第84話『エピローグ』
ウララとお餅を我が家に招待してまったりと過ごす。お茶請けにクッキーを持ってきたウララに感謝したけど速攻で愚痴られた。
「神大陸はずるいです」
「ずるいずるいー」
「あんな好立地とは知らなかったんだよ!」
責められているのは神大陸行きのチケットを逃したことだった。私が独断専行気味に出発してしまったためちょっと恨まれている。
「『JCO』はジャックと愉快な仲間たちがいてこそだよね~」
「まあね。検証は済んだの?」
「1割もやってないよ。配信のネタにされちゃう」
「カシーが配信をすればいいです」
「いやぁ、真に背中を押されるとやっちゃおうって気になるよ」
「頼めばやってくれますね」
みりあには貸しを作っていて真には神大陸の件で恨まれている。私はほか貂に便乗して配信者をやるしかないのかな?
「でもほか貂がいるからね」
「でもではありません」
「瑚鈴は『サ学』のサイクロンモードから配信するべきだよ」
「なんでみりあが『サ学』上手いのか知ってるからね!」
私が攻略情報をばら撒いたからだよ! サイクロンモードに最速到達したみりあは全員敵の戦場を味わって攻略法を真剣に考えている。『JCO』で学んだのはいかにタイムロスを防ぐかなんだよね。
「『サ学』でも録画アイテムはゲーム内調達でしたね~」
「イベントシーンを飛ばせるサイクロンモードで配信はないよ」
「楽しそうに語るじゃないですか」
それはサイクロプスクが面白変化をするからだ。城すら攻略対象だったという乙女ゲーは初じゃないかな?
『JCO』の配信動画は日に日に増えている。
ほか貂たちが1番乗りしてクラン単位で結晶を集める配信者勢だ。
昨今は録画アイテムをゲーム内に仕込むのが流行り。リアルとゲームを繋ぐ役割よりもゲーム性を重視しているようだ。
「クラン対抗イベントとかは出てきそうかな~」
「『JCO』は毎月のイベントですからね」
「次は100万人突破記念では? 私はパスする」
「なんでパスするの!?」
「妹にゲームカセットを貸しちゃった」
姉妹間の貸し借りにとやかく言う権利はない。だけど貸しちゃったか~。
「始まりの苔で取り返そうと思うよね?」
「お餅はもう戻ってこないと思う」
「そんなこと言わずに! 私はみりあと遊びたいよ~!」
わしりと腕に抱き着くとみりあは鬱陶しそうに押し退けてきた。
「ジャック化してるよ、瑚鈴」
「淑女たるものジャンヌにならなければなりません」
「ジャンヌは嘘吐きじゃん!」
「ジャンヌのことを悪く言わないで」
真顔で言ってくるみりあに私の心は『JCO』から遠ざかった。繋ぎ止めてくれる配信動画でも探そう。
「面白い動画でもあるかな~」
「『サ学』動画は見てませんか」
「見てないよ。ネタバレ注意だからね」
「私はオフゲーから出ない」
みりあはそう言う。昔の私みたいに言わないで!
ほか犇チャンネルや有名どころのKENNチャンネルは『JCO』の見どころを誰よりも早く配信している。
「『JCO』を配信するなら願いの大地になるよ」
「神大陸じゃなくて?」
「発展を遂げるなら願いの大地だよ! 私たちはダンジョンを造る!」
「ダンジョンですか」
ライブ配信しながら造れるといいかな? 大自然族を呼び込んでイベント期間は始まりの苔を使って目指せ上位種族! 私はライブ配信が苦にならないからね! シャフトシャフトでやっていこう!
「そういえば真、畑の様子はどうだった?」
「最近は知りません。ハオーラに会って聞いてください」
「『サ学』のサイクロンモードで畑弄りをするとだよね」
「そうだよ! そっちの畑!!」
「『サ学』の畑はサイクロン城のせいでハチャメチャです!」
「イベントシーンを切り刻んで襲いかかってくるからね!」
サイクロプスクから少し離れた隣村の畑を耕すことで攻略出来るサイクロンモード。畑を耕すコマンドでストーリー進行が可能だけど、その時に襲いかかってくる魔獣が厄介だった。
『サ学』で屈指の強さを誇る鉈ライオンが村を襲撃したり、サイクロン城を守護する女ゴーレムが襲ってきたり……サイクロンモードという名の戦略シュミレーションを備えたのが『サ学』だった。
サイクロンモードをクリアして得られるのが配信アイテムで、『JCO』でも配信アイテムはゲームクリアと同時に得られるものと言っても過言じゃない。
「『JCO』か『サ学』か。真次第だよ」
「瑚鈴には『JCO』しかないです。ダンジョン造りですか」
「そうなるよ~。時々占いかな?」
「ダンジョン占いで通路を造成すると」
みりあは深々と頷いた。勝手に決めないでよね! 貸しがあると言ってもゲーム内だけの貸しだから!
「私と真、二人合わせてきんちゃく袋だよ」
「三人合わせて餅きんちゃく?」
「そうだよ! だから絶対にログインしてね!」
みりあにはそう釘を刺しておいた。
5年後。
『JCO』に帰ってきたお餅は晴れやかな表情で願いの大地を見回した。
「ん~! 今日から7日間は『JCO』だ!」
「7日間のパワーレベリングだよ!」
私たちはレベル999。
お餅はレベル152。プレイ時間は私たちの10分の1にも満たない。
「今年はLVPを取りに行く!!」
「おぉっ! その意気だよ、お餅!!」
「あ、配信してるんだっけ?」
「ライブ配信だよ~。皆見てる~?」
私は配信越しに視聴者の様子を窺った。
【見てる見てる~】
【幻のお餅が来た!】
【お餅も大自然族か!】
【LVPのために過去から飛んできたのか!?】
【パワーレベリングってレベルいくつ?】
コメント数は結構多い。
視聴者1000人がお餅のカムバックを楽しみにしていた。この5年間、お餅は1度たりともログインしなかったからね!!
「お餅のレベルは152だよ~。自分たちで造ったダンジョンでパワーレベリングしながらイベントを終えるのはこの人が最後!!」
「最後なんだね? よろしく~!」
「よろしくじゃないよ! 5年間も『JCO』にログインしないで『サ学』の続編を齧ってるだけだったなんて信じられない!」
「『サ学』の続編は外れだった」
「そんなことないからね!? さあ、今日も元気にシャフトしていこう!」
「賛成!」




