21歩 「役員面接?」
「なるほど。藤吉郎なる者の持参した品々はなかなかに珍しい」
信長さまが感心すると乙音ちゃんも調子を上げ、
「わたしも武器ばかりに目が行き、日用品の類は考えつきませんでした。この木下藤吉郎陽葉なる者、誠に天晴れ、なかなかの着眼点です」
いやあ。ヨイショしすぎでこそばゆいって!
でもここは乙音ちゃんのナイスアシストに応えるべきだよね。
「信長さま。次にお目にかかる時にはわたし、地球儀を持参します! 更に驚く事、請け合いですよ? 期待しててくださいっ」
重臣の一人が「ぷっ」と吹いた。笑った?
思わず合わせてしまった目は温かくて好意的、なんて素敵な男性なんでしょう。
信長さまに負けないくらいのハンサムボーイ(昭和言葉デス。イケメンさんのこと)。いったい誰だろう? チェック、チェック。あとでしっかり聞いとこ。
乙音ちゃんが身をせり出す。
「アニサマ。この者を当分わたくしの館に滞在させたいって思ってるんですが。さらにお願いできるんやったら、わたくしの下に置きたいんですが。お許しくださいますか」
「ああ。好きにせい」
テキトーな返事の信長さまに深々と一礼した乙音ちゃんは、わたしに向き直った。
「いやいや、ちょっとまて、美濃よ。――のう、藤吉郎とやら。ワシは織田勘十郎信勝と申す者。ワシはそなたの実力を試したい。兄上、よろしいか?」
今まで気付かなかった。信長さまにソックリな男の人が、両膝つきの姿勢で前に進み出て来た。
【美濃】ってのは乙音ちゃんの異称。要は彼女に異議を唱えてんの?
……って、試すってナニを?
「幾ら美濃の勧めでも、容易に家臣の列に加えるというのは譜代にとっては良い気がしないもの。せめて、その者をよく見て判断すべきだと勘考いたします」
「家臣? そこまでは申しておりません。いずれ日ィが経ったらこの者は故国に帰りますし。それまでの期間だけ……」
「美濃。そなた先刻、この者は『故国へは容易に戻れん』と申しておったではないか。ということは当分の間、自らで自らの糧を得る口を見出してもらわねばならぬ。ゴクツブシを養うほど当家は悠長ではないのだぞ」
「ま、もっともじゃな。よい。試せ、美濃」
「は、承知……」
信長さんも同調し、困惑顔の乙音ちゃん。たぶん、わたしも同じだ。
これじゃあ、まるで就活してるみたいじゃん?
信長さま以下、ズラリと並ぶ重臣たちが、急に面接官に見えて来た。
だいたい書類選考も一次面接もスッ飛ばしていきなり役員面接に臨んでるんだから、破格の扱い、超ラッキーったら超ラッキー……なんだけどもさ。
わたし、何の特殊能力も、業務経験も、持ち合わせていないんですが。
フツーさ、異世界に跳んだ主人公なら、何らかの特殊スキル的な優遇措置ってモンがあると思うんですが?
それか、ひょっとして一見無能に思える、末吉スキルとか!
うーーん……。
ちょっと考えてみたが……いや、やっぱない。
それでも、いいんですかーーーっっ。
「これから前野郷の前野将右衛門とともに、清須城に行け。織田大和守の機嫌を窺って来るのだ」
「は? 清須? 織田ヤマトさんに会って機嫌取り?」
陽葉と又左




