10-26 私が 2
私はそっと凛々奈さんの居る部屋を出た。
そのまま診療所の奥のシエルさん達に気付かれないようにこっそりと外へ出る。冷たい空気が鼻を通ってスーッと胸を冷やす。震えながら吐いた息が白くふわりと浮かび消えていく。空を見上げると灰色の雲がずっとずっと遠くまで広がっていた。
すこしだけぼうっとそれを見つめてから私は歩き出した。人通りの少ない道を、あてもなくただ人の少なそうな所を選んで歩き続ける。
「・・・・楽しかったな」
足を止めないまま、だんだんと沈んでいく視線は空と同じ灰色のコンクリートの道を写す。だけどモノクロな次回の中で、私の頭には色付いた沢山の大切な記憶が思い出されてた。みんなと海にいったり、新しい学校でお友達ができたり、それから・・・
色鮮やかな思い出がついさっきの事みたいに頭の中で流れている。みんなと過ごした大切な思い出。
「ふふっ」
無意識に口元がゆるんで声が漏れて、伏せたままの目は少しだけ潤んで優しく綻んだ。歩き続ける私に、冷たい風がまるで邪魔をするみたいにずっと前から吹いていた。それでも私は行かなきゃいけないんだ。
───いつまでそうやって歩き続けたのか分からない。ちゃんとした目的地を決めていた訳ではないけれど、立ち止まって周りを見るとさっきよりも黒みを帯びた灰色の空と人気のないビルと何を作っているのかも分からない寂れた工場みたいな建物だけが周りにあった。
「・・・ここでいいかな」
誰に言うでもなく呟いて私はビルを見上げて言った。
そのまま入り口を探した。見つけた入り口は荒れ果てていてひと目でもう使われていないのだと思った。ふと横を見ると掠れて読めないボロボロの大きなプレートがあったので、どこかの会社のビルだったのかな?なんて思った。
「・・・・・」
心の中で丁度良かった、と安心してビルの中に入る。何かの破片と瓦礫に注意しつつ上へと続く階段を探して歩く。鋭く尖ったガラス片も散らばっていてうっすら私の顔が反射していた。
「・・・・怪我してももう関係ないんだけどな」
私はそう言うけれどやっぱり痛いのは嫌なのでガラス片に注意して進んだ。気を付けながら壁沿いになんとなく歩いていると錆と汚れで黒ずんだ鉄の扉が少し開いているのが見えた。中を除くと目当ての階段があった。
「何階建てなんだろ?」
充分な高さがあれば良いからなんでもいいんだけれど。
入り口と同じように散乱している瓦礫やゴミを避けながら私は階段を登りだした。
ここまで読んで下さった方本当にありがとうございます。
不定期更新ですがなんとかここまで更新できました。
このエピソード10で(10ももう少し続きます)一区切りという感じはありますがまだ凛々奈達のお話は続きますのでよろしければこれからも読んで頂けたら嬉しいです。
読んで下さった方が凛々奈達を好きになったりお話でちょっとでも心に何か感じる事があればいいなと思います。
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これから少しペースを上げて行けたらと思っていますのでよろしくお願いします。




