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アキとナツのとある日

お久しぶりです。



 昼下がり。鮮やかな紫の髪をふわりと揺らしながらアキが王城の廊下を歩いていた。

この廊下は騎士の訓練所へと繋がっており人通りはあまり多くない。すれ違う人といえば騎士がほとんどだ。

そのため、執事のお仕着せを着たアキはこの場では少々浮いている。女の子と間違われることもあるほどの幼く愛らしい顔立ちも相まって人通りが少ないとはいえすれ違う者達は皆一様にアキをチラリと横目で見やっていく。



「ッチ」


可愛い顔に不釣り合いな舌打ちはかなり大きめだったがこの廊下には特に猫をかぶるような相手もいないので本人は気にしていない。むしろ存分に悪態をつくチャンスである。


なっちゃんどこにいるの!?そもそもなんで僕がなっちゃんの為にここまでこなきゃいけないんだよ。、、、じろじろ見てこないでよ、気持ち悪い。


はぁ


苛立ちを吐き出して足早にナツが訓練している場所へと向かう。


「なぁ、そこの執事」


正面から歩いてくる見知らぬ三人の騎士達。そのうちの一人が鼻で笑いながら声をかけてくる。なにこの人たち。


「なんでしょうか?」


とりあえずにこやかに答えてみる。別に取り繕わなくてもいいんだけどまぁ、一応。


「うわ、やっぱり可愛い顔してるなぁ、さすが噂のアイドル執事」


・・・きもちわるい


「ありがとうございます。それでは僕はこれで」


こういう時は去るのが一番だ。

三人の横を通り抜けようとしたその時、真ん中の体格のいい男が腕を掴んできた。


「まぁ、待てよ。お、こいつ腕まで細いぞ。良いじゃん少し俺たちの相手をしろよ」


全身に鳥肌が立つ。無理なんだけど。


「お断りします」


不愉快。


「おいおい、連れないねぇ。いいじゃねぇか少しくらい。ここに居たら訓練ばかりで退屈なんだよ。少しは楽しみがねぇと」

「楽しみたいのであれば他の方達とどうぞ」

「いいねぇ。その顔に似合わず冷たい感じもそそられるわぁ」


ッチ


アキの苛立ちが増すにつれて自然に出た舌打ちはさらに男達を誘ってしまったらしい。手首を掴む力はさらに強くなっていきジワジワと痛みが増してくる。


「さっさとこの汚い手離してくれない?気持ち悪い。」


振り解こうと力を入れてみるがびくともしない。さすがは騎士だと云うべきか。

近距離戦は苦手だ。力技を得意としないアキにとっては何とも苦痛な時間だった。暗器や魔法を使ってもいいがここでの荒事はアテナちゃん達に迷惑をかけてしまうかもしれない。苛立ちと気持ち悪さで歯を食いしばることしかできず苛立ちが増して生理的に瞳が潤んでいく。


「あ!アキだあ」


その時、背後でなんとものんびりした声が響いた。


「なんかアキの匂いがすると思ったんだよなぁ」


ニコニコしながら爽やかな笑顔で近づいてくる騎士がひとり。


「.....なっちゃん」


その場にいた者は声のする方へと一斉に振り向いた。腕を掴まれていたアキはその声に顔の強張りが解けていく。


「ナツさん、ご兄弟少々おかりしますよ」


ニヤニヤした男は機嫌良さそうにナツに話しかける。その間も腕を掴む力は緩まない。


「いやいや、だめですよー。アキすごい不機嫌じゃないですかぁ。後でおやつ貰えなくなったらどうするんですかぁ。もらっていきますよ」


そういってアキの腕をナツが掴んで連れて行こうとするが一向にアキの足が着いてこない。ナツが振り返れば男達はまだアキの腕を掴んでいるらしい。


「なんすか?」


それでもにこやかにナツは男達に問いかける。


「困りますよナツさん。いくらナツさんとはいえ俺らの楽しみを取られちゃたまったもんじゃなーーーーーッ!、」


諦めの悪い男が口を開いた直後、男の喉元に風が吹き冷気が漂う。触れるか触れないかのそれは氷の魔法を纏っているわけでもないのにやけに冷たい空気が張り詰めていた。


「困るなぁ。アキ怒ったら怖いんですから。我儘もほどほどにしてもらわないと」


いつもと変わらぬ爽やかな笑顔とは裏腹にナツの握る剣の先は確かに男の喉元を捉えていた。


「じょ、冗談っすよ。それじゃあ、俺らはこれで」




いつの間にか剣を鞘に収めていたナツは、走り去る男達なんていなかったかのように、アキの腕を引いて歩き出した。


「今日のおやつは何かなぁ♪」

「...僕が荒事にしないように我慢してたのになっちゃんが剣抜いたら意味ないじゃん」

「えぇ、だってアキ嫌そうだったじゃん!」

「...むかつく」

「ん?なんて?」

「ーーーなっちゃんはおやつ抜き!!」

「え!?なんでだよぉ!!」

「ほら、さっさと行くよ!」


今度はアキがナツの手を引いて歩き始めた。





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