表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/187

21歩 「役員面接?」


「なるほど。藤吉郎なる者の持参した品々はなかなかに珍しい」


 信長さまが感心すると乙音ちゃんも調子を上げ、


「わたしも武器ばかりに目が行き、日用品の類は考えつきませんでした。この木下藤吉郎陽葉(ひよ)なる者、誠に天晴れ、なかなかの着眼点です」


 いやあ。ヨイショしすぎで()()()()()って!

 でもここは乙音ちゃんのナイスアシストに応えるべきだよね。


信長(御屋形)さま。次にお目にかかる時にはわたし、地球儀を持参します! 更に驚く事、請け合いですよ? 期待しててくださいっ」


 重臣の一人が「ぷっ」と吹いた。笑った?


 思わず合わせてしまった目は温かくて好意的、なんて素敵な男性なんでしょう。


 信長さまに負けないくらいのハンサムボーイ(昭和言葉デス。イケメンさんのこと)。いったい誰だろう? チェック、チェック。あとでしっかり聞いとこ。


 乙音ちゃんが身をせり出す。


「アニサマ。この者を当分わたくしの館に滞在させたいって思ってるんですが。さらにお願いできるんやったら、わたくしの下に置きたいんですが。お許しくださいますか」


「ああ。好きにせい」


 テキトーな返事の信長さまに深々と一礼した乙音ちゃんは、わたしに向き直った。


「いやいや、ちょっとまて、美濃(みのう)よ。――のう、藤吉郎とやら。ワシは織田勘十郎信勝(おだかんじゅうろうのぶかつ)と申す者。ワシはそなたの実力を試したい。兄上、よろしいか?」


 今まで気付かなかった。信長さまにソックリな男の人が、両膝つきの姿勢で前に進み出て来た。

 【美濃(みのう)】ってのは乙音ちゃんの異称。要は彼女に異議を唱えてんの?


 ……って、試すってナニを?


「幾ら美濃の勧めでも、容易に家臣の列に加えるというのは譜代にとっては良い気がしないもの。せめて、その者をよく見て判断すべきだと勘考いたします」


「家臣? そこまでは申しておりません。いずれ日ィが経ったらこの者は故国に帰りますし。それまでの期間だけ……」


「美濃。そなた先刻、この者は『故国へは容易に戻れん』と申しておったではないか。ということは当分の間、自らで自らの糧を得る口を見出してもらわねばならぬ。()()()()()を養うほど当家は悠長ではないのだぞ」


「ま、もっともじゃな。よい。試せ、美濃」

「は、承知……」


 信長さんも同調し、困惑顔の乙音ちゃん。たぶん、わたしも同じだ。

 これじゃあ、まるで就活してるみたいじゃん?


 信長さま以下、ズラリと並ぶ重臣たちが、急に面接官に見えて来た。


 だいたい書類選考も一次面接もスッ飛ばしていきなり役員面接に臨んでるんだから、破格の扱い、超ラッキーったら超ラッキー……なんだけどもさ。


 わたし、何の特殊能力(スキル)も、業務経験も、持ち合わせていないんですが。

 フツーさ、異世界に跳んだ主人公なら、何らかの特殊スキル(チート)的な優遇措置ってモンがあると思うんですが?


 それか、ひょっとして一見無能に思える、()()スキルとか!

 

 うーーん……。

 ちょっと考えてみたが……いや、やっぱない。


 それでも、いいんですかーーーっっ。


「これから前野郷の前野将右衛門(まえのしょうえもん)とともに、清須(きよす)城に行け。織田大和守(おだやまとのかみ)の機嫌を窺って来るのだ」


「は? 清須(きよす)? 織田ヤマトさんに会って機嫌取り?」



挿絵(By みてみん)

陽葉と又左

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ