表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士の国  作者: quo
34/144

遅延

傭兵全員がルカとリリスの部屋に集まった。


馬の変調から、馬車への細工も懸念された。とりあえずは騎士の老人に、状況を説明しなければならない。


カイン達が宿に行くと、騎士の老人を呼び出した。度々の呼び出しに機嫌が悪いのか、大股で歩き、眉間に皺を寄せていた。

状況を説明すると、一気に顔色が変わった。ほどなく、何事かとミレイラが現れた、ルカの姿を見つけると、少しだけ頭を下げた。ルカは毎度、ミレイラが頭を下げるのに応じなていないのは失礼と感じて、同様に頭を下げた。ミレイラはその姿に驚き、慌てて目を伏せてしまった。


二人のやり取りを見ていたリリスは、思わす吹き出してしまった。

それを見た騎士の老人は、自分が笑われたと思い込み、リリスを大声で怒鳴った。


そんなやり取りが終わると、全員は厩舎に移動した。

馬の様子を見た騎士の老人は、馬の姿を見ると、この馬は一日持たないと言った。

多くの戦場を経験した、人間の感だろうか。


次に騎士の老人は馬車の点検をし始めた。車輪に車軸を丹念に触りながら見ると、今度は下に潜り込んだ。

騎士の老人が馬車の下から這い出ると、車輪と車軸の結合部にが壊されていたと言った。

走りはするが、そのうち、振動で脱輪するそうだ。


騎士の老人はこのような事を、ある程、予測していたようだ。落ち着いていた騎士の老人とは逆に、

隣にいたミレイラは、驚きを隠せないようだった。


騎士の老人は考え込むと、待つように言い残し、ミレイラを伴い宿へ戻っていった。


連中にとっては馬か馬車のいずれか、または両方が原因で、道中で事故が起こればよい。

しかし、中の人間が、必ずしも致命傷を負うとは限らない。


カインは、確実にとどめを刺すなら、事故の混乱に乗じて、複数人で斬りかかるはずと考えた。

それなら、どこで事故が起きてもいいように、何人かで一団に事故が起こるまで、つける必要がある。


カインは、代替えの馬車が準備出来るまで、足止めされる。宿の護衛の件は騎士の老人に掛け合うと言った。


そのうえで、リリスに、後はどうすると問いかけた。

ルカが不得意な質問だった。


リリスは、質問から間を置かず答えた。連中は見つからないように離れておいて、弓矢を一斉射。

混乱に乗じて賊が突入して仕留めるつもりだ。


だから私が後衛に回り、連中を見つけたら弓兵を始末する。馬車に近寄る者が居れば、矢でガーランドたちを援護する。あとは、中央突破だ。


ルカは、カインの問いに、リリスがあっさりと答えたことに驚いた。状況を説明しなくても、状況把握と任務を共有しているからだと思った。


カインはガーランドに意見を求めた。ガーランドは、馬車に近づく賊など問題ないと言った。


カインは、最後にルカに意見を求めた。

「ミレイラを守る。この前の傭兵程度なら同時に三人。ガーランドと背中合わせなら五人。ミレイラは一人相手なら自衛出来る。矢は、同時でなければ剣で落とせる」


それを聞いたガーランドは、豪快に笑い「お前の背中は俺が預かる。ミレイラを守り通せ!」と言った。厩舎の馬たちが驚き嘶いた。


カインは頷くだけだった。リリスはカインからルカの事を聞いていた。現場は見ていないが、ひとりで十二人を斬ったと。ルカの腕前を信じている様だ。そして、ルカは何人いても斬るつもりだ。「逃げる」の文字が頭にないのか。


確かに矢で我々の馬が射られたなら、そうせざるを得ない。期待できるのは、衛兵が駆けつけ、賊が逃げ出すことくらいだ。


ミレイラを守るとも言った。ズレている。状況からして守るのは馬場の中の人間だ。ミレイラの母らしいから、彼女が馬車を離れることは無いだろう。実質は馬車の人間を守ることにはなる。


リリスは、こころ踊った。剣の使い手の少女と、その少女に思いを寄せる高貴な娘、裏のある騎士様の御一行の旅。そして、ルカの正体にも興味がわいた。表情なく、正確に斬る人数を言う。何者だ。


リリスは、背伸びをしながら思った。この仕事は、本当に面白い旅になりそうだと。


カイン達が宿の広間に着くと、騎士の老人が出てきたところだった。

騎士の老人は、今から代わりの馬車を探す。見つかり次第出発する。


カインは驚き、騎士の老人に言った。

馬車の調達にまだ目処が立たない以上、準備が整うまで出発は延期すべきと。

今の時間で出発しても、夕刻だ。夜間の移動は危険だ。


夜襲になれば、安全は保障できないと言うと。

騎士の老人が、それを何とかするのが傭兵の仕事だと一喝して、部屋に戻っていった。


カインは、まずいと思った。

本当に夜間の護衛となると、夜戦が出来るのは自分とリリス、おそらくはルカ。

相手に手練れが居なくても、数が多ければ自分たちの身が危ない。


命を落とせば金貨など意味がない。リリスも不利は否めないと思った。

皆が神妙な顔をしている中、ルカが口を開いた。


今のうちに、斬っておく。


皆は唖然としたが、リリスが腹を抱えて笑い出した。そうだ、その手があった。


ルカは、リリスがなぜ、笑っているのか理解できなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ