第四十八話『魔女の館』
魔王城が実はモンスターだった。
城塞都市のギルド通りに必ず一つはあるだろうと目を光らせながら私たちは学術区にやってきた。
「魔女の館だよ。学園生活を送るメインキャラが道端で拾った子猫にきゅんと来る一シーンで背景のサイクロン城が動き出すサイクロンモード……私は勇者になれなかった」
「テンション落ちてる?」
「お餅様で行く? 魔女とサイクロンは第三世界線の始まりと終わりだよ」
そのうち私たちはハンバーガーエキスを抽出して加護を得るのかな?
「お待たせしました」
「ウララ!」
花の王剣学園から出てきたウララたちとパーティーを組んで魔女の館に足を踏み入れる。
何の変哲もない雑貨屋だ。
ポーキーズキングと比べるとモッツァレラチーズとサバの缶詰くらい違う。何故か缶詰が売ってる。グリーンポーションとホワイトポーション、それにトレインポーションまである!?
「トレインポーションがありますね」
「一本10kだよ。一スタック買えるよね?」
「買えますね」
「そんなに使う?」
使わない? 転売目的で買うのも良くないよね。
「サーチベリーに買っていこうっと」
「魔導書は?」
「高くて買えないよ!」
雑貨屋には魔導書も売っていた。
【フレイムジャベリン】の魔導書……500万コモン。
【アイスジャベリン】の魔導書……550万コモン。
【サンダーストーム】の魔導書……800万コモン。
とても買えない金額だった。ドロップアイテムを売っても3mになるかならないか……ジオルグバーガーを売ると余裕で足りる。一つも売らないけどね。
「学園クエストで【フレイムバレット】の魔導書と【フレイムジャベリン】の魔導書は得ました」
「「欲しい!」」
「戯獲の短剣と交換です」
魔導書ゲット! ウララの優しさは世界一なので早速、私は【フレイムバレット】を習得する。
「攻撃魔法が三つに増えた。ありがとう、ウララ」
「ありがとう! 第三世界線の絆を感じるよ!」
「カシーは第三世界線って言わない!」
「第三世界線ですか?」
私とお餅はジオルグについてウララに教える。ジオルグバーガーは一つ渡した。
「それぞれの位置は同じ緯度に沿っているんですか。ジオルグは最後ですよね?」
「そうなるね。ジィークの位置が謎だけど、行動と現象は反比例するらしいよ」
「空間座標ではジャックやジャンヌが最大値でジィークは反比例グラフを求める点になる。大陸には第三世界線と第四世界線があるから球体としての世界が現象の根幹にある」
「スキルツリーについてははぐらかされたね。ジオルグバーガーを食べると攻撃スキルは覚えやすくなるよ。私は高火力のスキルが欲しいから食べる!」
「フィールドに出るので付き合ってください」
「お餅のゴールを見届けてからね!」
魔女の館にある扉を【万物調教】で開け放った。
店の奥に続く通用口ではなく、城門前の広場に繋がっていた。
白竜が空を飛んでおり、水掘では水竜がアーチを作る。
「魔女の館に着きましたね」
「サイクロン楽園……! おいで! サイクロン!」
「そんなに好きなゲームだった?」
私はサイクロンを召喚してモンスターの闊歩する城塞都市の一部に溶け込む。城下町ではオークやリザードマンが普通に歩いている。
「城の外観が似てるんだよ。元ネタを辿ると洋ゲーの結構有名なMMOで使われた可変城塞。サイクロプスクのエンペラム機構はステーション各部を飛翔させる推進装置でサイクロンモードだと生体兵器と化す。何フォグ秒耐えられるのか……私は六百フォグ秒で一寸法師作戦を決行した」
「倒したんですか」
「倒したよ~。勇者にはなれなかったけど」
単騎で突撃する勇者ルートでクリアしたプレイヤーがいるんだろうか? 私は勇者になれなかった。
城門を潜るとギルドホールの受付魔女たちに迎えられて改めて魔女ギルドに来たのだと感動する。ハオーラは来たことがあるのかな? 他のエリアとも繋がっていそうだよね。
「魔女の特訓を受ける。二人もどう?」
「やるよ!」
「特訓ですか。カシーにはクリア条件が分かりますよね?」
「あ、そうだよね!」
垂界情報でクリア条件を確かめる。
「魔女の特訓は10キロ走破だよ。パーティーで受けるとクリア判定は良くなるよね」
「やってみますか」
魔女の特訓はS判定クリアで私とウララは王竜結晶をゲットした。
お餅は回復魔法の魔導書で、魔女になってから攻撃魔法を獲得。魔女の館周辺でクリアしたのでクリア報酬は【ストーンジャベリン】の魔導書だった。
「攻撃魔法が充実した!」
「ジャベリン四つになりましたね!」
【ファイアジャベリン】、【フレイムジャベリン】、【ホーリージャベリン】、【ストーンジャベリン】だ。
四つとも高火力の攻撃魔法として知られている。
「奮発して【アイスジャベリン】の魔導書を買うよ!」
「MP不足は解消しますよね?」
「する! ジャンヌは一皮剥けた!」
「ジャンヌパワーをしかとご覧になるであります!!」
広場を囲んでいるジャック・ザ・ツリーに果実が弾ける。ジャンヌパワーじゃないよね?
「僕の力だよー!」
「ジャンヌは花屋だから」
「二人の力ということで」
ウララはセピュネたちと協力してジャック・ザ・ツリーの果実を収穫する。
一個1000コモンで売れるんだよね。魔導書を買うには金策するしかない! イベントアイテムは売るに売れないのでジャックフルーツを集めまくる!
雑貨屋で手持ちのドロップアイテムと一緒に売り、お餅に【アイスジャベリン】の魔導書を買って差し上げた。私たちはお餅様にかなり貢いでいるよ。
「上位魔法職があるんですよね?」
「ありそうだったよ? ジャベリン系統の魔法を全部揃えると何かあるかな?」
「上位属性で揃えますか」
魔女補正でジャンヌの加護(中)に進化したお餅はレベルアップ時に能力値全体が強化される。
ステータスポイントはジャジィープロテクトの効果で通常通り。
ただジャジィープロテクトをオンにすると耐性スキルの熟練度は上がりにくくなる。他の加護を呪い耐性で打ち消すにはジャジィープロテクトに頼らない方がいい。
魔法のバリエーションが増えると、お餅は知力によるゴリ押しで戦う必要がなくなる。
それに魔女の上位職業で戦闘職があるはずだ。
垂界物は名前があれだし、シャフトにのみ特化している。魔法の威力補正と言ってもクリティカル時に状態異常が発生しやすいこと。
別の派生があるのは魔女の館ではっきりした。垂界物はカウンターに鎮座するスライムなんだよ……只者ならぬ気配を感じた。
「お餅。1号店はどうする?」
「ジオルグホテルの名物にする」
「何の話ですか」




