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神と悪魔を差し置いて最強を名乗る。  作者: あるみホイル
種族総合闘技大会編
10/17

他愛ない雑談

「ぷふぁ〜、腹いっぱいだぁ」

「なんだかんだで龍人族の料理ってうまいよなぁ」


この世界には爪楊枝が無く煌牙は自分の人差し指の爪で歯に詰まった肉を取り除いている。


「妖精族の村もいいけど、やっぱこっちの方が落ち着くぜ」

「だよなぁ」

「で、どうだった?妖精の魔法は?」


そう言ったのはアッシュだった。

一馬と煌牙が村に帰ってくるなりアッシュは晩飯をご馳走すると言い二人はホイホイとアッシュについていった。

アッシュが二人をご飯にご馳走した理由はただ妖精の魔法が気になっただけで特に意味はなかった。


「俺らの世界に魔法って概念がなくて魔法ってただの妄想でしかなかったんだけど、いざリアルに見てみると言葉も出なかったよ」

「そうなのか?では蘇生や治癒などはどうしているのだ?」

「怪我や病気になれば病院って言って部分的に悪いところを直接手を加えて治しているんだ。蘇生は今の医学では絶対に無理で一度死んだ人間が蘇ることはない。」

一馬が言いながら一つ不思議な点に気づいた。


「ん?待てよアッシュ、蘇生って死んだ生き物を蘇させるものだよな?ならこの世界じゃ死に対する怖さや絶望はないのか?」

「いや、死に対する恐怖はある。しかし魔法という奇跡があるから私を含む不特定多数の者は少なからずその恐怖を低減させてはいる。」

「そうなのか、じゃ例えば身体がバラバラになったらどうするんだ?」

「さすがにバラバラになると修復は不可能だがちょっとした肉体の断片ぐらいならなんとかなるようだ。」


魔法という奇跡はこの世界にとっては必要不可欠なものになっておりリスクを伴う医学はリッシュコズモではまず医学の概念がなく怪我をすれば魔法、病気になれば魔法と魔法に依存している。だがノーリスクハイリターンとはいかない。

魔法を使うにはまず第01器官が存在する必要がある。

そして魔法を使うにはエネルギーが必要である。そしてそのエネルギーを作るには食べる寝るなど基本的な営みがなくてはならない。

そのエネルギーを生成し使用する場合その魔法のレベルにに応じて肉体にも負担がかかる。昨日クレアが使用した火炎魔法の術式による負担は感覚的にはローキック一発ぐらいの負担がかかっているのは使用したクレアも気付いていない。


「あぁ〜それよりさ、気になったんだけどアッシュってさ大会に出場するのか?」

「あぁ、私も出場する。他にも私と同じ幹部の二人がエントリーしている。」

「へぇ〜、あっこの肉うまい」


アッシュと会話している間もずっと食べ続けていた一馬の口に入った肉がうまく、つい目線が肉に向いてしまいアッシュは呆れ顔で木製のジョッキに入っている酒をグビグビと飲み干す。


「てかさ、俺思ったんだけどこのままダラダラしてて優勝できんのかな?」


そう言ったのは煌牙だった。彼は基本的には楽観かつ自由な性格なのだがやはり多少の不安は隠しきれなかったようだった。一馬も不安はあったがたいして気にはしておらずもしかしたら煌牙の方が色々と考えているのかもしれない。


「まぁ、それは俺も考えてはいたけど一番厄介なのはやっぱ妖精だよな、龍人とか獣人に機械は物理的な攻撃でしか相手にダメージを与えることはできないけど妖精は遠距離も近距離も自分の射程圏内だから近寄ろうにも距離を置こうにも攻撃が仕掛けられてうまく試合を自分の流れにもっていけないだろうな」

「ふむ、確かにそうだが一馬よ、龍人には使い魔を召喚することができて使い魔と龍人を倒さないと勝利にはならない、それに獣人にはパワーとスピードどちらも備えられている。多少の事では負けはしない。機械族は身体が壊れても瞬時に修復することができ何より機械族は計算高き戦略で闘ってくる。トラップにトラップを重ねて相手を混乱させ隙を見つければ容赦なしだ」

「ゲッ、マジかよ」

「まっ、つまり初戦から手を抜くなってことだろ」

煌牙の言ったことに間違いはない。ある格闘家の言葉があり、《例え試合で相手が子供でも手加減はしない。何故なら闘う事に年齢が関係ないからだ。もし私が子供だといって手を抜けばそれは大会社の社長が小会社を笑うのと一緒だ。私は例え子供でも正々堂々と勝負する。》と言った。

俺は煌牙の言った言葉で自分のポリシーを思い出した。手を抜くなら最初からするな。中学の時担任の先生に教えられた言葉なんだが俺は何故か心に響いていた。


「確かに一馬と煌牙は強いがまだ何か足りないと思う。聞く話によれば妖精族の村に悪魔が侵略して妖精を虐殺したと聞いたがその時お前らが悪魔を追い返したみたいだな?」


一馬と煌牙にとってこの件は腸が煮えくり返るような事だったこともありただ黙ってアッシュに返答しなかった。その事を不思議に思ったアッシュは二人を交互に見る。らしくない二人を眺めていたアッシュは話題を変えて話し出す。


「もしよかったら私達と一緒に鍛錬するか?」


それを聞いた煌牙はフォークを皿の上に置き一呼吸おいてからアッシュに言う。


「いや、一緒にやってもあんまりなぁ」

「ふむその心は?」

「一緒にしてたら手の内がバレるだろ?」

「それもそうだな、ならどうするのだ?」

「まぁ〜俺と一馬とでやってたらい

いだろ?」


待ってくれよ、煌牙お前と組手なんかしてたら体の骨が一体何本折れることやら・・・勘弁してくれ。

心の内でそうつぶやきながら分厚いステーキをフォークで切り、口に頬張る。


「なぁ一馬、一緒にするよな?」


一馬は噛み砕いていた肉を飲み込みジョッキに入っている甘いみかんのような果実のジュースを一口飲んでから目線だけ煌牙に向け言う。


「死ぬ、いやマジで」

「フハハハハッ!」


アッシュは高らかに笑い店内にいた龍人達がこちらに注目する。


「いやぁ、人間という種族も冗談が言えるのだな!」

「当たり前だろ!俺らそんなに堅い奴らだと思ってたのか⁉︎」

「二人とも話し方が大人だからな」

「やめてくれよ、俺らは愉快な輩だ」

「安心した。お前らなら・・・」

「ん?何か言ったか?」

「いや、なんでもない」


アッシュは口角を少し上げて店員に酒の追加注文した。



それから約二時間の間、日本の事や風俗などのしきたり、軍事兵器や電子機器などのデジタルな道具について説明したり、逆にアッシュがリッシャコズモの風俗などについて教えたりしていた。

こうして異種族が話すことはギガバイトでは不可能だ。

犬や猫、他もろもろの動物と話すことが出来る人がいると聞くがそれは本当に話しているわけではない。だが一馬煌牙とアッシュを見て欲しい。彼らは種族の障壁を越え会話している。

同じテーブルを囲み同じものを食べて世間話や軍事について話す彼らは既に友人なのではないのだろうか?

もしかしたら一馬と煌牙はこの世界に馴染んできているのだろう。最初は龍人の眼が怖いやらと言っていたが今は気にしてもいない。

だがこのままどんどん馴染んで親しくして馴れ合いをしていると本来自分がいるべき世界に帰るとなると名残り惜しくてこの世界にとどまろうとするのではないだろうか?なら交友は避けているほうがキッパリとリッシャコズモと別れれると思う。

と分かってはいるが一馬と煌牙は無意識に親睦を深めているのが現状だ。

雑談は真っ暗になった外を見た煌牙によって終了した。


「あぁ、もう夜か。さてそろそろ帰るか」

「もうそんな時間か!」


アッシュは店内の窓から外を見て既に夜になっていることに気づき、最後にジョッキに入っている酒を飲み干して席を立つ。


「支払いは約束通り私がしておこう。」

「おう、サンキュー!!」


煌牙は親指を立てニコッと笑ってみせた。


支払いを済ませ三人は店内を出て店の前で別れる。一馬と煌牙は最初泊まっていた宿屋に向かい歩いていく。

もうこの世界に来てから三日経過しており種族総合闘技大会まで後四日と迫っている。

二人は気付いてはいる。例え大会で優勝できても悪魔や神に勝てるかとは話は別になると・・・

魂の悪魔ヤボラ。この悪魔にも勝てなかったことは二人の中でずっと引っかかっている。果たして神に勝てるのか?まず悪魔を倒せるのか?このままダラダラしていくわけにはいかないと。

だが強くなるためにどうすればいいかが分からなかった。ゲームのように敵を倒してレベルが上がるならものすごく簡単なのだが実際は敵を倒しても経験値はもらえるがレベルが上がるわけでもなく新しい技を使用できるわけでもない。

二人は強くなるために考えてはいるが具体的にどう鍛錬すればどう強くなるか思案して思案して結局答えはでないままでいる。

アッシュが言ってた通り龍人族達と鍛錬してもよかったがどうしても相手の手の内が分かってしまうのが一言で嫌だった。それにそこら辺の龍人では到底二人と一緒に組手などできない。瞬殺だろうだし相手のプライドを傷つけるのも嫌だった。

今、二人といい相手をするのは悪魔達なのかもしれない。だが悪魔はそうやすやすと姿を現さないのは承知済み。ならどうするか・・・二人は同時に答えが出た。


「やっぱり煌牙とするのが一番いいのかもしれないな」

「あぁ、そうだな。」

「あんまり張り切りすぎんなよ」

「それはこっちのセリフだ」

「大会まで後四日・・・どうせ出場するなら優勝しかない」

「めんどくさい奴だな一馬は」

「お前もウザいぐらいめんどくさい奴だから一緒だ」

「まっ、優勝するのは当たり前だ」

「だな・・・」



街灯のないルーロスに光を届ける四つの惑星だけが夜道を照らし、歩くための手助けをしてくれる。

神々しく輝く四つの惑星を眺めながら二人は歩き各々の気持ちを胸に掲げ夜道に消えていった。

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