといってないかな」
「そ、じゃ」
「ああ、またな」
伊集院さんは素っ気なく校舎へ戻った。
それを燐火に見られ、僕は問い詰められる。
「あっれ~?あの可愛い女子は誰かな~?」
「伊集院 神無月さんだよ」
「何で、奏介が伊集院さんと知り合ってるのよ!」
「おじいちゃんの知り合いの曾孫なんだよ」
「え?…………そ。ならいい」
「所で、伊集院さんの事、知ってるのか?」
「う、うん。人気者だから、ね。同じ1年の中じゃ、有名だよ。もう10人にコクられてるらしいよ」
「マジか。校内一の美少女かね」
「ねぇ、奏介も伊集院さんの事、気になる?」
「気になるというよりも、頼れと言われた」
「はぁ!?誰に!?あたし怒っちゃうからね!」
「いや、藤堂院さんにだよ。あ、伊集院さんのお婆ちゃんな」
「な、な、何で伊集院さんのお婆ちゃんが出て来るかな!?もしかして許嫁だったりして!?」
「それは無い。伊集院さんに悪いよ」
「そうだよねぇ。奏介が結婚とかあり得ないな」
「煩い。もう授業始まるぞ」
授業を終え、今日もクラブ活動に励む。
生徒会での雑務を行い、校内を見回れば完了だ。
堂々先輩からのご指導で、校内での異性不純行為は無くなった。期末テストも終わり、クラブ活動が盛んになる。グラウンドには、野球部、陸上部、テニス部が練習していた。
「なぁ、燐火は陸上部に入らなくて良かったのか?」
「ん?陸上だけが青春じゃないよ!」
「お前の何処にスイッチがあるか分かんねぇ」
「ここ、だよ?」
上着とシャツを持ち上げ、ヘソを剥き出しにする!
燐火のヘソは最高に綺麗だった。形も深さも。
「あたしの………変かな?」
「いやいや!変じゃない!むしろ綺麗だ!…………て、早くしまえ!他の人に見られたらどうするんだ!?」
「あは♪ダイジョーブだよ。奏介にしか見せないから」
燐火は上目遣いで頬を朱色に染めた。
気まずい空気が流れるのが分かる。その時、ボールがタイミング良く転がって来た。それを慌てて拾い、投げ返す。
「ありがとうございました!」
僕は照れ隠しに言う。
「さぁ、見回りの続き行くぞ」
「………うん」
燐火は小声でそう言った。




