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どう考えても、友達0ゲーマーだった俺にラブコメは難しい  作者: 鈴木君
【第三章】臆病な元気女子のラブコメ
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生徒会の日常


 放課後の生徒会執行部って聞いただけでワクワクしてくるのはなんなんだろう。

 他にも風紀委員とかPTAとかな。

 しかもうちの生徒会には超金持ちの令嬢や、ツンデレのヤンキー、女バスのエースなんて目白押しだ。


 生徒会室に向かう途中、いっつも胸が踊ってる。


 これはアニメや漫画を見すぎた弊害なんだろうけど、この気持ちが得られていないと思うとそれはそれで悲しいし、こんな人間で良かったのかもしれない。


 俺は身体中の鈍痛を我慢しながら、満面の笑みで廊下を歩いていた。

 その動きはゾンビと間違えられても不思議じゃない。


「あたしさ、時々良介のこと見誤ってたって思うんだけど、今も思ったわ」


 隣にいるこの痛みの元凶が話しかけてきた。

 マジで手加減なしだからな、顔だけは避けたみたいだけど、そこがまたリアルなヤンキー感でてんだよ。


「なんで?」

「まさか痛いのが好きなドMだとは思わなかったわ」


 なんかまた不名誉な勘違いが起こってるし、なんかさっきより杏梨が離れて歩いてるのも気になるな。


「違うって、生徒会が楽しみなだけだって」

「ホントかよ、凛も怪しいし、良介もヤバいやつなんじゃねーの?」


 まだ凛の百合疑惑は晴れてないのか。

 杏梨は更に俺から距離をとって、廊下の壁に沿うように歩いてる。


「俺は親友っていった奴を迷わずボコボコにできる人のほうが、ヤバいと思うけどな」

「はあ? 逆ギレかよ。そりゃ良介があたしを裏切ったからだろ」


 本格的に顔がイラついていらっしゃるな、まあそれでも止めないんですけどね。

 面白いし。


「てか思ったんだけどさ、前は杏梨から抱きしめろって言ってきたのに、俺から抱きしめたらボコボコにされるっておかしくないか?」


 どうだこれなら反論できまい、脳足りんのヤンキーめが!


「い、いや、だって急に…………つか、今回のはそもそもお前があたしの気持ちを利用したから怒ったんだろーが! てか前回のも忘れてねーからな、凛と比較しやがって!」


 あ、やべ、途中で復旧しやがった、脳足りんは俺だったかも。

 ……なんかないか、なんか切り返す方法は…………よ、よしこれで。


「ま、待てよ、じゃあ比較しないで、杏梨の気持ちを利用しなければ抱きしめてもいいってことか!?」


 俺は何を聞いとんねん。

 でもこれで突き通すしか道はない!


「は、はあ? そ、それはダメに……決まってんだろ……」


 杏梨が戸惑ってる、これはチャンスだ。

 あのままだったらまた殴られていた可能性がある。もう俺の身体は限界なんだ、これ以上やられたら立つこともままならない。


「なんでだよ、俺は2度と親友だからいいだろなんて古典的な脅し文句で杏梨を利用したりしない。それに比較もしない。あの後、妹に話してめちゃめちゃ叱られたからな、もう心得てる。だから大丈夫だ!」


 なかなか最低なことをしてたって喋ると理解できるな。

 だけど今はやるしかない、俺はバッと腕を広げた。


「あれを話したっ!? ……つか、え、今? ここ廊下だぞ、せめて別の場所で……ってこれもおかしいだろ!」

「なんもおかしくない、今の俺達に垣根はないんだ! さあ!」


 マズイ、思ったより手強い。

 実は押しに弱い杏梨ならいけると思ったんだけど無理か。


「……つか良介はなんであたしを抱きしめたいんだよ? もしかしてあたしの事好きなの?」


 考える時間を与えすぎた、杏梨はニヤリと口の箸をつり上げて、挑発的に俺を見据えた。


「は、はい? そんなわけねーじゃん」

「いや、よく考えたらそうだよな。スキがあればパンツは見るし、手は触ってくるし、近寄ると匂いも嗅いでるよな? あと胸に視線いってんの気づいてるからな? あれ、あたしのこと好き過ぎじゃね?」


 ぐおお……

 わざわざ指摘されたくないような事実ならべやがって。


 ……だめだ恥ずかし過ぎる。


「べ、別に男ならそれは普通じゃ──」


「そう? 抱きしめたいのも普通なの?」


 いつもの声音とは違う、女の子らしい喋り方で杏梨は俺に近づいた。

 いい匂いだし、顔にも胸にも視線が泳いでしまう。

 言われたことそのまんまやってるよ俺。


「え? い、いや普通というか、杏梨だから……かな」

「へーあたしだから抱きしめたいんだ! やっぱ好きなんじゃねーかよ!」


 杏梨は爆笑しだした。

 く、クソ、これ杏梨の家に行く時にもやられたやつじゃねーか……ハメられた。またしても俺の純情が弄ばれた!


「──ま、負けた」


 杏梨がまたしても態度を変え、両手をグーにして胸に持っていき、頭を傾けた。

 なんでこんなあざといポーズできんだよ……


「じゃあ良介はあたしが好きってことでいいの?」

「もう効かねーよっ!」

「なんだつまんねーの」


 そんなこと言ってるけど杏梨は物凄く楽しそうだった。

 そしてそんなことをしていたら、家の玄関についてるような扉が開いた。


「ちょっといつまでコントやってるつもりよ、全部聞こえてるからね? こっちまで恥ずかしくなってくるじゃない」


 渚にトドメを刺された俺達は顔を真っ赤にして、そそくさと生徒会室に入っていった。



 この部屋はいつまでたっても大統領執務室だな。

 世界観が違い過ぎて一向に慣れがやってこない。まあホームって感じはするようになってきたけど。


 今日は珍しく全員が揃っている。

 だいたい凛がいない事が多いが、今日は部活が休みか。


 凛はいつもと同じ俺の隣を陣取っている。ソファーに座る場所が定着してきたな。


「2人して顔を赤くしている……これは……恋!?」


 調子のいい凛はさっそくダル絡みしてきたが、完全敗北を喫した俺にはそれに答えるだけの力が残っていなかった。


「て、テメー凛! この前までウジウジやってたクセに、手助けしてやった恩わすれてねーだろーな!」

 

 杏梨の恫喝もなんのその。

 髭でも生やしているつもりなのか、アゴを撫でる凛は目を細めてしゃがれ声を出す。


「フムフム、怒りで羞恥を覆い隠そうとゆう魂胆ですな? いやはやしかし、顔は未だ朱が差していますぞ? ホッホッホ」


「っこんの……」

 杏梨は凛に飛びかかろうと構えるが、凛のワキワキと何かを揉みしだく仕草をみて、動きを止めた。


 前にやられた()()がトラウマになっているらしい。


 凛はあれほど苦手だった杏梨の脅しを、変則技で攻略してしまっていた。

 慣れって怖いね、ただのセクハラだけど。


 といっても杏梨を馬鹿にしてるわけじゃない、彼女なりのコミュニケーションだな。

 親愛の証みたいな? まあ杏梨は1度仲良くなれば懐が深くて情に厚い女だから、凛はビビるよりも直ぐに懐いていた。


 元から友達だったみたいだしな。


 元気になったのはなによりだ、でもまだ凛の望みがちゃんと叶ったわけじゃない。

 明石さんとは仲直りできたし、ほとんどの女子から敵意はなくなったみたいだけど、全てじゃない。


 凛に好きな人がいると分かっても、男子としてはまだ付き合ってないのらチャンスがあると思ってしまう。

 未だに気持ちが凛を向いている男子もいる、つまり凛を妬む女子は少なからずいるってことだ。

 

 うーん。こんなことなら彼氏がいるってことにしていれば……


 でも、彼氏がいるからって妬まれないわけじゃないと思うんだよな。

 渚だって未だに嫌われている女子がいるらしいし。


「調子に乗るのはいいけど、凛はこれからどうすんだよ、これ以上は俺の考えた作戦じゃ進展しないと思うぞ」


 想像以上に効果があったし大成功。

 けど、さらなる効果を求めるなら別の角度からアプローチすることも考えないとな。


「うーん……やっぱり、りょうくんが付き合ってくれれば」


 杏梨の牽制に成功した凛は、腕を組んでこっちをチラ見している。


 あれからというものの機会さえあれば、すかさず彼氏役を求められている。

 断られたのが相当ショックだったらしい。

 凛は恋で挫折とかしたこと無さそうだもんな、俺もないけど。


 恋愛したことないから。 


 虚しいことは考えないようにしよう。


 でも貞男だった俺に毎日話しかけて来てた凛のことだ、まず諦めないだろうな。


「デメリット有りすぎて無理だな」

「ええっ!? むしろメリットしかないじゃん! こんな美少女と付き合えるなんてめったにない事だよ!? 付き合わないことがむしろリスクだよ!」


 また意味のわからない持論が出てきたな、勿体ないってのは分かってるけどね。


「お前もこりねーよな、良介は凛みたいなデカ女は嫌だってさ」

「んなっ!? デカ女はひどくない!?」


 まあでかいよな色々と、口にはださないけど。

 でも俺と凛だと10cmくらいは差があるから、女子としては大きいなっと思うくらいだ。

 むしろスタイル良すぎて見るたびに綺麗だなって思ってるし。


「ま、良介はあたしが好きらしーし諦めろよ、やっぱちゃんと化粧して身なりに気を遣ってる女がいいんだよ男は。あたしは平均身長だしな」


 確かに杏梨はいつでも完璧だ。金髪がプリンになってることもないし、化粧が落ちてることもなければ、制服もだらしないようでいつもスタイルが決まっている。


 知らないうちに化粧台が生徒会室に増えていたんだけど、杏梨の仕業だったらしい。


「アタシだって化粧水塗ってるよ!」

「は?」


 杏梨は呆れた顔で聞き返している。

 化粧水なら俺も風呂上がりに使ってるな。

 

「化粧水!」

「化粧水だけなの凛?」

「ん? そうだけど」


 化粧のことはよくわからん。けど凛は化粧水を塗って化粧をしてると言い張っている。

 これがおかしいのは俺でもわかる。


 そして化粧をしてないのに、顔がこんなに綺麗なのは異常だってこともわかっている。


 杏梨は凛の頬を軽くつねって、指先を擦り合わせる。

 ホントに化粧してないのかチェックしてるんだろう。


「……あーあ、やっぱお前ムカつくわ。だから嫌われるんだよ」

「ええ!?」


 驚いて「なんで、なんで?」と聞いてくる凛に、杏梨は大きなため息をついた。

 ……化粧してなかったんだな。


「さて、そろそろいいかしら?」


 そういって渚がソファーに座った。

 何かずっと待ってましたよ感出してるけど、コイツさっきまでゲームやってたからな。


 そして渚は誰の返事を待つことなく話し出した。


「今日は1点報告があるわ、ついに生徒会用PINE(ピネ)のアカウントを登録したわよ、拍手」


 おせーよ! 思わずそんなのもあったなって笑っちまったよ。


「拍手」

「ブラボー!」


 ジロリと睨まれて俺は立ち上がって拍手した。

 渚の圧には弱いんだよ。

 そしてそんな俺達を見た2人は苦笑いしている。


「それでアカウントなんだけど2種類用意したわ、生徒会メンバー全員にメッセージが届くアカウントと、生徒会メンバー各人に届くアカウント。理由は全員に知られたくない内容だと連絡しずらいからね」


 それはいいかもしれない。

 質問、要望、相談、もしかしたら女の子には見られたくない内容かもしれないし、男もしかりだ。


 これには皆が頷いたり、賛同の声を上げた。


「これを用意したわ」

 

 渚がテーブルの上に広げたのは1枚のポスターだった。


 

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