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第6話 修道服

それからの夜は、形が変わった。テレーゼの祈りの後に、もう一つの時間が加わった。


ある夜。カタリーナの指がテレーゼの額に触れた。額から、こめかみへ。頬の骨の上へ。顎の線に沿って下へ。唇の輪郭を、指先で辿った。


「今、あなたの顔を全部覚えた」


「……指で?」


「指で。目で見るより正確に」


テレーゼの手がカタリーナの手首を掴んだ。顔に触れていた手を、自分の頬に当てた。


「十八年間——誰にも触れられなかった背中に——あなたの手があって——気持ちいいんです」


「もっと——触ってください」





ある夜。


テレーゼは居間に立ったまま、自分の修道服を見下ろした。


修道服の裾を掴んだ。両手で。頭の上から引き抜いた。


布が頭を通過する瞬間、視界が暗くなった。布が腕を通過する瞬間、肌が空気に触れた。


修道服が椅子の背もたれに掛かった。テレーゼは下着だけの姿で、居間に立っていた。


空気が肌に触れていた。腕に。肩に。首筋に。鎖骨に。十八年間、修道服の下にあった肌が、空気の中にあった。


寝室のドアを開けた。カタリーナが寝台の上で本を読んでいた。顔を上げた。テレーゼを見た。本が手から落ちた。


「脱ぎました」


「……見えてる」


「見てほしくて脱ぎました」


「寒くない?」


「寒いです」


「こっちに来て」


テレーゼが寝台に上がった。毛布の中に入った。冷たかった。テレーゼの肌が、カタリーナの服越しに冷たかった。


カタリーナの手がテレーゼの腕に触れた。素肌だった。布越しではない。


「七歳のときに修道会に入って——着替えも一人でした。入浴も一人でした。十八年間——自分の手以外が肌に触れたことがなかった」


テレーゼの声が震えた。


「こんなに——情報量があるんですね。人の手って」


カタリーナの手が背中を撫でた。肩甲骨の間を。脊柱に沿って。


「あなたも——脱いでください。私の肌だけが触れられているのは——不公平です」


カタリーナは服を脱いだ。


肌と肌が合わさった。テレーゼの冷たい肌と、カタリーナの温かい肌が。二人の間で温度が混ざった。





暗闇の中で、テレーゼが言った。


「私——修道女を辞めるかもしれない」


「……」


「この体は——神に捧げたものでした。でも今夜——あなたに捧げました。二つの場所に同時にあることはできないから」


テレーゼの声は震えていなかった。


「選ぶなら——あなたを選びます」


「……重い」


「重いですか」


「重い。でも——受け取る」





一週間後。テレーゼは聖都の修道院に手紙を書いた。古聖語で。


「還俗を願い出ます。理由は、誓願を守ることができなくなったためです」


封をした。カタリーナの前で。


「嘘の報告書は——もう書きたくないから」





四十三日後。返信が届いた。


「……承認されました。条件が一つ——修道名の放棄。テレーゼは修道名なので——新しい名前を届け出る必要がある、と」


「名前を——変えるの」


「生まれたときの名前は——覚えていません。七歳で修道会に入ったから」


テレーゼはカタリーナを見た。


「カタリーナに——つけてほしい」


「私が?」


「あなたが呼ぶ名前だから。あなたがつけてください」


カタリーナは長い間、黙っていた。涙が頬を伝った。


「——マリア」


テレーゼが——マリアが——目を見開いた。


「マリア・ヴェルナー」


「ヴェルナー——って」


「私の姓。帝国の姓をつけたら——帝国の書類でも、名前が書ける」


マリアは泣きながら笑った。


「きれいな名前ですね」


「きれいな人に、きれいな名前を」





翌週。カタリーナは外務局で同居人の情報変更届を出した。


変更前:テレーゼ(姓なし・宗教名)。ラインハルト神権国。


変更後:マリア・ヴェルナー。無国籍。


職員は確認した。


「同居人の姓が——申請者と同一ですが」


「はい」


職員は少し間を置いた。それから、何も聞かなかった。


「受理しました」


外務局はこの記録について、何も判断しなかった。姓が同じ理由を問う欄は、様式にない。

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