化身ゴーレム
「なぁ、煌牙信じられるか?」
「んなわけねーだろ、こんな景色見たことねーよ」
「おい、あれ見てみろトカゲみたいなのが歩いてるぞ」一馬が指差した所に人間の三倍程度の巨体を有するトカゲのような生物がのしのしと歩いている。
「あっちも見てみろ、フェアリーだろあれ、空飛んでるぞ」
「あれは龍人族と言ってドラゴンの人型です。そしてあの飛んでるのは妖精族です。わたくしも妖精族の一族です。」
「龍人族に妖精族か、他にもいるのか?」
「はい、他にも闘うことが大好きな獣人族と働き者の機械族とがこのリッシュコズモで生活を営んでいます。」
「そういえばこの世界の理とか分からないよな、神と悪魔をぶっ倒す段取りが必要だし教えてくれないか?」
「ええ構いませんよ、でも説明するのはわたくしではなくこの方にお願いします。」フェアリーはそう言うと特大の影で白く光る太陽が消え地面が暗くなる。二人は後ろにいる何かに気づき二人同時にバッと後ろを振り返る。するとガチガチの筋肉と灰色のゴツゴツした皮に覆われた体と黄色い眼をした龍人族が上から二人をギロッと睨む。
「この小さい小人が人間という種族か、こんな小人にリッシュコズモの戦争を止められるのか?」
「はい、リッシュコズモ様はこのお二人が一番可能性があるとおっしゃってました。」
「ふん、本当にその可能性があるか確かめてやる!」龍人族の輩は背中に背負っていた斧を天に掲げながら二人に向いて振り下ろす。
「うわっ!」「くっ」一馬は左に飛び煌牙は右に飛ぶ。しかしどうゆう事なのだろうか、二人は10m程度飛んでいた。本来走り幅跳びでも5m飛べばすごい方なのだが二人は軽く避ける程度に飛んだが龍人族の輩がやや小さくなるぐらい飛んだいた。二人は自分が何故こんなに飛んだいるか理解できずに驚きと感動とで顔が引きつっついた。
「ほう、よく避けたな小人達よ、ならこれはどうだ!」龍人は斧を乱暴に投げ右手を広げながら地面をパンッと叩く。すると地面がグラグラと揺れ余震ほどの振動が体に伝わり次の瞬間地中から巨大な岩石の手が突き出す。徐々に地中が広げられ岩石の全貌が現れた。ズンッ!ズンッ!と岩石で出来た足が地面を踏み、その地踏みで体がよろめいた。
巨大な岩石は龍人のさらに三倍の大きさのゴーレムであり眼が紅く怪しく光る。
「なんだよ、これデカすぎんだろ」一馬は鼻で笑いながら唖然としていた。それは無理もないこのリッシュコズモ=裏世界に来たのはまだ1分程度だしこの世界の勝手も分からないのにこの超巨大なゴーレムが現れたらこうなるだろう。だが煌牙はどうだろう、体の至る所の骨を鳴らしながらニヤニヤしていた。それは余裕の現れなのだろう、だがその余裕は一体どこからきているのか。
「さぁ、小人達よ我が化身を地に伏せさせてみろ!」龍人は腕を組みながら叫ぶ、するとゴーレムが重たい体を前進させ一馬に向かう。
近づいてくる巨大なゴーレムに身動きがとれずにいるとゴーレムの頭あたりから低く鈍い音が聞こえた。次の瞬間ゴーレムは体をフラつかさせながら膝を地につけた。状況が分からずにいた一馬によく聞く親友の声がゴーレムの股下で聞こえた。見ると煌牙が得意げな顔で右拳をにぎにぎしていた。
「一馬!思いっきりこの岩石野郎の顔面ぶん殴ってやれ!」思いっきり岩殴ったら拳壊れるだろ、しかもパンチングマシーンで140kgぐらいしかだしたことないのにこんな堅くて重いゴーレム殴ったぐらいでなんになるんだ?3秒思案して再び煌牙が叫ぶ。
「心配すんな!いいからやってみろ!」心配すんなって、くそっなるようになれ!
一馬は意を決め右膝を地についているゴーレムの紅く怪しく光る眼のちょうど真ん中を予定約140kgで殴る。殴られたゴーレムは龍人がいる20m後ろまでぶっ飛んでそのまま立ち上がる事は無かった。予定を大幅に狂った一馬は右拳を見ながら自分に起きている現象に理解ができずにいた。しかもゴーレムの顔面は膝をついていたといっても5mの高さはあった。ゆうならば月にいる宇宙飛行士のようにブワッと飛んでいた。それもかなりのスピードで本人はそれにも気づいていない、雷の速度域は1/1000秒で音よりも速いそう一馬の速度は音よりも速く音速を超越していた。《雷速》とでも言っておこうか、その現象は煌牙も同様だった。煌牙は龍人の斧を避けた時点で自分達は人間の域ではく人外の輩になっていることに気づき雷速でゴーレムの後頭部を軽く殴っていた。
「ほう、我が化身を容易く倒すか、どうやらその可能性は間違いではいないようだな、よかろう!我が龍人族の村に招待しよう!ついてこい小人達よ!」龍人はピー!と首から下げている笛で何かの合図をだした。すると龍人の頭上からバサバサと鳥が飛ぶ音が聞こえ空を見るとプテラノドンのような怪鳥が物凄い速さで急降下していた。
「小人達飛べ!」龍人は叫ぶと膝を曲げ真上に飛んだ、すると急降下していた怪鳥が地面スレスレで体を持ち上げ高度30cmぐらいで飛行し龍人は怪鳥の背中に乗り移った。怪鳥は次に煌牙に向かいながら飛行し煌牙は龍人のやったとうりに真上に飛び怪鳥の背中に乗り移った。見た感じ普通に真上に飛べば乗れるらしく一馬も龍人や煌牙のように真上に飛び飛行してくる怪鳥の背中に綺麗に乗った。そのまま上空に一気に上昇しリッシュコズモ=裏世界の果てしなく広がる世界に二人は唾を飲み込む。
「すげー、なぁ煌牙・・・」
「あぁ、凄過ぎて軽くパニックだぜ」
白く光る太陽、雲を突き抜ける大木、雲から落ちる滝、富士山を軽く超える山脈に同じ高度で隣を飛ぶ怪鳥の群れ、樹海、大海原、至る所にある村、街に二人は嘘だと自分に言い聞かせながらもその景色にただ見惚れていた。
「どうだ、すごいだろ!小人達よ!これがリッシュコズモだ!」
「そーいやー、あんたの名前聞いてないな!」風を切る音で大声を出さないと会話などろくに出来ない。
「我は、龍人族幹部のアッシュ ボーダンだ!小人達にも同じ問いをしよう!」
「俺は神道寺 一馬だ!こいつは天童 煌牙だ!」
「一馬に煌牙か!憶えたぞ!おっとそろそろ村に着くぞ!しっかりつかまっておけ!振り落とされるぞ!」
怪鳥はジェットコースターよりもさらに激しく急降下を開始した。
スカイダイビングをする時もこんな感じなのだろうか、息などまともにできないほど空気の圧が体中にあたり今にも吹っ飛んでしまいそうになるのを必死に堪えた。
どんどん見えてくる村の地面に急降下していきこのまま行けばぶつかるあたりまで落ち怪鳥は一気に翼を広げ急停止をしてゆっくり地に足を着けた。
意識が飛びそうな中辿り着いた村は村というのは間違いだと思うほどしっかりした街並みで西洋のフランスやイタリアあたりを連想する建物が所狭しと並んで建っている。
「では、小人達よ今から村長の所に参るぞ」
「村長?市長の間違いじゃないのか?」
「市長?なんだそれは?」
「あっ、いやなんでもないよ」
一馬と煌牙とアッシュは怪鳥から飛び降りアッシュは怪鳥の顔を撫でてから首をポンと叩くと怪鳥は翼を広げ空の彼方に飛び立っていった。
「なぁ、一馬なんか俺たちすげー見られてるぞ」
「げっ、ホントだ、皆デカイな」
「小人達よついてこい」
アッシュは手招きをしながら歩き出す。
「それにしてもどの建物もビルみたいだな」
「世界大統領になればこんなのよりデカいビルに住めるさ」煌牙はもうすでに世界大統領になれると思っているようだ。今から始まる果てしなく長い闘いと叶えられる事はない願いを夢みて。




